複数言語のラベル同時出力をPHPシステムとMapping Suiteで実現
商品情報をXML変換し、書式データと合成
・食品の安全ニーズに対応するため、多様な商品情報をデータベース化した商品管理システムを構築
・1画面に多彩な情報を表示させるためPHPベースで構築し、IBM i上に配置
・商品ラベルに2カ国語を同時記載させるため、商品情報をXML形式に変換
・Mapping SuiteとZEBRA社製ラベルプリンタにより目的のラベル印刷を実現
食品の安全性に対する意識が日本のみならず世界中で高まりつつある。とりわけ2000年以降は各国で法制化が進むなど、ルール作りも急である。こうした中、食品を扱う企業に対しては「さまざまな情報の開示が強く求められている」と、太平洋貿易の佐藤俊之氏(総務部副参事 経理グループ長 兼営業企画部EDPグループ長)は、次のように指摘する。
「2000年以降は牛肉BSEや食品偽装の問題が浮上し、原材料や栄養成分、原産国、賞味期限、アレルギー情報の表示が各国で義務付けられました。したがって、これまで以上に情報管理の徹底が求められるようになりました」
昭和初期から食料品・酒類の輸出入業を営み業界のトップを走る太平洋貿易では、従来から各国の法規制に適合する食品ラベルを作成してきた。しかし2007年に「扱い商品の情報をさらに厳しく管理するため」(佐藤氏)、商品管理システムの構築・導入に踏み切った。
同社が扱う商品アイテム数は約1万点。
常時動いている商品だけでも3500点以上ある。それを輸出する場合、食品ごとに各国ルールに適合する情報をラベルとして作成し、食品パッケージに貼付する。印刷するラベル数は1日に10万枚、1カ月では200万枚以上にも上る。
食品ラベルは、従来は「ワープロ的に作成していた」(髙瀬素之氏、営業企画部主査EDPグループ 兼 業務部)。つまり、基幹システムからその食品の原材料・栄養成分に関する情報を探し出し、「オペレータが1項目ずつ、データを手入力する」(髙瀬氏)作り方であった。例えば、栄養成分表示は、100gあたり、1食あたり、あるいは1包装あたりと輸出相手国ごとのルールに合わせて、毎回計算をし直して作成をしていた。
「しかしそのやり方では、人的ミスが生じる恐れも大きく、めまぐるしく変わる各国の法規制にスピーディに対応するのが困難です。ラベル作成業務を支援し効率化できるシステムの導入を決めました」(佐藤氏)
同社は、1990年代半ばにAS/400で輸出入システムを構築し、2000年代前半に輸入と輸出の各システムを再構築した経験を持つ。今回の商品管理システムの開発を担当したアイ・ディー・シーとは、20年近い付き合いになる。
新しく開発する商品管理システムは、商品に関する「基本情報」「原材料情報」「ラベル関連情報」「画像」の4つを備え、「商品コードと輸出先とラベルの用紙サイズを指定すると記載する項目が自動的にセットされ、ラベルを打ち出せる」(髙瀬氏)仕組みとした。また、1画面にさまざまな情報を表示させる必要があるため「PHPでシステムを開発し、運用管理を考慮してIBM i上に配置することにしました」と髙瀬氏は説明する。
同社の輸出先は、欧米を中心に全世界に広がる。それゆえラベルで使用する言語は、英・仏・独・中国・アラビア・ロシア・ヘブライ・ギリシャ語など多岐にわたる。これを考慮して、商品情報のデータ形式はUnicodeを採用することとした。
ところが、ここで2つの問題が出てきた。
1つは、輸出相手国が複数の言語を使用している場合、商品ラベルにはその言語を併記させる必要がある。そのためにはシステム(スプール)が複数の言語を同時にハンドリングできなければならないが、「IBM iの通常のスプールでは実現できない」という問題である。そしてもう1つは「Unicode対応のプリンタが見当たらない」であった。「いろいろなプリンタメーカーに打診しましたが、対応できないという回答ばかりでした」と髙瀬氏は振り返る。
そこで改めて取引のあるITベンダーを通して探すと、「商品情報をXML形式に落とせれば、最終的にラベルプリンタに出力できるツールがある」という回答がきた。そのツールが、リコープロダクションプリントソリューションズ・ジャパンの統合印刷ソリューション「Mapping Suite」である。
Mapping Suiteは、IBM iのスプールとXMLの両方に対応可能だ。ROBOTと呼ばれる監視エージェントがIBM iスプール内の印刷要求データを読み取ると、IFS内のフォルダからXML形式のラベル記載情報を取得し、ラベルの設計(書式データ)に合わせてセットしてラベルプリンタへデータを送信する(図表)。Mapping Suite上で使用したフォントをプリンタにダウンロードして印刷するので、どのような言語でも出力が可能となる。また、LANと直結できる機能を生かすためラベルプリンタにはゼブラ・テクノロジーズのZEBRA 170Xi4を採用した。
スケジュールは、2007年7月に商品管理システムの開発がスタートし、翌年末に完成。その直後から英語ラベル用商品情報の入力を開始し、1年後の2009年末に英語ラベルの出力を実現。続けて仏語ラベル用辞書の作成に着手。それと並行して2011年8月にMapping Suiteを導入し、2012年3月に英語・仏語を併記するラベルの出力に漕ぎつけたという流れである。これにより複数言語のラベルも、数ステップで出力可能となった。
佐藤氏は、「ラベルの作成から印刷までの時間を大幅に短縮でき、かつ正確性が飛躍的に向上しました。印刷の質も以前のラベルプリンタよりもよく、求めていたものが実現できて満足しています」と評価する。
今後は、中国語や独語などの辞書を作成し、印刷環境を順次整えていく予定。「ラベルを効率的に安定的に作成できることが確認できたので、今後は貼付作業を行う倉庫にラベルプリンタを配置し、より効率化を図っていく考えです」と髙瀬氏は語る。
本資料は、2012年8月の i Magazine の掲載内容です。社名は当時の太平洋貿易株式会社として掲載しています。
名称: | JFCジャパン株式会社 様 (旧社名:太平洋貿易株式会社 様) |
設立: | 1928(昭和3)年 |
本社: | 東京都中央区 |
資本金: | 7200万円 |
売上高: | 212億円 |
従業員数: | 70名 |
会社概要: | 一般食料品・酒類・雑貨などの輸出入 |
URL: | http://www.jfcjapan.co.jp/(JFCジャパン株式会社のウェブサイトへ) |
本記事はi Magazine2012年8月号に掲載されたものです。(c) i Magazine