プラスチックは日常生活や産業、医療現場など幅広い分野で利用されている便利な素材ですが、使用後のプラスチック廃棄物は焼却や埋め立てによる環境負荷が大きな課題となっています。こうした背景から、プラスチックリサイクルの重要性が高まっており、特に注目されているのがケミカルリサイクル技術です。従来の「マテリアルリサイクル」では、廃プラスチックを砕いて溶かし再利用しますが、汚れや異素材の混入によって再生品の品質や用途が制限されることが多く、プラスチック再生の効率化が課題となっています。
一方、ケミカルリサイクルは化学反応や熱分解などを用いてプラスチックを分解し、元の原料や新たな化学品に変換する方法です。これにより、混合プラスチックや複雑な形状の素材でも再資源化が可能となり、プラスチック資源化の幅が広がります。特に工場や製造現場で多量のプラスチック廃棄物が発生する場合、素材の判別作業の効率化が求められています。最近では、測定機器の導入によって廃プラスチックの種類や含有物をリアルタイムに判別し、そのままケミカルリサイクル原料として活用する取り組みも進んでいます。これにより、企業は効率的な廃棄物管理を実現し、環境負荷削減とコスト効率の両立が期待されています。
近年、ケミカルリサイクル技術は世界中で急速に発展しています。特に注目されるのが、マイクロ波を用いた大型ケミカルリサイクル実証設備です。日本では、マイクロ波化学株式会社がNEDOの支援を受けて、1日あたり1トンの廃プラスチックを処理できる実験設備を完成させ、従来の熱分解に比べて約50%の省エネ効果が期待されています(参考*1)。このマイクロ波技術は、プラスチックそのものを直接加熱できるため、余計な熱損失を抑え、CO2排出量の削減にも寄与します。
また、産業技術総合研究所(産総研)が開発中のPET(ペットボトル素材)を常温で分解できる技術も大きな話題となっています。複合繊維や染色繊維にも適用可能で、化学的リサイクルのエネルギーコストを大幅に削減できるとされています(参考*2)。
さらに、カリフォルニア大学バークレー校のグループは、ポリプロピレンやポリエチレンなど日常的に使用されるプラスチックを安価な固体触媒で元のモノマーに戻す新しいプロセスを開発しました。これは世界のプラスチック廃棄物の約2/3を占める素材に対応し、商業規模での運用が期待されています(参考*3)。このように、ケミカルリサイクル技術は国境を超えて進化し続けています。
複合素材のプラスチックは、異なる樹脂や布、金属などが組み合わさっているため、従来のマテリアルリサイクルでは再利用が難しいとされてきました。表面の染色やコーティング、繊維との混合などが進んでいるため、純粋な樹脂に戻すのが困難です。しかし、ケミカルリサイクルなら化学反応で高分子構造を分解し、石油由来の原料や化学品を取り出すことができます。
例えば、アーゴンヌ国立研究所では使い捨てプラスチックを潤滑油などの高付加価値製品に転換する新しい触媒とプロセスの開発が進められています(参考*4)。こうした技術の社会実装が進めば、これまで再生が難しいとされていた複雑なプラスチック廃棄物の資源循環が大きく前進するでしょう。
企業にとっては複合素材のプラスチックが多いほど分別の工数が増え、廃棄コストも膨らみがちです。製造ラインで排出される端材や廃タイヤなども多様な素材が組み合わされており、高度な分解技術が求められます。ケミカルリサイクルは分解工程で不純物を除去できるため、分別作業の手間を大幅に省き、資源の再利用率も高められるメリットがあります。
混合プラスチックとは、異なる種類のプラスチックがまとめて処分されたり、加工段階で混ざり合ったりしている状態を指します。従来、これらを機械的にリサイクルするのは困難でしたが、近年はケミカルリサイクル技術の進展により新たなアプローチが生まれています。NEDOは混合プラスチックから基礎化学品を製造する新技術の開発や、廃タイヤから再生カーボンブラックを作る研究テーマを支援しています(参考*5)。カーボンブラックはゴム製品やインクなど幅広い分野で使われる重要な素材です。
また、複数種類のプラスチックを含むごみを一括回収し、ケミカルリサイクルを活用して再商品化する動きも広がっています。愛知県岡崎市では、一括回収したプラスチック容器包装とその他のプラスチック廃棄物を再商品化事業者と連携して資源化する再商品化計画が認定され、分別がさらに容易になると期待されています(参考*6)。市民に分かりやすい分別基準の提供で、リサイクル意欲を高める試みでもあり、大量に排出されるプラスチックの循環促進に役立つでしょう。
