ウェアラブルカメラは、小型で装着しやすく、防塵・防水などの機能が豊富に備わっているカメラで、工事現場での安全管理や技術的指導にも活用されています。
本記事では、ウェアラブルカメラの選び方や導入事例、主要メーカーごとの特徴について紹介します。工事現場などでの利用を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ウェアラブルカメラとは、身に着けて撮影を行うカメラを指します。このカメラは頭や腕、胸部に装着し、写真や動画を撮影することが可能です。
小型で軽量ながら多機能で高性能な製品も多くあります。
一例ですが、上記のような機能を持つモデルもあり、動きながらでも鮮明な映像を撮影することが可能です。そのため、移動しながらの作業も多い工事現場などでも活用されています。
ウェアラブルカメラとアクションカメラは、基本的な機能や性能において大きな違いは見られないといえます。ただし、これらのカメラの呼び名や認識の違いは、撮影シーンや用途に応じて判断するものです。
アクションカメラは、スポーツやアウトドアなどアクティブに動く撮影に特化しています。このカメラは、ヘルメットや自転車、さらにはサーフボードのようなさまざまなアイテムに取り付けて使用することが可能です。
一方ウェアラブルカメラは、移動しながら周囲を撮影する必要のある場面で、ある程度の機能性が求められる際に用いられるため、近年ではビジネスの現場で利用されることが増えてきています。
ウェアラブルカメラと一眼レフカメラは、共に写真や動画の撮影に使用されますが、その性質と用途は大きく異なります。一眼レフカメラは、レンズを通して直接被写体を捉え、シャッターを切ることで撮影します。
一眼レフカメラは、プロの写真家や写真愛好家の間で広く使用されています。焦点距離を変更したり、露出や絞りを調節したりすることが可能で、写真の表現の幅が非常に広いのが特徴です。
対照的に、ウェアラブルカメラは携帯性と耐久性に優れているのが特徴です。小型軽量ながら手ブレ補正機能を搭載しており、動きまわるシーンでも高画質かつ滑らかな映像に仕上がるのが魅力といえます。
ウェアラブルカメラの概要について理解できたところで、次は選ぶ際のポイントを紹介します。選ぶ際のポイントは次の8つです。
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
ウェアラブルカメラを選ぶ際に重要な要素の1つが、画質と解像度です。多くのモデルでは4K(3840×2160)とフルHD(920×1080)、二つの主要な画質オプションがあります。
ピクセル数が多いほど、画質が精細になるため、4Kの方が高画質であることは間違いありません。しかしここで注意したい点は、配信するサービスも4Kに対応していなければ、4K配信ができないという点です。
ただ、高解像度の方がより柔軟な操作が可能であり、4KからフルHDにダウンサイズした場合でもその画質はフルHDで直接撮影するよりも優れています。そのため、4K以上の撮影ができるカメラを検討するのがオススメです。
ウェアラブルカメラを利用する多くのシーンは、動きのある環境やアクティブな活動がメインとなります。手ブレ補正の性能はブランドによっても異なるため、撮影内容などの用途に合わせて選択することが大切です。
たとえば、工事現場などで作業者が移動しながらの撮影を行うようなケースでは、カメラの手ブレ補正機能が必須となります。
最近はジンバル(スタビライザー)とカメラが一体となった製品も人気を集めています。このタイプは、高度な手ブレ補正を実現し、プロのような映像を撮影することが可能です。一部のカメラには、専用のシューティンググリップが付属しており、撮影時の安定性を得られます。
ウェアラブルカメラ選びの際は、これらの機能を考慮し、自分の撮影スタイルやニーズに合ったものを選ぶと良いでしょう。
ウェアラブルカメラの機能として注目されているのがWi-Fi™対応です。これにより、撮影後のデータ転送やSNSへのアップロードが非常に簡単になりました。スマートフォンやタブレットとの連携も可能で、撮影データの共有やリモート撮影も実現できます。
これらの機能は、業務用途でも効果的です。たとえば、工事現場で若干の問題や緊急事態が発生した場合、Wi-Fi™接続を使ってすぐに動画を送信することが可能です。
これによって、遠隔地にいる管理者が現場の状況に即座に対応でき、適切に指示が出せます。現場の安全や作業の効率を高めたい企業や、現場スタッフのために選ばれている機能の1つといえます。
ウェアラブルカメラにおいて、画角は映像の臨場感やダイナミズムを表現するうえで非常に重要です。一般的に、ウェアラブルカメラには100度前後の超広角レンズが装備されており、これが特有の映像を作り出す要素となっています。
最近では、さまざまな画角を設定できるモデルも増えてきました。そのなかでもとくに人気が高いのは、ワイドな画角での撮影機能です。
