データ処理と組版技術でPODをフル活用
攻めの営業スタイルが強みです。
株式会社 正文舎
代表取締役 岸 昌洋氏
単なる印刷会社からの脱却が大切なんです。クロスメディアを活用した提案力でクライアントのパートナーとして認識されないといけない!
札幌市に拠点を構える株式会社 正文舎。昭和9年創業、76年もの歴史を刻んできた老舗である。
「創業時の活版印刷以来、ずっと美しい日本語の組版にこだわり続け てきました。特に複雑な数式や古代キリル文字まで混在する教育関係書籍では、より理解しやすく、より美しくというクライアントの要求レベルもきわめて高く、それに応えながら独自のノウハウを磨いてきました」代表取締役・岸昌洋氏は語り口も確信と自信に満ちて明快だ。だがすべてが順風満帆だった訳ではないという。
少子化や景気低迷によって得意分野としてきた学校関係や行政関連の受注に翳りが見えてきた。いかにして「待ちの営業」から脱却するかが焦眉の課題となったのだ。そんな時、岸社長の頭に浮かんだのが、従来から得意としてきたデータベース処理と印刷とのトータルなサービス提供を武器とした、積極攻勢への転換である。
主力クライアントのひとつである『大学/専門学校』では、データベースを活用した印刷物が非常に多い。まず、どう高校生をオープンキャンパスに集めるかに始まり、入学後のキャンパスライフ、ゼミやサークル活動、さらに就活、卒業証書から同窓会名簿。大学生活で発生するこれら様々なコンテンツを、データベースによって単一のディレクションでワンストップ提供できることが正文舎の強みである。
「大学生活の、いわば揺りかごから墓場までが私たちの守備範囲です。データベース/自動組版という自社の強みを活かして、真にお客様の望む物を提案しご提供する。これは、他社の新規参入に対しても有効な障壁となり、価格競争からも脱却できます。」
最初は筆耕(手書き)で請け負っていた卒業証書も、自社の強みを生かせると判断し、自らPODによるバリアブル印刷化を提案した。クライアント側のメリットは時間とコストの削減。正文舎側は卒業証書印刷の効率化により他の大学からも受注出来るようになった。
しかし、自社の強みを活かしデータベースでバッチ組版された卒業証書の印刷も出力を行う機種の選定までには大きな悩みがあった。卒業証書の印刷に使用するスカシの入った特殊な紙が印刷機をうまく通らないのだ。各社の製品で試みたが、ショールームで100枚は通っても、2万というオーダーの実作業ではトラブルが続出した。そんなとき、唯一リコーが実紙によるRUSP(独自の通紙検証)を実施。驚異的な通紙能力を実証して信頼関係が出来上がり、C901S導入に至った。重送や紙詰まりなどの通紙トラブルが激減したことで、つききりの監視が必要がなくなった。これは人員の効率的配置にも大きく影響した。
以前は検品のために他部門からも人を動員し、24時間体制で臨んでいた。しかしC901Sの導入後は、重送や紙詰まりなどの通紙トラブルが激減したことで、つききりの監視が必要がなく、3人がかりだった仕事が1人で出来るようになり、しかも残業なしに定時までで楽々完了するようになった。単純に計算すると、72時間が8時間へと驚異的に効率化した計算になる。
一朝一夕には蓄積できないデータを活用しアイデア、デザイン力、提案力をコアにして営業活動を展開して行ったと言う岸社長。
「C901Sで出力するカンプ段階から、きちんと製本・装丁したものでプレゼンテーションをするんです。最後はオフセットで大量出力するのですが、それ以前に完全な出来上がりをイメージしていただくためです。クライアントからは『もう出来たの?』と驚かれるのもしばしばです。そのまま色校正にも使っているくらいオフセットと見まがうクオリティのC901Sだからこそ、完全な出来上がりをイメージしていただけるのです。」
正文舎は、札幌を拠点とする企業として、地元社会への貢献に心を砕いている。
「北海道にも優秀なクリエイターがたくさんいるのに、地元で活躍する場が少なく、東京などに人材が流出する現実があります。これを何とかできないかと考えていました」と岸社長は語る。
「そんなとき、以前から親しくしてきた、工藤良平さんと中西一志さんのデザインユニット『Wabi Sabi(ワビサビ)』と相談し、北海道在住のアーティストやその卵など365人を起用した日めくりカレンダーを企画。彼らへの応援になるのでは、と考えてC901Sで製作しました」
更に、このプロジェクトで作品選定にあたったWabi Sabiユニットが、パリやニューヨークで展示した作品“アーティストブック”を、C901Sとオフセットで作成しリリースした。「まったく同じ作品集を両方で作って仲間のデザイナーに見せると、一様に驚きます。どっちがオフセットでどっちがPODか見分けがつかないと言うのです。それは最初に見たとき、私たち自身が驚いたのと同じなのです」と工藤氏。
「Wabi Sabiさんの作品は、1枚1枚が微妙なテクスチャを持っています。次は作品ごとに紙を変えたアートブックを作ってみたい。C901Sだからこそこんなことも考えてしまうのですね」岸社長の夢は尽きない。
正文舎の経営戦略のど真ん中にあるクロスメディア。岸社長は、自身の言葉でこう解説する。「お客様に伝えたい情報が届きにくくなっているのですから、戦術である販促ツールをバラバラに作って発信しても効果は薄いのです。届けたい本質の情報とお客様のお客様との接点を効率よく作り、売り上げアップにつなげていただくのがクロスメディアであり、そこでもC901Sの活躍の場があります。」 お客様にとって本当に役立つご提案をし、具体的に集客や売り上げアップに結びつけていただくことが最優先だと言う岸社長。 「目的に沿わなければ当然、印刷媒体を使わない提案もします。しかし、C901Sの導入で、我々の提案の幅は確実に拡がっています。」 どこまでもお客様目線に。正文舎の変革は続いている。
お客様目線の提案力で成果を上げた実例がYMCA英語・スポーツ専門学校だ。HPやパンフレットといった一連のツールは持っていたものの、内容はほぼ同じで、学校の強みを伝えきれていないことに頭を悩ませていた。正文舎が最初に行ったのが、アクセス解析からツールの役割分担を設計することだった。学校の強みがストレートに、ひと目でわかるように情報設計・デザインされたHPと、卒業生インタビューなどの人気のコンテンツに特化したパンフレット。
そしてどちらを先に目にしても、もう一方を見たくなるように設計された導線。これらの仕掛けでオープンキャンパスへの集客は例年を上回った。さらにムダなページ数を減らし、その分の経費をコンサルティングにまわしていただいたという。
株式会社 正文舎