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樹脂判別ハンディセンサー(RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150) ナレッジ 廃プラ選別技術の最前線|近赤外線・静電選別の仕組みから最新事例まで

プラスチック資源循環
廃プラ選別技術の最前線|近赤外線・静電選別の仕組みから最新事例まで

2026年7月2日

はじめに

日本国内では資源有効利用促進法の改正などに伴い、廃プラスチックの回収とリサイクルが強く求められてきました。一方、樹脂素材の種類が多様化し、複合原料も増加しているため、高度な選別手法が不可欠な状況です。
本記事では、廃プラスチック選別技術の詳細を多角的に解説します。

廃プラスチック選別技術の主要方式とメカニズム

前述の内容を表した図

廃プラ選別技術にはさまざまなアプローチがあります。中でも、近赤外線を利用した樹脂種の判別や静電気力を用いた粒子の帯電差に基づく分離は、多種多様なプラスチックを効率的に仕分けできる点で注目されています。
さらに近年は、AIによる素材判定アルゴリズムとロボットアームによる自動ハンドリングが組み合わさり、選別の自動化と高精度化が進んでいます。ここでは、各方式の仕組みを詳しく見ていきます。

近赤外線選別による高精度な樹脂識別

近赤外線は樹脂によって吸収スペクトルが異なるため、特定の波長域を解析することで対象樹脂の種類を識別できます。この原理を活用した小型センサーの上市が進んでおり、リコーが開発したハンディタイプの樹脂判別センサー「RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150」もその一つです。片手で操作でき、わずか2秒で種別判定が可能です。
判別できるプラスチックの種類は2022年9月時点で13種類に対応しており、国内で流通量の多い主要汎用樹脂を中心に幅広くカバーしています。(参照*1)。このような機器を活用することで、廃プラスチック中に含まれる樹脂の混在傾向を把握することができ、厳密な定量評価には限界があるものの、再利用可能な材料を見極めながら迅速に分別工程へ振り分けることが可能になります。その結果、前処理や選別工程の効率化につながり、廃プラスチックリサイクル全体の運用効率を高める効果が期待できます。

近赤外線方式は、透明樹脂や一般的な色付き樹脂の識別にも応用でき、条件が整えば複数原料が混在したプラスチック屑に対しても高い識別精度を発揮します。一方で、着色剤の種類や汚れの付着状況によっては識別精度に影響を受ける場合があります。一般的に識別対象となる素材としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など、廃プラスチックとして排出量の多い汎用樹脂が中心となります。これらの主要素材を安定して判別できる点が近赤外線方式の大きな特長です。
今後は、検出装置におけるスペクトル解析技術の改良やデータ蓄積の進展により、対応可能な樹脂の拡張や、選別工程における運用の効率化・高度化が進むと見込まれます。

静電選別が実現する微細な混合プラスチックの分離

静電選別は、プラスチック粒子に帯電量の差を生じさせ、その反発力や吸着力を利用して樹脂種を分ける方式です。三菱電機株式会社では、家電リサイクル事業で培った独自の静電選別技術を高度化し、混合プラスチック片を種別ごとに連続的に分離する方式を検証しています(参照*2)。複数のプラスチックが混ざる廃棄物では、装置内で粒子を帯電させるプロセスや選別後の仕分けが重要です。静電力による分離は乾式で行えるため、水や薬剤を使わない点が特徴で、コストと環境負荷の両面でメリットを出せる可能性があります。
また、同社はAI技術を組み込んだスマート静電選別システムの開発も進めており、組成変化に適応して自動調整を行う仕組みを検証しています(参照*3)。これは、あらかじめ設定した分類基準だけでなく、実際に流れてくる廃プラスチックの種類や比率の変動をリアルタイムで判断し、選別機の条件を最適化するものです。さまざまな産業分野で発生する微細な混合物に対応可能で、より高純度な素材を取り出せる点が強みといえます。

