見積書のPDF化でモバイル活用
移動時間の有効活用で訪問件数30%増
ケアコムは情報・通信システムの専門メーカーとして、50年以上にわたり看護・介護関連システムの製造・販売に携わってきた。
代表製品はナースコールシステムである。日本のナースコールの歴史を拓き、その発展を支えてきた高い技術力により開発された最新型ナースコールシステム「NICSS」では、患者さんからの呼び出しに加え、センサーが検知した患者さんの状態をスタッフステーションで確認できるなど、ハードウェアとソフトウェアが連動した最先端のコンピュータナースコールシステムとして完成している。
このほか、看護師が患者のバイタルサインや看護記録を入力して一元管理する「ケアパルシステム」など、病院や福祉施設の業務を支えるさまざまなシステムを提供している。
同社は1988年にAS/400が発表された直後からのユーザーで、現在は2005年にリプレースした「System i520」上で稼働する海外製ERPパッケージ(2002年に導入)により、販売・生産・会計の各システムを運用している。
また2002年からは、全国各地の営業担当者約50名全員にノートPCを配布し、外出先からインターネットVPNを経由して、社内システムにアクセスできる環境が実現した。「どこでもオフィス」のコンセプトを掲げたこのモバイル環境の構築で重視されたのが、見積書など取引先へ提出頻度の高い各種帳票をPDFファイルに変換し、メールで社外からでも送信可能にすることであった。
営業担当者はそれまで、見積書を各拠点のドットプリンタで、プレ印刷された専用紙(複写用紙)にプリントアウトしていた。しかしこれでは商談の場で即座に見積書の作成には対応できないし、外出がちな営業担当者が、見積書の印刷のためだけにその都度オフィスに戻らねばならないこともある。気がつけば、商談からかなり時間が経って見積書を送ることになる。
「そこで見積書を中心にSystem i の各種スプールファイルをPDF化するためのツール導入を検討し始めました。社外からでも見積書の作成・送付を可能にすることで、移動時間や帰社時間の有効活用が可能となり、結果的にお客様への訪問件数や提案内容の質を高められると考えたのです」と語るのは、企画部情報システムグループの木村 勉部長である。
しかしモバイル化がスタートした2002年当時、同社のPDF化の要件に対応できるプリンティング製品を見つけることはできなかったという。
同社では、PDF化に必要な機能として下記の4点を検討していた。
まずPDF作成時に社印や担当者印の印影をレイアウトできること。それから表紙データと明細データという別々のスプールファイルを1つのPDFに統合できること。さらにスプ-ルファイルのファイル名に見積番号を使用できること。そして導入している海外製ERP製品の特殊なスプール属性を変換し、PDFファイルへ取り込めることである。
海外製ERP 製品であるため、業務アプリケーション側で帳票の変更などのカスタマイズを実施することなく、全てプリンティングソリューション側で対応する必要があったが、当時検討した製品は、これらの要件をサポートできなかった。なかには大幅にカスタマイズすれば対応可能な製品もあったが、その場合は導入コストが大幅に膨らむことが判明し、いったん導入を見送っている。
検討を再開したのは2008年春。ちょうどその頃、インフォプリント・ソリューションズ・ジャパン(現:リコープロダクションプリントソリューションズ・ジャパン)が発表したSystem i 向け統合印刷プラットフォーム「Mapping Suite」が、上記の要件を全て標準機能としてサポートできることが判明したからである。
「この4つの要件を満たしていること以外にも、System i 上のソリューションとして運用でき、別途PCサーバーを購入する必要がない点や、比較検討の際に残ったもう1つの製品と比べて、圧倒的に導入コストが低額であった点などが決め手となりました。とくにMapping Suiteの価格体系は、一般のライセンス価格と異なり、印刷量に応じた料金体系なので、ムダなく経済的に運用できる点を高く評価しています」(企画部情報システムグループ 中山 裕係長)
同社では全国12拠点に導入されたドットプリンタで、年間約20~25万枚の帳票を印刷している。そこで製品選定に際しては、最終的に25万枚の全帳票をPDF化すると想定し、他製品とのコスト比較およびプレ印刷用紙を使用し続けた場合のコスト比較を試算。どちらの場合もMapping Suiteであれば大幅なコスト削減が可能との結論をだした。
こうして2008年12月にMapping Suiteの導入を決定。準備作業を経て、翌2009年4月から、運用がスタートした。まず見積書から始め、その後、サービス部門が作成する請求書にもPDF化を拡大。現在は経理部門の与信管理表や検収内訳書、営業部門の少数オーダー時の受注確認書などでPDF化の準備が整い、各部門の運用開始待ちの状態にある。
導入後、営業担当者は取引先に対し、見積書をメールで送るようになり、ドットプリンタでの印刷はほとんどなくなった。これはとくに広域の営業エリアを担当する地方の営業部門で歓迎されたようだ。帰社する必要がなくなり、移動時間を効率的に活用することで、営業担当者の工数を捻出することが可能になった。また同時並行で実施された営業強化策も奏功して、2009年は訪問件数が前年対比130%に増加したという。営業力の強化に向けて、Mapping Suiteは大きな役割を果たしたようだ。
今後はSystem iから印刷している全ての帳票をMapping Suite経由で出力し、最終的にはドットプリンタを廃止したいと考えている。プリンタへの出力が必要か否か、業務改善の視点を加えつつ、さらなる生産性向上とコスト削減に結びつけていく計画のようだ。
お客様名: | 株式会社ケアコム様 |
設立: | 1955年 |
本社: | 東京都調布市 |
資本金: | 9000万円 |
売上高: | 58億円 |
従業員数: | 233名 |
URL: | http://www.carecom.jp/ |