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リコー 教えて電子帳簿保存法
コラム 26

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令和6年からの電子取引に関する猶予措置と廃止される宥恕措置との違いは?

電子帳簿保存法において、令和6年1月1日より電子取引の保存義務要件が次のように変更となりました。

画像:令和6年からの電子取引に関する猶予措置と廃止される宥恕措置との違いは?

電子取引保存制度(令和6年1月1日以後にやり取りする電子取引データについて適用)

(1)検索機能の全てを不要とする措置の対象者が見直されました。税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることができるようにしている場合に検索機能の全てを不要とする措置について、以下のとおり対象者が見直されました。
イ 検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大されました。
ロ 対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。

(2) 令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年12月31日)をもって廃止されます。

(3) 新たな猶予措置が整備されました。次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。
イ 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引及び当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする

宥恕措置では、電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じる必要はありませんでしたが、新たな猶予措置では、プリントアウトした書面の提示・提出の求めに加え、電子取引データについても「ダウンロードの求め」にも応じる必要がありますので、ご注意ください。

この通り、令和5年12月31日までとされた宥恕措置(電子取引の印刷保存に関する罰則免除)は終了ですが、令和6年1月1日から、新たに電子取引保存に関する猶予措置が整備されます。

ところで、猶予措置と混同されそうな措置として、電子取引保存における検索要件の緩和が同時に整備されています。先にその内容を要約して説明します。

税務調査時にダウンロードの求めに応じる(提出する)ことを前提に電子取引を保存する場合、取引日、取引先名、金額での検索ができない保存でも良い事業者が基準売上高が「1,000万円以下」から「5,000万円以下」に拡大されました。ただし、この場合でも真実性確保は必要とされます。

また、税務調査時にダウンロードの求めに応じる(提出する)ことを前提に電子取引を保存する場合、取引日、取引先名、金額での検索ができない保存でも良い事業者として、電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている者とされました。この場合でも真実性確保は必要とされます。

この、電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにする方法とは、電子帳簿保存法取扱通達7-3では次のように記載されています。

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_01-2-1.pdf

★(取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものの意義)

7-3規則第4条第1項に規定する「取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたもの」とは、次に掲げるいずれかの方法により、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。以下「出力書面」という。)が課税期間ごとに日付及び取引先について規則性を持って整理されているものをいう。
(1)課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめた上で、取引先ごとに整理する方法
(2)課税期間ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日その他の日付の順に整理する方法
(3)書類の種類ごとに、(1)又は(2)と同様の方法により整理する方法
なお、上記のように整理された出力書面を基に、保存する電磁的記録の中から必要な電磁的記録を探し出せるようにしておく必要があり、かつ、探し出した電磁的記録をディスプレイの画面に速やかに出力できるようにしておく必要があることに留意する。

この保存方法においては、電子取引情報を常に印刷し、整理整頓して保存すると同時に、全件データを提出できるように法定保存期間電子保存することを合わせて行うという二度手間が必要で、現実的な手段ではありません。採用するかどうかは熟慮したほうが良いでしょう。

本題の猶予措置の説明にもどります。前述したとおり、令和5年12月31日をもって宥恕措置は終了しますので、猶予措置と宥恕措置は異なるものです。この、猶予措置を要約して説明します。

令和6年1月1日以降、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合、電子取引情報の保存に関して条件付きで真実性、可視性を満たさずに電子保存が許される措置です。当然、電子取引情報の法定保存期間の電子保存義務自体は免除されません。
条件付きとは、電子取引データの「ダウンロードの求め」(提出)及びその電子取引記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る)の提示又は提出という両方の求めに応じることができる必要があります。こちらも二度手間の保存となります。

さらに相当の理由とは容易なものではありません。電子帳簿保存法取扱通達7-12に内容が説明されています。

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_01-2-1.pdf

(猶予措置における「相当の理由」の意義)
7-12規則第4条第3項(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する猶予措置等)に規定する「相当の理由」とは、事業者の実情に応じて判断するものであるが、例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等がこれに該当する。

【解説】規則第4条第3項に規定する「相当の理由」は、当該規定が電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意して設けられたものであることを鑑みて、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うことが困難な事情がある場合を対象とするものであり、資金的な事情を含めた事業者の経営判断についても考慮がなされることとなる。ただし、システム等や社内でのワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存できる場合や資金繰りや人手不足等のような理由ではなく、単に経営者の信条のみに基づく理由である場合等、何ら理由なく保存要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用はないことに留意する。

社内の他の業務において、すでにワークフローや文書管理システムなどを利用しているにもかかわらず電子取引保存の電子保存は猶予措置を求めても認められない可能性があります。

また、電子帳簿保存法取扱通達7-13では紙提示のみでは許されないことが重ねて表記されています。

(猶予措置適用時の取扱い)
7-13規則第4条第3項(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する猶予措置等)の規定の適用に当たっては、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存を要件に従って行うことができなかったことについて相当の理由があると認められ、かつ、その出力書面の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合であっても、その出力書面の保存のみをもってその電磁的記録の保存を行っているものとは取り扱われないことに留意する。

【解説】令和4年度の税制改正において、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録の保存を要件に従って行うための準備を整えることが困難な事業者の実情に配意し、税務調査等の際に、出力書面の提示又は提出の要求に応じることができるようにしているときは、その出力書面の保存をもって事実上その電磁的記録の保存をしているものとして取り扱われることとされた。令和5年度の税制改正において、この宥恕措置は令和5年12月31日をもって廃止することとされ、令和6年1月1日以降に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存については、その電磁的記録を要件に従って保存するための対応が間に合わない事業者の実情に配意した猶予措置が新たに講じられた。本通達は、この新たな猶予措置について、出力書面の保存をもって事実上その電磁的記録の保存をしているものと取り扱うとされていた従前の宥恕措置とは異なり、その適用を受ける場合には、電磁的記録自体を保存するとともに、その電磁的記録及び本通達は、この新たな猶予措置について、出力書面の保存をもって事実上その電磁的記録の保存をしているものと取り扱うとされていた従前の宥恕措置とは異なり、その適用を受ける場合には、電磁的記録自体を保存するとともに、その電磁的記録及びその出力書面について提示又は提出の求めに応じることができるようにしている必要があることを念のため明らかにしている。

つまり、電子取引情報の電子的な法定保存は、令和6年1月1日からは避けて通れない義務なのです。

※本文に掲載されている情報は、2023年12月現在のものです。

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