AI識別とロボットアームを組み合わせた自動化の進展

近赤外線(NIR)や静電で樹脂種を判定できても、次に問題になるのは判定結果に基づき、ライン上の対象物を“どうやって”取り出して分別するかです。NIR選別では、樹脂の分光特性(スペクトル)から樹脂種を識別し、圧縮空気などで対象物を別ラインへ弾き分ける方式が広く用いられます(参照*4)。一方、帯電を用いた静電選別では、摩擦帯電や電界によって粒状・フレーク状の樹脂を分離し、回収箱に振り分ける方式が研究・実装されています(参照*5)。
ただし、実際の廃プラスチックは形状が不揃いで、破片・フィルム・複合材・汚れの付着も起こり得るため、センサーの判定だけでは「最終的な取り分け(異物除去や品位向上)」が難しい場面があります。そこで近年注目されているのが、画像認識(認識アルゴリズム)とロボットアームを組み合わせた自動ピッキングです。リサイクル工程におけるロボット支援選別は、カメラ等で対象を検出し、エンドエフェクタ(グリッパ/吸着など)で掴み上げて別ラインへ移す仕組みとして整理されています。実装例としても、AIで対象物を識別し、ロボットが取り出す選別ラインの導入事例が国内外で紹介されています(参照*6)。
AI(機械学習)を認識モデルに組み込む狙いは、例えば「形状・汚れ・部分的な欠損」など現場で起こるばらつきに対して、識別精度を高め、誤検知や取りこぼしの低減を図る点にあります。環境省の導入事例集でも、AI選別ロボットによる処理産物品質の向上や労働環境面の改善が記述されています(参照*7)。また、現場データを蓄積して学習更新することで識別を改善していく、という運用イメージも報告されています(参照*8)。

高度選別技術がもたらすリサイクル品質の向上

前述の内容を表した図

高度な廃プラ選別技術の導入は、仕分けの効率向上だけでなく、得られるリサイクル原料の品質にも大きく影響します。品質が高ければ、さまざまな用途に再利用が可能となり、処理コストの低減やカーボンフットプリント削減などの効果も期待できます。ここでは、リサイクル素材の純度やコスト面から選別精度の重要性、黒色プラスチックなど判別の難易度が高い素材への最新対応策を取り上げます。

水平リサイクルに求められる純度基準

近年は、ペットボトルを再びペットボトルへ還元するような同種素材への再転用、いわゆる水平リサイクルが注目されています。この取り組みを実現するためには、再生されるプラスチック素材が元の製品に近い品質を確保する必要があります。その際、食品容器用途など一部の水平リサイクルでは、純度99%以上といった非常に厳格な基準が設定されるケースもあり、混入率が数パーセント未満でも異種樹脂が入ると製品品質が大きく低下する可能性があります。
こうした高い純度基準を満たすためには、近赤外線選別機や静電選別機による細かな分類が欠かせません。リコーが検討を進める水平リサイクル向けの資源循環デジタルサービスでは、排出段階で分別を実施することで異種材料の混入を低減し、それらのデータを回収業者やリサイクラーと共有することで、どの素材がどこにどれだけ排出されているかを可視化する取り組みも行われています(参照*9)。このようなデジタルサービスは、統合的な水平リサイクルを成立させる基盤として期待されています。

選別精度の向上が産廃処理コストに与える影響

廃プラスチックの産業廃棄物処理では、分別精度が不十分だとリサイクル原料としての価値を高められず、別工程での処理コストも上乗せされてしまう傾向があります。混在度が高いまま焼却や埋め立てに回される場合は、産業廃棄物処理そのものの費用が増加するだけでなく、環境負荷も増大します。そこで、先進的な静電選別技術や近赤外線センサーを導入し、原料の混合度合いを低減することで、資源の有効利用率を高めることが可能です。実際に、FKエコグループは廃プラスチックや木くず、紙くずを効率的に選別・破砕し、最終的にRPF(固形燃料)として利用する事業体制を整え、大量処理を実現しています(参照*10)。
このような高度選別技術を導入することで、再生原料として出荷できる品質の底上げや、焼却・埋め立てに回る量の抑制による処理コスト低減といった効果が期待されます。一方で、精密選別装置には設備投資費や維持管理コストが伴うため、導入にあたっては処理量や対象物の組成、再生材の用途などを踏まえた定量的な費用対効果の検討が不可欠です。
中長期的には、安定した再生材供給による取引価値の向上や、処理プロセス全体の効率化を通じて、投資回収につながるケースも少なくありません。

