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樹脂判別ハンディセンサー(RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150) ナレッジ レアメタル精製技術の全貌|湿式・乾式の違いと高純度化の最前線

地球の危機
レアメタル精製技術の全貌|湿式・乾式の違いと高純度化の最前線

2026年7月10日

はじめに

レアメタルの安定供給には、回収に加えて不純物を除いて製品に使える品質まで高める精製技術の確立が欠かせません。レアメタルは電子機器や電池、永久磁石など現代の産業基盤を支える素材ですが、その多くを海外からの輸入に頼っています。精製技術が未熟なまま回収だけを進めても、工業利用に求められる純度に届かず、結局は海外の精製拠点に依存する構造が続きます。
本記事では湿式・乾式という2つの主要な精製技術の原理と使い分けを整理したうえで、高純度化を実現する革新技術や政策動向まで順を追って解説します。

レアメタルと精製技術の基礎

前述の内容を表した図

レアメタルの定義と主な用途

レアメタルとは、地球上の存在量が少ない、または技術的・経済的に取り出しにくい金属の総称です。コバルトやニッケル、ネオジムやジスプロシウムといった希土類元素がその代表例で、リチウムイオン電池の正極材料や高性能磁石の原料として幅広く使われています。コバルトは精鉱から中間製品へ加工されたのち化学化合物や金属へと精製され、含有量ベースで世界市場の大部分がリチウムイオン電池の正極材料として消費されています(参照*1)。
日本国内では、携帯電話やパソコン、デジタルカメラなどの使用済み小型家電に鉄、アルミ、金、銀、銅、レアメタルといった有用金属が含まれています。中部地方環境事務所によると、日本で1年間に使用済みとなる小型家電は約65.1万トンと推定され、うち有用な金属は28万トン、金額に換算すると844億円にもなりますが、その半数が廃棄されています(参照*2)。こうした未活用資源を産業に戻すためには、回収した金属を高い純度まで引き上げる精製技術が不可欠です。

「回収」と「精製」の違い

レアメタルを利用可能な状態にするには、「回収」と「精製」という2つの工程を経る必要があります。回収とは、鉱石や廃製品から目的の金属を含む素材を取り出す段階です。一方の精製は、回収した素材に残る不純物を取り除き、製品として使える純度まで高める段階を指します。
希土類元素の生産工程を例にとると、回収と精製の違いがよく分かります。鉱石に含まれる希土類元素の割合は一般に重量比で10%未満にすぎず、まず物理的な選鉱によって濃縮・回収されます。その後、化学的処理により溶出され、さらに溶媒抽出などの分離工程を何段階も重ねることで、不純物が除去され、純度の高い酸化物や希土類塩へと精製されていきます(参照*3)。つまり、回収だけでは工業利用に十分な品質は得られず、精製技術によって初めて製品としての価値が生まれます。

湿式精製の原理と手法

前述の内容を表した図

溶媒抽出法の仕組みと特徴

湿式精製とは、酸やアルカリ、水などの水溶液中で化学反応を進め、目的の金属を分離・純化する方法です。なかでも溶媒抽出法は、希土類元素の分離において産業的に広く採用されている中核的な手法です。溶媒抽出法は、水に溶けた金属イオンを水と混ざり合わない有機溶媒へ選択的に移し替えることで、特定の元素だけを取り出す仕組みになっています(参照*4)。
溶媒抽出法は、「抽出」と「逆抽出」を繰り返して分離します。具体的な工程としては、まず希土類元素を含む水溶液と有機試薬を含む有機溶媒を混合します。希土類元素は有機試薬と反応して有機溶媒側に溶けやすい化合物を形成し、水溶液から有機溶媒へと移動します。その後、別の水溶液と有機溶媒を再び混合すると、希土類元素は有機溶媒から水溶液側へ戻る「逆抽出」が起きます(参照*4)。この「抽出」と「逆抽出」を繰り返すことで、純度の高い希土類溶液を得ることができます。
湿式精製は乾式に比べて低い温度で反応が進む利点がある一方、多くの酸・アルカリや水を必要とする点も押さえておく必要があります。

