近年、プラスチックごみや気候変動への対策が重要視される中、素材やデザイン、さらにはライフサイクル全体で環境負荷を抑える取り組みが注目されています。中でも、包装材の選択はカーボンフットプリントや廃棄物削減に直結し、企業と生活者の双方にとって大きな課題となっています。
そこで本記事では、環境配慮型パッケージを取り巻く国内外の法規制の動向、紙化・繊維化や生分解性など多様な素材技術の進化などを紹介します。
環境配慮型パッケージが強く求められる背景には、EUが2025年2月に発効した包装・包装廃棄物規則(PPWR)の存在が大きく影響しています(参照*1)。従来はEU指令として各国の国内法で整備されていましたが、規則として欧州連合全域で一律に適用されることで、より厳格な基準が定められるようになりました。
適用範囲は包装材にとどまらず、製造・流通・表示などライフサイクル全体を対象とし、拡大生産者責任や再利用・リサイクルの仕組み強化が求められています。特にリサイクル可能な包装の要件では、2030年以降に大規模リサイクルが実現できない製品は市場に出しにくくなる見通しであり、等級評価によってリサイクル性能が分類される点も注目されています(参照*1)。
こうした欧州の取り組みは他国にも影響を与えています。アジアや北米の各国では独自のプラスチック規制やバイオマス原料利用への移行などが検討され、法整備や産業界への要請が進みつつあるのも近年の大きな潮流です。
また、グローバルな視点では、プラスチック汚染防止条約の構築に向けた国際交渉が続いています。2024年11月に韓国・釜山で開催されたINC-5(政府間交渉委員会)では、プラスチック製品や化学物質の規定に関して国間の隔たりが大きく、合意には至りませんでしたが、今後も再開会合で議論が継続される予定です(参照*2)。
日本国内では、2022年4月にプラスチック資源循環促進法が施行されました。これは、プラスチック製品の設計から廃棄物処理・リサイクルまで、企業や自治体の責任を明確化することで、プラスチックごみの抜本的な削減を目指した法律です。2025年には、プラスチック使用製品設計指針に基づく「設計認定の基準」が一部の製品分野で公表されるなど、ガイドラインや下位基準の整備が進みました(参照*3)。これにより、使い捨てプラスチックの使用量削減や再資源化を後押しする仕組みが、より具体化しています。
しかし、消費者庁が実施した令和7年版消費者白書によれば、グリーン志向の消費行動は国内でも着実に高まりつつあるものの、情報のわかりにくさや価格面の課題によって行動に移せない層が一定数存在すると指摘されています(参照*4)。
また、2024年6月に実施された生活者意識調査(調査対象2,730名)では、生活者の65.5%が気候変動問題に関心を持ち、梱包材を含む資材への環境配慮を企業に期待する人は76.3%にのぼることが明らかになりました(参照*5)が、一方で、企業側ではコスト面や環境負荷軽減に対する正当な評価を得にくいという課題が根強く、実行のハードルとなっています(参照*6)。
今後、日本国内の製造業や流通業ではプラスチック削減だけでなく、素材転換や適切なリサイクルの仕組みづくりが導入・拡大する見通しです。
上述した背景から、従来の使い捨てプラスチックを代替する手段への需要が急伸しプラスチック包材を紙や繊維系素材へと切り替える事例が増えています。
具体的には、食品包装などで従来はプラスチックを使用していた分野でも、耐久性や防湿性を強化した紙素材が用いられ、一定の機能要求を満たすようになりました。また、繊維化技術により、保湿や密封性を重視する分野への応用も期待されています。
ただし、紙素材に転換すると、湿気への抵抗力や酸素バリア性の不足が課題となる場合があります。そのため、紙と他素材を組み合わせたラミネート構造が活用されるケースもあります。
また、最近では、印刷工程で水性インキを使い、揮発性有機化合物(VOC)の排出を最小化する技術が導入され、環境負荷を下げる努力が進んでいます(参照*7)。軟包装の領域でも、無溶剤ラミネート設備の導入やEB(電子線)を活用した印刷へのシフトが広がっています。