さらに、レンズモジュラーを追加することによって、155度という超広角を実現し、迫力のある映像を撮影できるモデルも存在します。このように、追加アクセサリーが使用可能なモデルを選ぶこともポイントの1つです。
ウェアラブルカメラの導入事例が多い工事現場などでは、突発的な雨や水溜め、さらには高圧洗浄など、カメラが水に触れるリスクが存在します。このような環境での作業を安全かつ効率的に進めるためには、防水性能が重要です。
さらに、工事現場での用途を考えると、ただ防水性能があるだけでなく、泥や塵からカメラを保護する機能も求められます。防水性能を持ったウェアラブルカメラを選ぶことが、工事現場での活用において重要なポイントです。
工事現場における利用を想定すると、タッチパネルが搭載しているモデルが便利です。
工事現場では、迅速な判断と素早い操作性が求められる場面が多く、ボタン操作だけでは不足することもあります。ボタンが小さく操作しにくい機種などは、足場が不安定な高所作業などには不向きであるといえます。
タッチパネルを搭載したモデルを選ぶ場合は、強い日差しや反射光の下での視認性も考慮すべきです。明るいタッチパネル液晶を搭載しているモデルを選ぶことで、効率的に作業を進められます。
360度カメラであれば、現場の様子を全方位から確認できます。たとえば、現場の安全確認や進捗の確認など、一度の撮影で現場全体を確認することも可能です。また、360度カメラによって撮影された映像は、VRゴーグルなどを用いて臨場感のある映像として再生することもできます。
このような方法を用いることで、新人作業者への作業教育にも活用できます。特徴を考慮し、用途にあったウェアラブルカメラを選ぶことが重要です。
現場作業においては、バッテリー性能も考慮すべきポイントです。充電がすぐできないような現場作業において、撮影が途中で中断されるようなことがあれば、作業の効率を大きく損なうことになります。現場の安全確認や進捗の記録として動画を撮影する場合、予期せぬバッテリー切れは避けたいものです。
そのため、バッテリー性能は高いに越したことはありません。信頼性の高いブランドや製品を選ぶことで、現場でのトラブルを最大限に解決できるでしょう。
次はウェアラブルカメラの主な活用シーンを紹介します。
それぞれ詳しい内容についてみていきましょう。
建設業界では、業務効率化や若手現場監督の育成の一環として、ウェアラブルカメラが大きな役割を担っています。在来木造の注文住宅を提供している株式会社ユニバーサルホームでは、若手現場監督の育成のために活用しています。
住宅の建築において、現場監督は通常1人で複数の現場を並行で担当しますが、独り立ちできるまでには約4年ほどの期間が必要と言われます。この課題を解決するために、ユニバーサルホームでは、若手の現場監督がウェアラブルカメラを使用し、離れた場所のベテラン監督者からアドバイスを受けられるように工夫しました。
こうすることで、ベテラン作業者が現場にいない状況でも、作業がストップしてしまうことがなくなり、作業の遅延も防ぐ結果につながっています。
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物流業界でもウェアラブルカメラの導入が注目を集めており、とくに施工管理や保守サービスの分野でその効果を発揮しています。事例として、トーヨーカネツ株式会社の導入事例が挙げられます。
こちらの企業は、プラント事業や次世代エネルギーの開発、物流ソリューションなどの事業を展開しており、熟練技術者から若手技術者への遠隔サポートを目的にウェアラブルカメラを導入しました。
そして、物流システムのトラブル発生時の状況確認や原因特定のため、施工管理部でも同様の導入が進んでいます。このように、ウェアラブルカメラの映像を活用してトラブルの原因を特定することで、業務効率を大幅に向上させています。
製造業界におけるウェアラブルカメラの活用は、現場の効率化やコスト削減に大きな効果をもたらしています。具体的な事例として、JFEエンジニアリング株式会社の鶴見製作所の事例があります。
JFEエンジニアリング株式会社は、鋼板や鋳鍛鋼を用いた大型機械の製造に取り組んでおり、スマート工場を目指す取り組みを推進していますが、その一部としてウェアラブルカメラの導入が実施されました。
過去の製造現場では、エンジニアが実際の作業進捗や問題点を確認するために、たびたび現場に出向く必要があり、効率的とはいえない状況でした。しかし、ウェアラブルカメラを導入することによって、エンジニアは事務所から現場の状況を確認することが可能となりました。
これにより、作業の効率化はもちろん、移動に伴うコストも大きく削減される結果となっています。
医療業界における技術の進化は、日々の業務効率化や患者の安全確保のために非常に重要です。ウェアラブルカメラの導入はその一例として、注目されています。なぜなら、感染症の拡大や人員不足などのリスクにより、遠隔からの患者の診察は不可欠な業務となっているためです。