イオン交換・膜分離の活用

湿式精製では溶媒抽出法のほかに、イオン交換や膜分離といった手法も併用されています。イオン交換は、樹脂の表面で目的の金属イオンと別のイオンを入れ替えることで、特定の元素を選択的に捕まえる技術です。湿式精製全体の流れとしては、浸出・抽出精製・回収という3つの段階を経て、混合酸化物や希土類塩、あるいは高純度の酸化物や塩といった最終製品が得られます(参照*3)。
膜分離の分野では、リチウムイオン電池のリサイクルに向けた技術開発が進んでいます。たとえば、pH1近傍の強酸条件下で耐久性をもち、リチウムイオンなどの1価イオンとコバルト・ニッケル・マンガンなどの多価イオンを高い選択性で分けられるナノ濾過膜のスケールアップと性能向上といった技術の創出が目標とされています(参照*5)。こうした膜分離は、従来の溶媒抽出法だけでは対応しにくい微細なイオン選別の場面で力を発揮します。

乾式精製の原理と手法

前述の内容を表した図

酸化製錬・還元製錬の基本

乾式精製は、鉱石や精鉱を高温に加熱し、酸化反応や還元反応を利用して目的の金属を取り出す方法です。湿式精製よりも水や化学薬品の使用量が少ない反面、高い温度を維持するために大きなエネルギーを必要とします(参照*3)。
金属の種類によって乾式精製の中身は変わります。硫化鉱を原料とする遷移金属の場合、まず選鉱で鉱石を濃縮し、次に酸化製錬で不純物の硫黄を除き、最後に電解で高純度の金属を得ます。融点が高い金属は、還元焙焼から還元製錬へ進みます(参照*6)。乾式精製は大規模な設備で一括処理しやすいため、処理量を確保したい場合に選択されることが多い手法です。

溶融塩電解と蒸留精製

通常の化学還元では取り出しにくい金属には、溶融塩電解という手法が用いられます。溶融塩電解とは、塩を高温で溶かした液体の中に電流を流すことで、目的の金属を陰極に析出させる方法です。希土類元素のように化学的に活性が高い金属は、水溶液中での電解が困難なため、溶融塩電解が事実上の標準的な精製経路となっています(参照*6)。
NEDOの研究開発資料では、磁石材料として利用可能なテルビウム金属を得るには通常1400度以上の溶融塩電解が必要とされるところ、400~1000度の温度域で電解と1000度以下での真空蒸留を組み合わせる低温プロセスの検証が進められています(参照*7)。低融点で蒸気圧が高い金属には蒸留精製も有効であり、溶融塩電解と蒸留を段階的に使い分けることで、目的の金属を効率よく高純度化できます。

湿式と乾式の比較・選び方

前述の内容を表した図

コスト・純度・処理量の判断基準

湿式と乾式のどちらを選ぶかは、求められる純度、処理量、エネルギーコストの3つを軸に判断するのが基本です。乾式精製は鉱石や精鉱を高温に加熱して反応させるため、大きなエネルギーを必要とし、その調達コストや環境負荷にも配慮が求められます。一方の湿式精製は比較的低温で反応が進むものの、酸やアルカリ、水を大量に使用するため、廃液処理にかかるコストや環境負荷を考慮する必要があります。 (参照*6)。
湿式・乾式のいずれも希土類元素の回収率は高く、工程自体は確立された技術に基づいています。しかし、両手法ともエネルギーや水、化学薬品の使用を伴い、それぞれにコストや環境面での負荷が生じるほか、副産物としての廃棄物も発生します(参照*3)。したがって、対象とする金属の種類や原料の状態に応じて、エネルギー消費と薬剤使用のバランスを見極めながら、最適な手法を選択することが求められます。

組み合わせプロセスの実例

実際の現場では、湿式と乾式を単独で使うのではなく組み合わせるケースが増えています。リチウムイオン電池のリサイクルでは、まず電池を解体・熱処理する乾式工程で活物質を取り出し、その後の湿式工程でコバルトやニッケルを分離・精製するという流れが報告されています。環境省の資料によると、活物質からのコバルトとニッケルの回収を湿式法で実施し、得られた精製液を晶析することで、硫酸コバルトおよび硫酸ニッケル水和物の結晶純度99.99%以上を回収できる技術的見通しを得ました。(参照*8)。
このように乾式で原料を前処理し、湿式で高純度化するハイブリッド型のプロセスは、それぞれの手法の長所を組み合わせる設計です。対象金属や原料の組成に応じて最適な工程順序を選ぶことが、純度とコストの両立において鍵となります。