紙系素材(紙器・繊維系素材)への転換は、飲食料品に限らず、化粧品やヘルスケア領域でも検討が進んでいます。実際に化粧品分野では、パルプモールド容器の採用といった紙系素材への置換事例が報告されています(参照*8)。医薬品・消費者向けヘルスケア分野でも、プラスチック代替として繊維(紙)ベース包装を開発する取り組みが進んでおり、成形パルプ技術を用いた包装の共同開発や、錠剤包装(ブリスター)を紙系素材で成立させるための業界横断の取り組みが見られます(参照*9)。
プラスチック代替として注目されている素材の一つが、生分解性プラスチックやバイオマス由来の樹脂です。
生分解性プラスチックは、一定の環境条件下で微生物によって分解される性質を持ち、ポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)などが代表例です。
これらの素材は最終的にCO2と水に分解されるため、廃棄時の負担を軽減できると期待されています。ただし、分解には適切な温度や湿度などの条件が必要であり、不適切な廃棄ルートでは一般的なプラスチックと同様に残存する可能性がある点には注意が必要です。
バイオマス素材は、サトウキビやトウモロコシなどの植物由来原料を用いて製造されます。石油資源の使用量削減やカーボンニュートラルへの貢献が期待されており、国内でもマスバランス方式の導入事例が増えています。たとえば、セブン‐イレブン・ジャパンではパスタ容器の紙素材化により年間約370トンのプラスチック使用量削減を見込むとともに、弁当容器などへのマスバランス方式バイオマスプラスチックの採用を通じて、石油由来プラスチックの使用量を年間約70トン削減することを目指した取り組みを進めています(参照*10)。
ただし、生分解性やバイオマス素材も無制限に適用できるわけではありません。バリア性能が求められる場面では、完全に石油由来のプラスチックを排除すると品質保持が難しくなるケースもあります。ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点からも、単に生分解性であれば良いというわけではなく、製造過程のCO2排出量や分解後の処理方法などを総合的に判断する必要があります。
環境配慮型パッケージを普及させるうえでは、再生樹脂の品質を安定させる技術と、回収から再資源化までをつなぐクローズドループ型の循環設計が重要な論点になります。
再生樹脂は一般に、使用済みプラスチック(PIR材、PCR材)を回収し、選別したうえで、破砕・洗浄などで不純物を除去し、溶融・押出を経てフレークやペレットとして再生原料化する工程で製造されます。特に、ポストコンシューマ由来の材料(PCR材)は、回収・分別のばらつきに起因して異物混入、色味・外観の変動、におい等が品質課題になりやすいことが指摘されています(参照*11)。とくに食品接触用途では、非食品用途由来の混入や残留物質の管理が論点となるため、米国FDAは「工程として汚染物質を十分に除去できること(デコンタミネーション能力)」の説明や評価を求めています(参照*12)。
近年は、こうした課題に対応するため、選別精度の向上や洗浄・除染工程の高度化を前提に、食品接触用途での再生プラスチック利用に関する制度整備・評価枠組みが進んでいます。EUでは、食品に接触する再生プラスチック材料・成形品の上市要件を定める規則が整備され(参照*13)、EFSA(欧州食品安全機関)は機械式リサイクル(主にPET)について、チャレンジテスト等を含む評価基準・評価アプローチを明確化しています(参照*14)。このように、食品包装に用い得る再生樹脂は「工程管理と評価」を前提に実装が進む領域として位置づけられます。
また、再生材の供給を安定させるには、「作る側(供給)」と「集める側(回収)」を分断せず、回収・再資源化の費用や責任分担を制度的に組み込むことが有効です。OECDは拡大生産者責任(EPR)について、製品の使用後段階まで生産者の責任を拡張し、回収・リサイクルの財源確保や設計改善のインセンティブを与える政策として整理しています(参照*15)。日本でも、EPRの考え方自体が循環型社会形成の重要概念として説明されており(参照*16)、容器包装分野では容器包装リサイクル制度の枠組みが運用されています。
