建設業において安全パトロールは、現場での問題点や改善点を早期に把握し、より安全な作業環境で高品質な建築物を建設するために欠かせない取り組みです。
本記事では、建設業における安全パトロールの目的や実施頻度、安全パトロールでの指摘事例や課題になりやすいことについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
安全パトロールは、特定の監査員が現場の安全状況を詳細にチェックする活動です。一般的には元請け企業の安全担当者や各業者の代表者が行います。
安全パトロールの目的は、作業中の潜在的な危険を的確に特定し、対処することです。工事が始まる前に、元請け企業は計画段階でリスクを詳細に評価しますが、現場の状況は常に変わる可能性があり、予想外のリスクが発生することもあります。そのため、定期的な安全確認が欠かせません。
安全パトロールは、ただ単に安全を確保する手段ではなく、工程全体の品質も高める役割を果たします。現場での問題点や改善点を早期に把握し、適切に対処することで、より安全で高品質な現場を維持できるのです。
安全パトロールは、作業の安全性を確保する重要なプロセスです。工事現場でよく見かけられる「安全第一」というスローガンの通り、現場作業員の安全を確保するための重要な業務として位置付けられているのです。
また、この活動はチェックリストをもとに「確認、捜索、安全化」の3つのステップで行われます。これらのチェックリストは、企業独自のものや、国交省などの公的機関が提供するものを活用します。
安全パトロールの頻度は業種や現場状況によって異なりますが、一般的には週に1回以上、または月に1回の頻度で実施される場合が多いです。また、定期パトロール以外にも、特別重点項目に対するパトロールや協力会社との合同パトロール、災害が発生した場合の臨時パトロールを行う場合もあります。
とくに荒天の翌日などは、現場に新たな危険箇所が発生している可能性があるため、パトロールによる綿密なチェックが求められます。災害が発生した場合には、周辺を含めた広範な確認が必要となり、徹底したパトロールが必要です。
安全パトロールの実施目的は主に以下の3つです。
また、安全パトロールを行う際の主なチェックポイントとしては以下の5つが挙げられます。
続いて、建設業における安全パトロールでの指摘事例について紹介します。紹介する事例は次の4つです。
それぞれ詳しい内容をみていきましょう。
現場では多くの業者が作業をおこなうため、通行スペースが確保できていないような場合もあります。
躯体工事では足場や型枠、鉄筋工事では鉄筋があちこちに置かれているなど、安全通路が確保できていない現場では、ほかの業者が誤って危険なエリアへ侵入してしまう可能性があります。
そのため、安全通路に障害物がないかを確認し、必要であればすぐに対処しなければなりません。
足場と躯体部分に段差がある場合、ステップキューブの様な足場を挟む安全対策が必要です。安全パトロールでは、このような点においても厳しくチェックし、必要な対策を講じます。
このような安全設備はコストや労力がかかりますが、人命を守るためには避けられない投資です。繰り返すことで安全文化が根付き、現場の作業者が安全について考慮するようになります。
電工ドラムは建設現場において頻繁に使用される機材の1つですが、正しい使用方法を遵守しなければ危険が伴います。
電工ドラムに電気が流れる際、ケーブル自体には抵抗が存在するため、この抵抗により熱が発生します。このとき、電光ドラムにケーブルが巻き付いた状態で電気が流れると、火災のリスクが生じるのです。そのため、近い距離であっても、ケーブルはすべて引き出して使用しなければなりません。
電気工事のプロフェッショナルにとっては常識的な操作ですが、初心者にはなじみのない知識の場合もあります。安全パトロールでは、このような知識不足からくる使用ミスを確認し、指摘していくことも大切です。
建設業界における現場や工場は、5Sの理念に基づく作業が求められる場面が多く存在します。この5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5項目を指して、安全パトロールではこれらが適切に管理されているのかチェックします。
工事が予定通りに進むことは重要ですが、安全をおろそかにすることで起こりうるリスクは多大なものです。労災による作業の遅延や企業イメージの低下は、事業の成功を大きく損ないます。
5Sの原則を正しく実施し、安全を第一に考えることが、真に効率的で理想的な建設現場を実現する鍵となります。
次は建設業の安全パトロールで課題になりやすいことついて紹介します。主なポイントは以下の2つです。
安全パトロールでとくに手間がかかりやすいのが、是正結果報告書作成とその管理です。問題点が指摘された場合、その訂正の証拠として写真を撮影し、報告書を作成する必要があります。
このプロセスは手間や労力がかかるため、形式的な作業として捉えられることもあります。そのため、安全パトロールの品質を低下させないためにも、効率的な報告書の作成や管理方法の見直しが必要です。
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安全パトロールで発見した問題の写真は、すぐに報告書としてまとめ、現場へ共有されなければなりません。
報告書の作成が遅れた場合、それまでの期間に事故が発生する可能性も十分に考えられます。このような状況を防ぐために、撮影データの保管や管理には工夫が必要です。
建設業の安全パトロールでよくある質問について3つご紹介します。
建設業における安全パトロールのチェックリストは、多岐に渡る項目を考慮することが理想です。とくに、工事の内容や進捗によって、チェックすべき項目を変えながら運用できるのがよいでしょう。
また、使用機器や道具の点検状況や安全表示の在り方、5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)の実施状況など、共通してチェックされる項目もあります。
そのため、1つのチェックリストをすべての現場で使いまわすことは現実的ではありません。現場ごとの特性やリスクを踏まえたチェックリストの用意が必要です。
ただ、ゼロからチェックリストを作成するのは難しいため、国土交通省といった公的機関が提供するものを活用することもオススメします。
安全パトロールの所要時間は、現場や目的によって多少の違いがありますが、一般的には1時間が目安とされています。この時間で現場の安全性や問題点を確認し、状況整理までおこないます。
安全パトロールは、特定の業種や事業場においては実施が義務付けられています。安全管理者と衛生管理者はそれぞれの役割を持ち、安全管理者は日常的に職場の安全を確認し、衛生管理者は週1回以上の職場巡視が求められています。
とくに50人以上の従業員がいる事業場の場合、衛生委員会や安全衛生委員会の設置が義務づけられているのです。
この記事では、建設業における安全パトロールの目的や指摘事例、安全パトロールで課題になりやすいことについて解説しました。
建設業において安全パトロールは、現場での問題点や改善点を早期に把握し、より安全な作業環境で高品質な建築物を建設するために欠かせない取り組みです。ただし、安全は特定の監査員や委員会メンバーのみで取り組むわけではありません。現場の作業者全員が「安全第一」を意識して、自発的に安全活動に取り組む必要があります。
工事の作業性を下げることなく、必要な映像を撮影できるカメラを導入するには、用途に応じたカメラ選びが重要です。
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