バスやタクシーなどの運輸業界において、業務の生産性を向上させるためには、ドライバーと事務所の柔軟な情報連携とコミュニケーションが欠かせません。配車や管理、情報共有、コミュニケーションが円滑であれば、より一層のサービス品質向上にもつながります。
そうした中、通信手段としてIP無線の活用に注目が集まっています。
今回は、IP無線の概要からバスやタクシー業界におけるIP無線の活用シーンやメリット、IP無線アプリがより便利な理由までご紹介します。
まずはIP無線とはどのような無線なのか、基本的なところを押さえておきましょう。
IP無線とは、「インターネットプロトコル(Internet Protocol/IP)」を用いたネットワークを通じた通信方法を採用した無線です。IPネットワークは、私たちの身近なところで使われています。その代表的なものが、携帯電話のパケット通信網です。携帯電話で人が通話できるのは、音声をパケットデータと呼ばれるデータにデジタル変換して通信網にのせているからです。
IP無線も、携帯電話と同様に、携帯電話の回線を利用して通信を行っています。
IP無線は、携帯電話の通信網を利用することから、携帯電話の電波がつながる範囲であれば通信が可能です。従来の無線機は1km~2km以内など範囲が限定されていますが、IP無線機は同じ無線機でも大幅に通信エリアが拡大されます。
また一般的な携帯電話と大きく異なる点として、複数機によるグループ通話が可能であったり、トランシーバーのようにボタンを押すだけで通話ができたり、グループへの一斉送信が可能であるといった特徴があります。複数人が同時に稼働して連絡を取り合う業務シーンに適しています。
従来からタクシー無線としてMCA無線がよく利用されてきました。MCA無線は、一般財団法人移動無線センターが提供する無線サービスで、800MHz帯の電波を利用するものです。
全国の中継局を経由して通信を行うため、全国での通信が可能である一方、コストがかかるため必要なエリアに絞った契約を行うのが一般的です。MCA無線は空いたチャンネルを自動的に割り当てられて利用するため混雑や混信によるノイズがありません。このような利便性から、災害時によく利用されています。
ただし、免許の申請が必要であり、契約しているエリアが限定的であるデメリットがあります。特にタクシーは移動しているためエリアの範囲を出てしまうと通信が行えなくなります。また、特定のチャンネルを割り振られることで通話を行うため、1回につき3~5分程度しか通話できません。
IP無線はMCA無線と比べて日本全国、山岳地帯など以外はどこでも比較的つながりますし、混雑や混信によるノイズがなく、免許申請も不要、長時間通話も可能といった点が異なります。
IP無線は、他の無線と比べてもメリットが多く、利便性も通話品質も高いことから、店舗やイベント、医療機関などのほか、タクシーやバス業界での導入も進んでいます。
現在、バス・タクシー業界において、 IP無線の利用が進んでいます。実際、どのようなシーンで利用されているのか、利用シーンをご紹介します。
IP無線を利用することで、事務所のスタッフからドライバーへの、渋滞や道路事故の発生といた交通状況等の素早い情報伝達や、円滑なコミュニケーションを実現できます。
IP無線は緊急時や災害時などにおいて、即座にドライバーと事務所が連絡を取り合える手段となるため、安全性の向上にも寄与します。
GPS機能を搭載しているIP無線システムでは、各バスの運行状況や位置確認をリアルタイムで行うことができます。運用管理に役立ちます。
IP無線はどのエリアでもつながり、コミュニケーションが即座に行えます。タクシー配車の際、事務所からドライバーへの指示も円滑に行うことが可能です。
バスと同様、緊急時や災害時などにおいて、即座に連絡を取り合える手段となるため、安全性の向上にも寄与します。
GPS機能を搭載したIP無線であれば、各タクシー車両の位置情報確認や運行管理が可能となり、サービス向上につながります。
IP無線をバスやタクシーに活用することにより、多くのメリットが生まれます。
