広島大学病院にて実施された防災訓練の様子
災害時にリアルタイムな活動状況を可視化することを目的とした本社製品の大型電子ペーパー「RICOH eWhiteboard(以下、eWB)」、「RICOH Interactive Whiteboard(以下、IWB)」および、360度カメラ「THETA」を活用した双方向型ライブ配信システム「RICOH Remote Field(以下、Remote Field)」の試験的な活用例を紹介します。
令和6年11月30日、広島大学病院にて安芸灘、伊予灘、豊後水道を震源とする最大震度6強の地震を想定した防災訓練が実施されました。この訓練では院内災害対策本部(以下、本部)とDMAT(災害派遣医療チーム)活動拠点本部を同じ部屋に置き、負傷者のトリアージを実施したほか、行政機関と医療機関との緊密な連携を確認しました。
広島大学病院は広島県の災害拠点病院として、災害医療活動や人材育成に力を入れており、広島大学 公衆衛生学の田治明宏様からは、かねてより各地の訓練でリコージャパンのソリューションについてご意見を頂戴しておりました。
そのような中、令和6年1月に能登半島地震が発生。厚生労働省DMAT事務局からの要請を受け、広島大学病院も石川県へDMATを派遣されました。また、リコーからも石川県立中央病院と石川県庁内に大型電子ペーパーeWBを計3台提供し、支援活動にお役立ていただきました。
田治様も実際に現場で活用されている様子をご覧になり、遠隔地との情報共有や、傷病者の搬送調整において活用できるのではないかと感じていただけたようです。
「能登半島地震の支援で、搬送調整や管理において活用できるということが分かったことは大きかったと感じます。全国の多くの救急病院でも同様の活用が期待できますし、平時にも活用できるのではないでしょうか。」(田治様)
今回の広島大学病院での訓練では、eWBのほか、IWBおよびRemote Fieldを活用いただきました。
負傷者の受け入れを行なう「トリアージポスト」と、重症者の対応を行なう「赤エリア」にはRemote Fieldを設置し、360度映像でのライブ配信を実施。映像は本部およびDMAT活動拠点本部のIWBに共有され、受け入れ状況や混雑度合いなどをリアルタイムに確認できるようにしました。
また、赤エリアと本部にはeWBを設置。赤エリアのeWBに重傷者の氏名や傷病名を書き込むと、テキスト変換された状態で本部のeWBに共有されます。本部では入力された情報を見ながら、誰をどの病床に搬送するかの判断を行ないます。
実際に本部で活用された広島大学 廣橋伸之教授からは、「360度映像は、多数傷病者や重傷者がどれくらい来ているのかを把握することに役立ちました。実際に災害が起こった際には、今どのような状況にあるのかを理解することにも使えるのではないでしょうか。」とのご感想をいただきました。
訓練時の配置図
実際の訓練で活用いただいたことにより、いくつかの課題も見えてきました。
たとえば、eWBで利用する帳票を訓練前に準備していましたが、実際には記載する項目と全く記載されない項目があり、帳票を変更する運用フローを含め準備する必要がありました。
一方で、赤エリアでの記載された情報は、本部でリアルタイムに表示更新されるため、本部にあがってこなかった情報(院内搬送先)も本部側で掴むことができ、確認電話をしなくとも、院内受け入れ状況の把握に役立つことが分かりました。
これからもリコージャパンは災害時や防災に活用できるソリューションの提供を通し、誰ひとり取り残さない防災への取り組みに努めてまいります。
eWBで今後期待しているのは、AIの活用です。災害支援現場で行なう現状分析では、電気や水といったライフラインや、人的資源がどのような状況にあるのかを都度書き込むのですが、書かれた単語や更新されていない項目をAIが拾って、状況を把握できるようになるとマネジメントが楽になるでしょう。また、病院の電子カルテやEMIS(広域災害救急医療情報システム)などとの連携が可能になれば、より活用の場が広がります。
コロナ禍でのクラスター支援でも、現状分析や情報共有を行ないました。今後新型感染症が拡大した際などにもニーズがあるのではないでしょうか。
今後は日常的に使用し、災害時にも使えるような方法を模索していきたいですね。
マス・カジュアルティの状況では、多数の負傷者が一度に押し寄せるため、避難者や避難所の収容状況、利用可能な車両などを的確に把握し、迅速に調整することが不可欠です。今回ご提供いただいたソリューションは、そうした状況における全体像の把握に大いに役立つと感じました。
災害は予測が難しく、誰がどの支援を担うかも状況次第で変わるため、より直感的で簡便な操作性が求められます。今後は、現行の技術に加えてさらに一歩先を見据えた革新的な提案を期待しております。
今回の訓練への支援を通して、リコージャパンから提供可能なソリューションを、複合的かつ実践的に多くの方々へ紹介することができました。今後もお客様へのお役立ちに寄与できるよう努めてまいります。
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