2015.06.16
アド印刷は2014年12月、クリア印刷、ホワイト印刷を可能にした「RICOH Pro C7100S」を導入し、その表現力の高さを武器に新規開拓の可能性を広げている。
同社は1978年にチラシ印刷を主体とした商業印刷会社として創業した。オフセット枚葉印刷機を中心とした生産体制で業容を広げ、1998年にはオフセット輪転機の導入で生産能力を向上。その後、刷り専業からの脱却を図り、デザイン・制作機能を加えて川上へ事業領域を拡大した。さらには、より顧客密着性の高いダイレクトメール(DM)事業へと進出し、総合的なセールスプロモーション支援業へと変革。現在では窓可変型環境封筒「イークル」などの商品開発を含め、企画、デザインから印刷、加工、封入・封緘、発送までのワンストップサービスが受け入れられ、DM関連事業の比重が高まっている。
そのDMも現在は送付対象者や地域を限定してより確度の高い効果を狙う傾向にある。同社の牛島毅常務取締役は、「送付先やエリアを絞るため、DMのロットは小さくなっています。通販関係のお客様の場合、会員に同じ内容を送付するのではなく、定期購入者、休眠顧客、新規顧客と送付先を分類し、訴求内容が異なるDMを送っています」と述べる。クライアントは、購買者にサンキューメールを送付するなど、きめ細かいコミュニケーションで消費者との関係を強化し、購買頻度が多い優良顧客を増やそうとしている。
2008年に制作部門の近くに導入したPOD機は、DMをはじめとする商業印刷物の多品種・小ロット化対策の一環だった。小回りが利く生産体制確立の橋頭堡として設置し、採算を想定した投資というよりもテスト的な意味を持っていた。一方、2010年に導入したRICOH Pro C901は工場内に設置。オフセットで印刷した台紙に、宛名やメッセージの可変部分の追い刷りで利用されている。このように同社では、制作部門の近くで稼動する名刺やPOP、グリーティングカードなどの多品種・小ロット印刷のラインと、工場で稼動するDMの追い刷り印刷のラインの2通りでPOD機を運用している。
昨年暮れにRICOH Pro C7100Sのサンプルを提示された牛島常務取締役は、ホワイトトナー、クリアトナーを使ったサンプルを見た時、「これは色々なことができる」と確信。ホワイト、クリアの視覚的な効果に加え、透明メディアやファンシーペーパーの質感を活かした幅広い表現が小ロットで可能になれば、飲食業をはじめ、今まで取り込めていなかった業種に入っていけるかもしれない。また、「運用の仕方によっては採算に乗りきっていなかった多品種・小ロットのPODラインを有効な方向に変えられる、新しい売り方ができる」と感じた。色や見当の安定性、用紙対応力についても、「1,000部、2,000部ぐらいまで安心していける。オフセット印刷機の代替にもなれるマシンと見ています」と評価した。
新しい機能もさることながら、リコーのマシンを選択した理由の一つに、牛島常務取締役をはじめ、POD担当の関係者が一様に営業担当者とサポート体制への信頼を口にする。「我々にとってPOD機は生産機。止まってしまうと利益の損失になります。リコーのサポートは即応性が非常に高いですね。サポートにも十分満足しています」。
使用できる用紙が限定され、表現が限られていた
単価下落で新規開拓が必須になっている
色ムラ、見当ズレ、機械停止により生産性が上がらない
ホワイト・クリアトナーと用紙対応力アップ、長尺出力で表現力が格段に豊かに
商材の拡大が飲食店などの業種への営業の武器に
機械安定性の高さにより作業性、生産性が向上
RICOH Pro C7100Sの導入で、これまでPOD機に適さなかったメディアへの表現が可能となり、デザインの幅が大きく広がった。同社の製造一部本社制作課では、ホワイトトナー、クリアトナーの効果を検証した。さらに、メタリックや透明、色紙、凹凸紙など、メディアの特性を活用してグラフィックデザインだけでは難しかった表現にチャレンジしている。同課の深川智裕係長は、「印刷物に光の表現を加えることができます。透かしたり、反射させたりと、ディスプレイ上では不可能な質的な表現が加えられるので、印刷の物質的な価値を高めることができます」と目を輝かせる。
RICOH Pro C7100Sのホワイトトナーはオフセット印刷のホワイトインキに比べ濃度が出せるという。二度刷り、三度刷りの手間がなく、透明素材出力時の隠ぺい性も高い。その上、ラメの入った用紙にホワイトトナーを乗せるとシルバーに近似した表現が得られ、素材の質感をそのまま引き出せる。クリアトナーについても輝度が高く、「光の反射によるシズル感が説得力ある形で表現できます」(深川氏)と、デザイナーの好奇心を煽っている。
700mmまでの長尺出力に関しては、実物に近い三つ折りパンフレットのサンプルや店内ディスプレイへの利用を見込む。ホワイトトナー、クリアトナーの表現と合わせ、これらデザイナーのアイデアを形にできるPODのスピード感はクライアントへの訴求力を上げる効果もある。