さらに、医療現場では、命を預かる重要な業務が日常的に行われており、些細なミスでも人命にかかわります。そのため、ウェアラブルカメラによる映像記録は、正確な判断を下すための材料として非常に価値があります。このように、ウェアラブルカメラは医療現場での安心な業務遂行に利用できる支援ツールです。
次はウェアラブルカメラの主要メーカーを紹介します。主要メーカーは次の4つです。
Xactiのウェアラブルカメラは、29gと非常に軽量で小型であり、ヘルメットや帽子、アイウェアなどあらゆる場所に装着できる柔軟性が特徴です。また、IP65の防水防塵性能を持ち、画質も1230万画素と高画質です。
さらに、ブレ補正機能エクスタビライザを搭載しているため、ブレのない安定した映像を実現しています。そして、HDMI®コネクタをHDMI®入力端子付き中継器へ接続することで映像出力を開始し、通信機器を通じた映像配信も実現します。
VUZIXが提供しているスマートグラスは、遠隔作業支援などに最適なスマートグラスで、ソフトウェア次第でさまざまな現場の遠隔支援が可能になります。また、映像や音声を中継している際にハンズフリーで作業できるため、作業の柔軟性も優れています。
さらに、1,280万画素オートフォーカスカメラを搭載し、IP67相当の防水防塵性能やトリプルノイズキャンセリングマイクも搭載しています。そして、Android® OSも搭載しているため、単独での動作も可能です。
DJIは広東省深圳に拠点を置いている企業で、ドローンやウェアラブルカメラ、ジンバルといった映像撮影機器のリーディングメーカーです。
DJIのウェアラブルカメラは、多彩な撮影モードを持つことで注目されています。「ActiveTrack 3.0」は、自動で被写体を追従する撮影が可能で、工事現場で移動する機器や作業員の撮影に適しています。
KODAKのウェアラブルカメラは、高い撮影性能を搭載しています。たとえば、360°撮影が可能なモデルは、工事現場の全体像を一度に撮影できます。この機能により、遠隔地からでも、安全や品質に考慮しながらの指示出しが可能です。
また、多様なアクセサリーも用意されているため、水中撮影や車載撮影など、特定の条件下でも最適な撮影ができます。
また、3軸手ブレ補正の機能があるモデルは、手持ちでもブレの少ない安定した映像が撮影できるため、工事現場での撮影シーンでもブレの少ない映像を残すことが可能です。
次はよくある質問について紹介します。紹介する質問は次の3つです。
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
遠隔業務は、現代の多様な働き方のなかでも増加傾向にあり、現場の情報を迅速に共有するツールの重要性が注目されています。ウェアラブルカメラは、ほかのビデオカメラなどと比べて小型でありながら、耐水や衝撃に対する強度が高い点が特徴です。
とくに、現場で利便性を発揮するのは、ヘルメット装着型やサングラス型のデザインのものです。これらのデザインのモデルは、作業者の両手が塞がることもなく、作業者視点での映像を残すことが可能になります。
また、映像のリアルタイム共有機能も重要です。遠隔にいるスタッフや担当者と現場の映像をタイムラグなく共有できるため、遠隔業務の効率化やミスの防止に効果が期待できます。
ヘルメットに装着するタイプは、3万円前後の比較的リーズナブルな価格で販売されています。一方、高機能なモデルやブランド製品の場合は、10万円以上となることもあるため、予算や必要な機能をしっかりと把握したうえで検討することが大切です。
また、場合によっては購入ではなくレンタルという選択肢も検討するとよいでしょう。実際の使用感を試せるため、購入前の試用や一時的な導入を検討している企業にオススメです。
中古のウェアラブルカメラを購入する際は、工事現場などの過酷な環境で使用することを考え、慎重に選ぶ必要があります。価格がおさえられる中古品ですが、その分リスクも伴うため、以下の点に注意して選ぶことが重要です。
これらのポイントをチェックして、導入の目的に合致したウェアラブルカメラを選ぶようにしてください。
この記事では、ウェアラブルカメラとそのほかのカメラとの違いや、ウェアラブルカメラを選ぶポイント、主要メーカーごとの特徴について紹介しました。
ウェアラブルカメラの多くは小型で軽量という特徴があり、防塵性や防水性、手ブレ補正などの機能を兼ね備えています。これらの特性は、工事現場などの業務効率の支援に非常に有効であり、今後のさらなる活用が期待されています。
ぜひ、この記事を参考に、ウェアラブルカメラの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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