さらに、クローズドループの実装(例:ボトルtoボトル)のように、用途をまたいだダウングレードを避け、同種用途への循環を継続する仕組みは、再生材の品質要件と回収スキームを結びつけやすい考え方です(参照*17)。加えて、回収後の選別・品質管理を強化する手段として、包装にデジタル情報を付与して選別ラインで読み取り、用途別(例:食品/非食品)に仕分ける構想(デジタルウォーターマーク等)も検証が進んでいます(参照*18)。製品識別子をURL等に結びつける標準(GS1 Digital Link)のように、識別と情報連携を容易にする枠組みも整備されており(参照*19)、EUでもデジタル製品パスポート(DPP)がESPRの下で重要な施策として位置付けられています(参照*20)。
再生樹脂の活用が進むと、企業は新品の石油由来プラスチックの使用量を大幅に減らすことができます。そのため、容器の設計段階でリサイクル適性を高める必要があります。多層構造を製品化すると素材が混在してリサイクルしにくくなる場合があるため、単一素材の設計に適合させることが望ましく、特に2030年以降、リサイクル性能等級が高くない包装材は欧州市場で扱いにくくなる可能性があるため、グローバル企業のみならず日本企業にも設計段階の最適化が求められています(参照*1)。
環境配慮型パッケージの導入では、コスト負担と耐久性(バリア性・機械強度)の確保が主要な論点になります。生分解性素材やバイオマス素材は、石油由来プラスチックと比べると生産量がまだ小さく、価格面で不利になりやすいことが指摘されています(参照*21)(参照*22)。
また、紙化や生分解性プラスチック化を進めると、用途によっては水分やガスに対するバリア性、湿潤条件下での性能維持などが課題になり得ます。紙素材についても、包装用途で必要な耐水性・バリア性を確保するために、コーティング等による改質が検討されていることが報告されています。
こうした課題に対し、企業は「環境配慮」と「購買時の安心感(使い勝手・見た目)」を同時に成立させ、ブランド価値と環境価値の両立を差別化要素として提示する動きが見られます(参照*23)。たとえば花王は、おしゃれ着用洗剤「エマール」の容器で、見た目や耐久性を保ちながらプラスチック使用量を削減する設計を採用したと説明しています(参照*24)。
今後は、単体素材の置換だけでなく、資源採取から製造、流通、使用、回収・再資源化までを含むライフサイクル思考で改善余地を探り、運用を含めた全体最適で負担を抑える考え方が重要になります(参照*25)。
また、日本でもプラスチック資源循環に関する実証事業の採択など、公的支援を通じて循環システムの構築を後押しする枠組みが提示されています(参照*26)。加えて、NEDOのグリーンイノベーション基金のように、研究開発から実証・社会実装までを支援する制度も整備されており(参照*27)、政策的支援が新技術・新素材の普及を下支えする、という整理が可能です。
本記事では、世界規模で進む環境配慮型パッケージの潮流と、素材開発・政策動向・先進事例を概観しました。欧州のPPWRをはじめとする国際的な規制や、国内での法整備が加速するなか、紙化やバイオマス素材、再生樹脂のクオリティ向上が今後の課題ですが、企業にとっては、環境負荷低減とブランド価値向上を同時に実現できるチャンスといえます。
一方で、コストや耐久性、情報提供の難しさなど課題は依然として残ります。こうした課題を乗り越えるためには、素材選定や包装設計の工夫、消費者とのコミュニケーションが重要です。市場や規制が今後も変化する中、多様なイノベーションと協力体制によって、環境配慮型パッケージは新たな価値を生み出していくことが期待されます。
環境配慮型パッケージの導入が進む一方で、現場ではバイオマス素材、再生樹脂、従来の石油由来プラスチックが同一の回収・処理工程で扱われるケースも散見されます。
マテリアルリサイクルを成立させるためには、外観や表示だけでは判別が難しいこれらの素材を正確に分別し、用途や再資源化工程に適した形で振り分ける技術が不可欠です。
では、こうした課題に対して、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。さまざまなパッケージ素材を正確に分別できれば、マテリアルリサイクルの実効性は大きく高まります。
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日々様々なシーンで利用しているからこそ、しっかり判別して再利用率を高め、環境にやさしい使い方をしていきましょう。
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