センサー技術の進化による黒色プラスチックや複合素材への対応

廃プラスチックの中には、黒色着色されたものや繊維・ゴムなどを含む複合樹脂が多く含まれます。従来の近赤外線(NIR)方式では、黒色樹脂に含まれるカーボンブラックが近赤外線を強く吸収するため、材質判別が困難という課題がありました。こうした課題に対し、近年ではラマン分光や中赤外線(MIR)分光、ハイパースペクトルカメラなど、近赤外線以外の分光技術を活用した識別手法が実用化段階に入りつつあります。また、繊維やゴムなどを含む複合樹脂についても、単純な材質判定にとどまらず、分光情報や画像情報を組み合わせて解析することで、複合状態を前提とした選別ロジックの構築が進められています。これにより、従来は選別が難しかった材料についても、用途に応じた分離・再利用の可能性が広がりつつあります。
具体的には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発では、多様な素材を対象とした高度な選別システムの構築が進められており、複合プラスチックの再利用が従来より容易になる成果が報告されています(参照*11)。また、AIを活用した画像解析技術と組み合わせることで、黒色素材に含まれやすい識別困難な物質についても、選別工程での取りこぼしを低減することを目指した事例が増えています。こうした取り組みが進展することで、従来はサーマルリサイクルを中心とした処理が選択されることの多かった難度の高い廃プラスチックについても、さらなる活用の可能性が広がると期待されます。

国内外の国家プロジェクトとメーカーによる導入事例

前述の内容を表した図

選別技術の飛躍的な向上は、国レベルのプロジェクトや大手メーカーによる投資が大きく貢献しています。ここでは、それらの動向を紹介します。

NEDOプロジェクトにおける革新的プラスチック資源循環技術

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、革新的な廃プラスチック処理技術の研究開発を推進する公的機関として、多数の企業や研究機関と連携しながらプロジェクトを進めています。そこで得られた成果の一端が、複数の樹脂種類を高精度で分離する高度選別システムの開発です。焼却や埋め立てに回らず、高効率型のマテリアルリサイクルを行う道筋が明確化されたことで、産業構造自体が大きく変化する潜在力を持っています(参照*12)。
また、NEDOの成果発表によれば、段階的に高度選別システムを社会実装することで、産廃処理の最適化や資源効率の飛躍的向上が見込まれています。特許出願や学会発表などを通じて知見が共有され、多様な事業者同士の連携による商業化の可能性も広がっています。こうしたプロジェクトが継続的に動くことで、新しいリサイクル産業の育成や国際競争力の強化にもつながります。

大規模リサイクル設備への高度選別導入による処理能力と純度の向上

欧州では、食品包装メーカーグループのリサイクル部門が、使用済み食品トレー由来のPETを「トレーからトレー」に戻す用途を狙い、フレーク選別設備へ投資しています。FaerchグループのCirrec(オランダ・ダイフェン)は、2024年にTOMRAのフレーク選別機(INNOSORT FLAKE、AUTOSORT FLAKE など)を複数導入し、汚れや異材が混在しやすい使用済みトレー由来の原料から、食品用途を前提とする高純度のPETフレークを得る工程を組み込みました。同社は新ライン導入により旧ライン比で処理能力を2倍にし、既存ラインの改良分と合わせて年6万トン規模の処理能力を掲げています(参照*13)。
また、FKエコグループが新設した選別ラインでは、2軸破砕機・振動スクリーン、風力選別機などを組み合わせて日量191トンの廃プラスチック処理を達成しています(参照*10)。これらの新システム導入により、多様な廃材から高品質リサイクル材が生み出され、その後RPF化や別用途への転用が促進されています。

AIロボット選別による回収品目・回収率の拡大

米国のMRF(資源回収施設)では、AI画像認識で対象物を識別し、ロボットで選別する方式の導入が進みました。ロボットの前段にはカメラがあり、ベルト上の搬送物を連続的に撮影します。

AMPの説明では、AIは対象物を色・サイズ・形状・透明/不透明(opacity)・ブランド表示など複数の外観的特徴を組み合わせて識別し、回収対象を判定します。このように、単一の判定軸に依存せず、複数の特徴量を用いて総合的に判断することで、実際の選別現場における判別精度の向上を図っています(参照*14)。
AIによって回収対象が判定されると、その結果に基づいてロボットが選別動作を実行します。具体的には、搬送ベルト上の対象物の位置や移動速度をもとに、ロボットの可動範囲内で最適な把持タイミングを算出し、吸着や把持といったエンドエフェクタを用いて回収し、指定されたシュートやラインへ振り分けます。AMPの資料では、このようにAIによる識別とロボットによる回収動作を連携させた自動選別システムの構成が示されています。(参照*15)。

