カルテを電子化する際、課題となるのが同意書などの紙でやりとりされる文書の電子化。
電子化の負担を極力減らし、シンプルで誰でも操作できるシステムを目指した長野市民病院様。
それを実現したのが、リコーのプリンター/複合機とデジタルカメラによるバーコードを活用した入出力システムだ。
長野市民の要望により、平成7年に開院した長野市民病院様。長野県の北信地区の中核病院として、高度で良質、安全な医療を提供するとともに、地域連携の拠点病院としての役割を担っている。同院様が特に注力しているのは、急性期医療と救急医療。がんの診断治療は症例数も多く、多彩な治療が行える設備を持つ。「東京に行かなくても、この地域で最高の医療が受けられるようにしていきたい」と、竹前紀樹 病院長。主ながんの手術数は北信地区の病院内でもトップクラスを誇り、地域がん診療連携拠点病院の指定も受けている。また、同病院様は24時間365日の地道な救急医療活動にも注力。昨年は救急車を年間3,500台受け入れ、長野市の医師会とともに一次救急の患者様を診療する急病センターも運営している。
長野市民病院様は2011年2月にカルテの全面電子化を行い、情報共有の強化を実現している。「電子カルテは情報がすぐ取り出せて、全職員が情報を共有できます。紙のカルテは手元にない部門には情報もなくなりますから」というのは、電子カルテシステム導入の責任者でもある宗像康博 副院長。「病院の仕事は年々複雑化し、紙では限界がきています。とはいえ、電子カルテにすれば使う側の負担がかなり増えるのは確か。加えて、できるだけペーパーレス化を進めたいという強い思いもあってシステム準備室で研究を進めていました」(宗像副院長)。「医師・看護師・リハビリなどの部門でチーム医療をうまくやっていくためには、各部門が情報共有することが重要になります。電子カルテはアレルギー情報なども誰かが患者様に聞いて入力しておけば、目立つ形で表示し誰が見てもすぐわかる状態にできます」(竹前病院長)。同病院様の電子カルテに対する期待は大きく、今後チーム医療のための機能を充実させ、チーム内でディスカッションしながら患者様の治療が進めていけるシステム作りを行っているところとのことだ。
長野市民病院様の前システムは、ドクターは紙のカルテ、他の診療技術者は電子カルテという具合に紙と電子のカルテを併用するスタイルだった。今回、全面的なシステム入れ替えに伴い、ドクターのカルテも含めて全て電子カルテ化し、フルペーパーレスの基本構想を実現するシステムが構築された。
「電子カルテは入力の手間がかかるので、手間が省けるところは極力省けるシステムをとずっと考えていました」というのは、同病院次期システム準備室の高野与志哉副室長。フルペーパーレスの電子カルテシステムを構築する場合、毎日大量に発生する紙文書を電子カルテシステムに取り込む作業負荷が問題となります。例えば、患者様に署名をもらった同意書などを電子カルテに貼り付けるためには、患者様のカルテを開き、スキャンしたファイルを適宜リネームし電子カルテに貼り付けるという作業が発生します。この作業負担は意外と大きく、患者様の取り違えが発生するリスクも。患部などを撮影したデジタルカメラ画像を電子カルテに取り込む際の手間もできる限り減らすなど、電子カルテに情報を集約する際の作業の手間を徹底して減らしたシステムにしたいという構想を掲げ、入力機器の選定をはじめました。
そこで注目されたのが、バーコード印刷とバーコードスキャン。「展示会の度にリコーのブースにも必ず足を運び、2~3年前からバーコードのシステムがあることは知っていました。あらかじめ患者様IDを埋め込んでさえおけば、同意書などをバーコード付きで印刷し、スキャンの際もバーコードを利用することでシステムへの取り込み作業負荷を大幅に省くことができる。これなら、手間をかけないシステムが実現できると思いました」(高野副室長)。
先代システムでプリンターをリコー製品に全て入れ替え、トラブルが激減したことでリコーへの信頼が深まっていた同病院様。病院内で稼働するプリンターや複合機は数が多く、安定稼働が重視される。特に、患者様の前でプリントする場所に設置されたプリンター/複合機のトラブルは、診療の妨げにもなる。トラブル対応にかかる手間やスムーズな診療を助ける意味でも、プリンターや複合機の安定稼働は欠かせないものだ。そこで、先代システムでの安定稼働の実績を高く評価していた同病院様は、プリンターと複合機は新システムでも全てリコーで行くと決め、システム構築が進められた。