高純度化を実現する革新技術

前述の内容を表した図

エマルションフロー法の成果

従来の溶媒抽出で広く用いられてきたミキサーセトラー法に対し、エマルションフロー法と呼ばれる新しい装置方式が大幅な性能向上を示しています。エマルションフロー法は、水溶液と有機溶媒を微細な液滴として連続的に接触させる仕組みで、装置の小型化と高速処理を両立させた点が特徴です。
エマルションフロー法は、従来法より装置費用や溶媒量の削減、処理能力向上が報告されています。従来のミキサーセトラー法と比較して、回収品の品質は同等を維持しながら装置費用を5分の1から3分の1に抑え、溶媒の使用量を5分の1から10分の1以下に削減し、処理能力は約10倍に高めたと報告されています(参照*9)。
NEDOの資料でも、機械撹拌式エマルションフロー装置は従来型ミキサーセトラー装置と比較して4倍の処理速度を示しています。これは装置規模が約3分の1から4分の1になることを意味し、目標値を大きく上回る成果です。加えて、ジスプロシウムとテルビウムの分離係数は約4を達成しています(参照*7)。装置費用・溶媒量・設置面積のいずれも大幅に削減できるため、国内での事業化に向けた有力な手段と位置づけられます。

イオン対抽出による白金族分離

白金族元素はルテニウム、ロジウム、パラジウムなど化学的性質が似通った金属群であり、選択的な分離が難しいことが長年の課題でした。この課題に対して、イオン対抽出という新しい反応の仕組みを活用した精製技術の研究成果が公表されています。
イオン対抽出は、酸性条件下で陽イオンとなる抽出剤を用い、白金族元素と塩酸から形成される陰イオンとペアを組ませて有機溶媒側へ移す反応です。従来の溶媒抽出では白金族元素の反応が進むまでに長い時間がかかることも課題でしたが、イオン対抽出の反応速度は白金族以外の元素と同等程度であり、実用面でも十分に利用が見込めます(参照*10)。
とりわけ、選択的な抽出・分離が困難だったルテニウムについて従来の10倍の効率を達成した点は大きな成果です。この技術は都市鉱山と呼ばれる使用済み製品からの資源回収にも応用が見込まれており、白金族元素の国内精製基盤を強化する可能性を持っています(参照*10)。

政策・規制と今後の展望

前述の内容を表した図

国内事業化とNEDOプロジェクト

日本国内では、精製技術の研究段階から事業化への移行を目指す取り組みが本格化しています。NEDOは、鉱石や廃EV・廃家電などに含まれるネオジム磁石廃棄物からジスプロシウムやテルビウムなどを純度良く相互分離し、コスト競争力を備えた回収技術を開発して日本国内で事業化することを目標とするプロジェクトを進めています(参照*11)。
同プロジェクトの長期目標として、2040年度には国内需要予測の4割強にあたる重レアアース量400トン/年を、産業廃棄物から300トン/年、未利用資源から100トン/年の規模で生産可能な状態とし、これらの生産品から約800億円分の売上げが見込まれています(参照*7)。内閣府の資料でも、需要が増大する蓄電池や永久磁石に対し、未利用レアアースの分離精製技術開発やリチウムイオン電池リサイクルの社会実装など、サプライチェーン強靱化に資する取り組みの実施が掲げられています(参照*12)。

EU規制と国際サプライチェーン

国際的にも、レアメタルの安定供給に向けた規制整備が加速しています。EUは2024年4月に「重要原材料の安全で持続可能な供給を確保するための枠組み」を定めた規則(EU 2024/1252)を採択しました(参照*13)。この規則は域内での採掘・加工・リサイクル能力の拡充を促す内容となっています。
日本企業の多くは、リサイクル技術の分野で世界有数の先行者とされています(参照*14)。EU規制をはじめとする国際的なルールの変化に対応しつつ、国内で培った精製技術をサプライチェーン全体の中でどう活用していくかが今後の焦点となります。

おわりに

レアメタルの精製技術は、湿式・乾式それぞれの特性を理解し、対象金属や求められる純度に応じて選択・組み合わせることが基本です。エマルションフロー法やイオン対抽出といった革新技術は、処理速度や分離効率を大幅に引き上げ、国内での事業化を現実的なものに近づけています。
押さえるべきポイントは、回収と精製の違いを正しく認識すること、湿式と乾式の判断基準を持つこと、そして政策動向を踏まえて自社や自組織に必要な精製技術の方向性を見定めることの3点です。本記事で取り上げた技術や事例を、具体的な検討の出発点として活用してみてください。

お知らせ

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参照

著者名

長野 修司
リコー 経営企画本部 環境・エネルギー事業センター 事業推進室 事業推進グループ
デザイン部門にて製品デザインに従事。その後、新規事業企画・開発やDX部門にて社外への業務改善コンサル業務を経て、現在、ゼネラリストとして環境事業の推進を行っている。

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