デジタル印刷機のしくみ

デジタルに進化したガリ版

「印刷」とはその名のとおり、「版（ハン）にインクをつけて刷る」ということ。学校の先生が手をインクで汚しながら、ガリ版でプリントを一枚いちまい印刷していた姿が懐かしいですね。そのガリ版が、今ではデジタル印刷機となって、手を汚さなくてもたくさん印刷できるようになりました。

その印刷機、ちょっと見では、コピー機にそっくり。でも、一枚づつスキャンして複製するコピーとはちがい、初めに「版（マスター）」をつくり（製版）、それにインクを通すことによって多数枚複製するので「印刷」といいます。そのしくみを探ってみましょう。

印刷方法は、版の違いによって、４つの方法に分けられます。

凸凹をつけた版の凸部にインクをつけて紙に転写する方法です。

木版画やゴム版画、活版印刷などがこの原理でおこなわれています。版は左右逆につくられています。

凸版とは逆に、凸凹をつけた版の凹部にインクをつける方法です。版にインクをつけた後、凸部のインクを取り除き、紙に転写します。

エッチングやドライポイント（銅版画）、グラビア印刷（カタログや雑誌など、写真を美しく印刷するとき用いる印刷方法）などが代表的なものです。

版には凸凹をつけず、水と油の反発する性質を利用して、印刷したくない部分に水を含ませインクの油をはじかせることで像をつくります。リトグラフ（石版画）や、一番普及しているオフセット印刷はこの方法を用いています。

版自体に穴をあけ、上からインクを通すことで紙に転写する方法です。古くはガリ版、今は家庭用年賀状ミニ印刷機やスクリーン印刷（絹やナイロン、ステンレスなどでできたスクリーンに直接・間接的に穴をあけて印刷する方法）などがこの原理を応用しています。リコーのデジタル孔版印刷機もこの方法です。

正式名称は「謄写版」。鉄筆でがりがり書くので「ガリ版」と呼ばれるようになりました。

ロウがひかれた原紙をヤスリの上に置いて、鉄筆でロウを削って文字や絵を書きます。

原紙を印刷機にセットして、インクをつけたローラーをころがして印刷します。

ロウ原紙のあとには、ボールペンで書く緑色の「ボールペン原紙」というのもありました。これも孔版印刷です。

スクリーン印刷や家庭用年賀状ミニ印刷機もこの印刷方式です。

「ガリ版」印刷に始まった孔版印刷は、今ではデジタル印刷機となって職場や学校で活躍しています。

1.読み取り・画像処理
原稿をセットして、製版スタートキーを押すと、光が原稿をなぞって原稿パターンをドットパターンに変換し、製版部に送ります。直接つないだパソコンやワープロからダイレクトに原稿データを送ることもできます。
2.製版
マスター（版）のフィルム面は、サーマルヘッドの熱の力によって原稿どおりに穴をあけられ、ドラムに巻き付けられます。

3.印刷
ドラムは、蜂の巣状に穴があけられたステンレスの板（版胴）で、さらにその上からスクリーンと呼ばれる目の細かい布が巻き付けられています。
ドラムの内側からインクローラーがインクを押し出して、版胴、スクリーンを通過したあと、マスターの原稿パターンに沿って押し出され、原稿パターンを紙に転写します。

薄い和紙の上に熱可塑性樹脂フィルムを張り付けたシートです。リコーのマスターはインク透過の均一化を図り、300dpi、400dpi、600dpiの高画質を実現しました。

オイルに水を乳化させて作ります。ベースとなるオイルに顔料が混ぜられています。

マスターの通過しやすさ、紙への浸透しやすさ、乾燥しやすさというさまざまな特質が必要です。

リコーは、原稿パターンをドット化する部分に独自に設計した新ICを採用。文字部分と写真部分を分けて処理することで文字と写真が混じった原稿でも美しく再現できるようにしました。さらに超微細サーマルヘッドがきめ細かくマスターに原稿パターンを焼き付けることで、高画質を実現しました。

また、学校や保育園で印刷されたものは、手で触れ口へ入れる可能性もあると考え、インクの安全性を図り、皮膚への刺激性や毒性なども入念にチェックしています。