深層学習つき光学選別で、混在プラから高純度ストリームを作る

廃プラスチックの選別で難しいのは、単に「プラスチックかどうか」を判別することではありません。実際の運用現場では、同一系統の樹脂が混在したり、汚れや印刷、添加物の違いが影響したりするため、目的とする樹脂のみを高い純度で分離・回収することが、選別工程における重要な課題となります。ここで純度が落ちると、その後工程で作るペレット(再生材)の品質が安定せずに、用途が限定されます。
スペインのリサイクラーEslava Plásticosでは、この課題に対してPellenc STの光学選別設備を導入し、LDPE(低密度ポリエチレン)スクラップから「クリーンなストリーム」を作る工程を組み込みました。これにより、混在物を含みやすい投入原料でも、後工程に回せる選別物の品質を揃えやすくなります(参照*16)。
この取り組みのポイントは、従来の近赤外(NIR)方式のみに依存せず、可視領域(VIS)を含む分光情報と深層学習(Deep Learning)を組み合わせて判定を高度化する設計にあります。Pellenc STは、このような分光技術と深層学習の統合により、解析処理の高速化を図りながら、従来は対応が難しかった複雑な選別タスクにも対応できるとしています。

デジタルウォーターマークによる高精度選別

見た目や材質が似通った包装材は、近赤外線や色選別だけでは、用途別(食品・非食品、グレード違い)まで細かく切り分けることが難しい場合があります。HolyGrail 2.0では、包装に不可視のデジタルウォーターマークを付与し、回収後の選別工程でこれを読み取って仕分ける手法について、実証プロジェクトとして検証が行われました。

プロジェクト側は、試験で検出・排出・純度の指標を整理し、R&Dから商用設備での試験運転まで段階を分けて検証プロセスを構築しています(参照*17)。また、産業スケールでの試験を実施した旨もプロジェクト情報として明記されています(参照*18)。

おわりに

廃プラスチック選別技術は、多様化する樹脂素材に適応しながら、AIやセンサー技術とも連携し、今後ますます高機能化が期待されます。一方で、導入コストや分別プロセスの最適化など、現場レベルの課題も残されています。
国内外のプロジェクトや大手企業の実証事例は確実に成果を上げており、優れた技術がさらなる進化を遂げています。高度選別技術を軸とする社会実装が拡大することで、廃プラスチックを有効活用できる環境が広がり、循環型社会への大きな一歩となります。

お知らせ

廃プラスチック選別技術の高度化が進む中で、マテリアルリサイクルの品質と効率を左右するのは、現場における分別精度です。異種樹脂や不純物の混入を抑え、再生原料の純度を高めるためには、判別技術とデータ活用による安定した分別運用が不可欠です。

では、こうした分別精度の課題に対し、現場でどのように対応すればよいのでしょうか。
さまざまな種類のプラスチックを迅速かつ正確に識別できれば、再生原料の品質安定とマテリアルリサイクルの実効性向上につながります。

そのお役に立てるデバイスとして「樹脂判別ハンディセンサー」を開発しました。
リコーの樹脂判別ハンディセンサーは、13種類の主要なプラスチックを簡単に識別でき、さらに最大100種類までのスペクトルデータ登録によるカスタマイズにも対応し、用途や現場条件に応じた識別拡張が可能です。

日々多様な素材を扱う現場だからこそ、正確な分別によって再利用率を高め、資源循環の高度化につなげていきましょう。

製品カタログダウンロードはこちらから

樹脂判別の仕組みと製品仕様はカタログでご覧いただけます。

環境問題への取り組み、何から始めるか迷った方へ。樹脂判別ハンディセンサー製品カタログダウンロード カタログをダウンロードする

参照

著者名

福田 竜一
RICOH Digital Services BU 環境・エネルギー事業センター 事業推進室 商品サポートグループ
旧:リコー電子デバイス事業部(現:日清紡マイクロデバイス)にて半導体の生産技術に従事。半導体のMEMS技術を元に新規事業として樹脂判別ハンディセンサーの立上げから関わり現在に至る

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