さらに、NEDOはケミカルリサイクルに関する国内外の技術開発動向を調査し、省エネルギー効果の高い技術の見極めを進めています(参考*7)。今後は混合プラスチックや廃タイヤの処理に対する具体的な成功事例が増え、企業や自治体での導入ハードルが下がることが予想されます。
ケミカルリサイクルによるプラスチック再生は、環境負荷を削減しつつ資源を有効活用できる点が大きな魅力です。ただし、ケミカルリサイクル工程では高温処理やエネルギー消費が発生するため、CO2排出量が増える可能性もあります。そのため、省エネルギー性を重視したケミカルリサイクル技術の開発が進められています。
ドイツのダウ社とイギリスのMura Technologyは、年間12万トンの廃プラスチックを熱分解し、新たなプラスチック原料を生産する欧州最大規模のプラントを建設中です(参考*8)。熱分解の効率化や触媒による不純物除去など、さまざまな技術的工夫が行われています。設備投資や運用コストは高額になりがちですが、廃プラスチックの大量処理が可能となり、コスト削減と環境対策の両立が期待されています。
また、企業がケミカルリサイクル技術を積極的に導入することで、社内外での評価が高まりやすくなります。自社工場で発生するプラスチック廃棄物を自前で処理し、再生原料として再利用すれば、廃棄物処理費用の削減や原料コストの圧縮につながる場合もあります。さらに、環境に配慮した取り組みは取引先や消費者からの信頼を獲得し、企業イメージの向上にも寄与します。
ケミカルリサイクルには大きな可能性がある一方で、いくつかの課題も存在します。例えば、アメリカのメリーランド州議会ではリサイクルの定義を変更し、化学的変換プロセスをリサイクルから除外する動きがある地域では、ケミカルリサイクル施設の建設が規制対象となる場合があります(参考*9)。化学的リサイクルを「燃料化」に近いものとみなし、真のリサイクルとは呼びにくいとする議論も一部で残っています。また、ウェストバージニア州などでは新しい施設建設をめぐり、地域住民との意見対立も報告されています。エネルギー消費や設備投資の高さ、将来の廃プラスチック量と経済性のバランスなども課題です(参考*10)。
それでも、混合や汚染されたプラスチックを含め、大量のプラスチック廃棄物を有効資源に変えるケミカルリサイクルには、業界や自治体から大きな期待が寄せられています。特に製造業や物流業界では、マテリアルリサイクルだけでは処理が難しい廃棄物が多く発生します。こうした複雑な素材を一気に分解して還元できるのは、ケミカルリサイクルならではの長所です。今後は、混合プラスチックを対象とした技術開発や、省エネルギー推進がさらに進むでしょう。
ケミカルリサイクルの将来性を最大化するためには、計測・分析技術による素材判別の高速化、省エネルギー・低コスト化を目指した熱分解プロセスの改良、地域社会との対話など、総合的な取り組みが欠かせません。もし社内で廃プラスチックの分別やリサイクル方針を検討する立場にあれば、最新技術の導入や実証結果の共有を通じて、環境負荷の低減と業務効率化を同時に実現できる可能性が高まります。今後はケミカルリサイクル技術がさらに高度化していく見通しであり、他社に先んじて取り組むことで、社内外から「環境に配慮した先進企業」として高い評価を得るチャンスとなるでしょう。
ただケミカルリサイクルも万能ではなく、現状では前述の様なエネルギー消費の問題や、一部の異素材の混入が課題となる場合があります。特にPVC(ポリ塩化ビニル)は塩化水素の発生原因となり配管などの設備の維持コストに影響する可能性があるため、事前に正確な判別と分別を行うことが不可欠です(参考*11)。
環境保全や自然再興への取り組みを求められる今、私たちは正しいリサイクルの知識を持ち、マテリアルリサイクルを進められるように努力することが必要です。
では、どうすれば、マテリアルリサイクルを加速させることができるのでしょうか。さまざまな種類があるプラスチックを正確に分別できれば、マテリアルリサイクルが加速します。
そのお役に立てるデバイスとして「樹脂判別ハンディセンサー」を開発しました。リコーの樹脂判別ハンディセンサーを使用すると、13種類の主なプラスチックを簡単に識別することができ、さらに最大100種類までのデータを登録してカスタマイズすることが可能です。
日々様々なシーンで利用しているからこそ、しっかり判別して再利用率を高め、環境にやさしい使い方をしていきましょう。
樹脂判別の仕組みと製品仕様はカタログでご覧いただけます。

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