リコーの複合機を10年ほど前から事務部門に導入し紙文書をスキャンして管理する実地検討をしていた高野副室長には、5年ほど前から現在のシステムイメージがあったとのこと。そこで、安定稼働という面でも信頼があったリコーの複合機を院内に徐々に増やしてインフラを整備し、今回のシステム改変に備えていたという。その構想にバーコード印刷・スキャンのシステムが加わり、思い描いていた「手間をかけないシステム」が実現することとなった。
バーコード印刷は、リコーのプリンター/複合機に「Ridoc IO DataSelector」を加えて実現しており、システム側に手を入れることなく印刷する帳票に患者様IDをバーコード化して印刷する環境を構築することができた。また、「Ridoc GlobalScan」のバーコード読み取り機能に加えて、パネル操作を工夫することで、工数を大幅に減らした紙文書の電子化を実現。「スキャンセンターを用意し、職員を4~5人配置して紙文書を電子化しているケースもありますが、人手で読み込むとドキュメントの取り違えもあり、人件費もかかります。このソリューションを使えば1~2年でペイできる計算です」(高野副室長)。コスト面や間違いを防ぐという面でも、バーコードを活用したスキャンは効果が高いのだ。同病院様では、リコーの複合機が外来/病棟の各スタッフステーションに配置され、患者様の手術同意書や入退院に関する書類をクラークさんに集めてスキャン。システムに取り込むという作業を行っている。このスキャンは毎日のように発生するため、スキャン作業の手間を省く効果は高い。
電子カルテに統合したい情報は手術の同意書などの書類に留まらない。患部を撮影した画像なども、システムに取り込み電子カルテに添付する必要がある。画像データはUSB接続して電子カルテに取り込むこともできるが、取り込みの手間が大きく、セキュリティー面を考慮するとUSB接続での取り込みは避けたいところ。「リコーになにか良い方法はないか相談したところ、バーコードをスキャンして無線LAN転送で写真が送れるデジタルカメラがあることを知りました。バーコードリーダーでタグがつくのは画期的で、これは凄いと思いました」(高野副室長)。 バーコード読み取りと無線送信機能を備えたリコーの「G700SE」を使えば、3ステップ程度の簡単な工程でデジタルカメラ画像がシステムに取り込める。同病院様はこの画像をレントゲンやCT写真を見るための画像参照システムの中に取り込み、電子カルテから呼び出してひとつのインターフェイスで見られる環境を構築。手軽に撮って保存できるため、形成外科などでは初診の約2/3の患者様の写真を撮影し、これまで手書きのイラストで残していた手術経過も写真で記録できるようになった。このデジタルカメラを活用している医師にお話を伺ったところ、「とにかく、撮って転送するのが楽になったので、写真を撮る枚数が増えた」とのこと。特に利用頻度が高い形成外科では、デジタルカメラの増設も検討されている。
手間を極力省きシンプルで誰でも使えることを目指した長野市民病院様の電子カルテシステムは、ほぼ理想の形で実現された。「残る問題はひとつ。現在は紙文書をスキャンしてシステムに取り込んでいますが、このスキャンした文書はタイムスタンプが押されていないと原本になりえません。そのため、現在は紙文書も保管しています。今後1~2年で現在のシステムに手を加えてe文書法に対応した完全ペーパーレスを実現したいと考えています」と、今後の展望を語る高野副室長。このように印刷に留まらず、完全ペーパーレスの電子カルテシステムでもリコー製品は活躍している。
先々代のシステムでは、プリンターのトラブルが非常に多く苦労していましたが、先代のシステムですべてリコーのプリンターに乗り換えたことでトラブルが激減し、システム部門の負担が大幅に減りました。外来でプリンターが止まると診療が止まります。プリンターは安定感を重視し、以来すべてリコー製品にすることにしました。リコーのいいところは、技術がしっかりしていること、そして人がしっかりしていることの2点。その2つがあって、はじめていろいろないいソリューションが出てくると考えています。ドキュメント管理はリコーの最も得意とするところ。これからも人と技術力に大いに期待しています。(高野副室長)
長野市民病院