牛島常務取締役は「ご存じの通り、 期へのプレッシャーを確実に減らしている。印刷業界はデフレがまだ進んでいます。今年100でも黙っていれば来年は90、80となります。当社にとっても新規獲得は至上命令です」と印刷業の現状を指摘する。このため、同社では、ホワイトトナー、クリアトナーを活用したディスプレイやPOPなど、視認性の高い販促物を提供する店舗の総合的なセールスプロモーション支援を検討。また、扱える素材の拡大を利用し、B to CやB to B to Cを想定したステーショナリー商品の開発など、事業領域の拡大を構想している。
同社製造一部の徳久寛信次長は「小ロットでも手に入るので、お客様が特殊効果の印刷物を格段に使いやすくなります。初対面では金額の話になってしまいますが、実物が見えると効果がイメージしやすく、お金の話ではなくなります」と述べる。高いコストがかかっていた特殊効果のサンプル制作が安価で手に入るようになり、経験の少ない新人営業担当者でも高付加価値の印刷物を提案しやすくなるほか、当面は小ロットで利用し、成功後に大ロットに誘導する営業戦略も可能になる。
当初導入した他社のPOD機は対応可能な用紙のレンジが狭く、とくに薄紙やコート紙の出力時にジャムが発生して機械停止が頻発していた。生産面でRICOH ProC7100Sに入れ替えた効果を実感しているのが、同機のオペレータで製造一部CTP課の貞末民雄氏。「給紙エラーが出なくなりました。用紙によってエア給紙などを細かく設定することで厚紙から薄紙はもとより、凹凸紙の溝まできれいにトナーが乗って出力されます。出力スピード以上の差が生まれており、次元が違います」。
同社の小ロットPODの業務は多品種であらゆるサイズ、用紙の出力が求められる。出力時の見当のズレは後加工時のトラブルにつながり、生産性低下、コスト増の要因になっていた。このため、入れ替え前は1枚1枚出力の状況を確認しながら作業する必要があった。
「厚紙、薄紙を問わず表裏見当は間違いなく良くなりました。以前は全ての作業で位置調整をしていましたが、今はあまり調整しなくてもいきなり見当が合った状態になっています。半分以上、そのまま出力しています」。トラブルの減少は面付、出力、加工、梱包まで一連の作業をこなす貞末氏の納期へのプレッシャーを確実に減らしている。
今後、同社では業種別のサンプル集を制作し、クライアントのニーズを掘り起こしていく。また、これまで外注していた特殊効果印刷の内製化、フルバリアブル印刷による付加価値向上にも取り組む意向。「PODのウェートは上がっていくでしょう。10~20%の売上比率にまで早く引き上げたい。小ロット対応の特殊効果の先行者としてステータスを築ければ、お客様は当社を優先的に発注して頂けると思います」(牛島常務取締役)と、新規事業の足掛かりとしてRICOH Pro C7100Sにかける期待は高い。
徳久次長は「デザインの幅が広がることにアドバンテージを感じています」と、商材の増加による営業活動の強化を見込む。営業部隊にサンプルを配ったところ、早速、クリア素材で名刺が作れないかとの問い掛けがあった。「特殊効果の印刷物にアンテナを張っていなかった状態でしたが、お客様からの引き合いがあり、営業担当者は提案すれば売れるという手応えを感じていると思います」と良い感触を得ている。
ホワイトトナーに関しては「オフセット印刷のイメージから剥がれるのではないかと不安を感じているお客様に、実物を見せると信頼性が上がります」。また、クリアトナーについても「輝度が高いですね。あとはデザインにどう反映させていくかです」と期待を高めている。
深川氏は「情報を伝えるだけであればWebでも良いと思います。しかし、印刷メディアが生き残っていくためには情報を保持したり、価値を伝えられたりという機能を高めることが必要です。ホワイト、クリアの表現は、印刷物の物質的な価値を高められます」と強調する。
制作課では現在、デザイナーがアイデアを出し合い、実際のサンプルを制作している。「新しいアイデアが出てきて、デザイン表現の伸び代をすごく感じています。デザイナーたちも楽しんでいます。自分たちの能力の幅が広がりますから。かなりポジティブに取り組んでいますね」と、現場のモチベーションも高めている。
これからは「お客様のニーズとアイデアを合わせていく必要があります。営業部隊の連携がますます重要になってきます」と見据える。
貞末氏はリコーのフィールドサポートについて、「明らかにリコーのサポートは良いですね。すでに4、50回も問い合わせをしていますが、ほぼ1回で解決しています。対応が早く、すぐに電話をかけ直してくれます」と絶賛している。また、長尺紙の連続出力を可能にするオプションユニットについて「用紙が斜行しないことが重要です。長尺の給紙ユニットは給紙を左右から補助するのでまっすぐ入ります。用紙も結構積めますね」と評価する。
お客様名称 | |
---|---|
設立 | 1978年 |
所在地 | 本社 〒812-0016 福岡県福岡市博多区博多駅南5丁目21番28号 |
従業員数 | 144名 |
資本金 | 4,000万円 |
設備 | RICOH Pro C7100S、RICOH Pro C901S |
主なお得意先 (順不同、敬称略) |
官公庁、通販会社各社 |
本ページに掲載されている情報は、2015年6月現在のものです。
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