先述の通り、IP無線は従来の無線のように通信できないエリアやタイミングが少なく、インターネットがつながる場であればいつでも基本的につながるため、ドライバーとセンターとのコミュニケーションが円滑になります。効率の良い配車や車両管理、人員の配置の最適化が実現するでしょう。
事故や渋滞といった道路状況などの運行中に必要な情報伝達や最適ルートの指示などが、スピーディーに行えるのも大きなメリットです。
事務所スタッフとドライバーが常日頃から連携できていれば、お客様対応の際などにも、スムーズに対応でき、よりサービス向上が実現します。結果的に、顧客満足度向上につながるでしょう。
IP無線の中には、強制起動、一斉発信できる機能を有するものもあるため、自然災害や火災といった緊急事態に利用することで、安全管理・緊急時対応が可能となります。また企業として、緊急時における事業継続の準備となるBCP対策としての活用もできます。
IP無線は、バスやタクシー業界において効率的なコミュニケーション手段として注目されています。
導入にはいくつかのステップが必要です。以下に、バスやタクシーにおけるIP無線導入の具体的なステップを解説します。
まず、IP無線を導入する目的や期待する効果を明確にすることが重要です。例えば、運行管理の効率化やドライバーの安全確保、リアルタイムでの情報共有など、具体的なニーズを洗い出します。
次に、IP無線の提供業者やシステムの調査を行います。市場にはさまざまなIP無線システムが存在するため、自社のニーズに適したものを選定することが求められます。信頼性、コスト、サポート体制などを総合的に評価し、自社に合ったパートナーを見つけることが重要です。
選定したIP無線システムを導入するためのインフラ整備が必要です。具体的には、基地局の設置やネットワーク環境の整備、必要な機器の調達などが含まれます。また、既存の通信インフラとの互換性も確認することが重要です。
インフラが整ったら、実際にシステムを導入し、テストを行います。この段階では、システムが期待通りに動作するかどうかを確認し、不具合があれば修正を行います。また、ドライバーやスタッフへの初期トレーニングもこの段階で行います。
テストが完了し、問題が解決されたら、いよいよ運用を開始します。運用開始後も継続的なモニタリングとフィードバックを行い、システムの改善を図ります。必要に応じて、追加のトレーニングやシステムのアップデートを行うことで、効果的な運用を維持します。
バスやタクシーなどの運輸業界には、特にIP無線アプリが最適です。
IP無線アプリとは、スマートフォンに専用アプリをインストールすることでスマートフォンをIP無線化して利用する方法です。
なぜ運輸業界に最適なのか、その理由として、次のことがあります。
IP無線アプリは、スマートフォンがあればアプリをインストールするだけで利用開始できるため、スピーディーかつ機器の購入も不要です。また月額固定料金制のことも多く、コストを抑えられます。人手不足で課題が多い運輸業界において、有益といえるでしょう。
IP無線アプリの契約は、年単位や月単位で行えるサービスも多く、短期契約で気軽に使えます。
車内固定のIP無線機では持ち運びができませんが、IP無線アプリなら持ち運びができるため、車載用途以外でも利用ができます。車両の外でもどこにいても会話ができるため、業務コミュニケーションがより円滑になります。
また車内固定のIP無線機を導入した場合、携帯型IP無線機に比べてやや高額であるのが一般的です。一度車両に取り付けると簡単には移設できないデメリットもあります。
スピーカーマイクといったハンズフリー通話が可能な周辺機器を使用すれば、運転中にもコミュニケーションが可能となります。またハンズフリー通話は、車両の外でも、手がふさがっているときなどにも会話ができるので便利です。
バスやタクシーなどの運輸業界において、すでにIP無線は有効活用されています。
安全管理やコミュニケーションが求められるこの業界において、IP無線は大きな価値を生み出します。
また、特にIP無線アプリはおすすめの手段です。
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