「電子帳簿保存法対応の現場をレポート!」
電子帳簿保存法の現場をレポートするコラム。
今回は、電子帳簿保存法と切っても切れない、経理業務のデジタル化についてです。
電子帳簿保存法対応で、電子取引データ保存やスキャナ保存など、証憑類保存のデジタル化が進む一方で、意外と進んでいないのが、経理業務そのもののデジタル化です。
「デジタル化が進んでない? いや、我が社は表計算ソフトを使っている」という向きもあるでしょう。しかし、残念ながら表計算ソフトに入力しているだけではデジタル化とは言い難いものです。記帳する先が紙の台帳から表計算ソフトに変わっただけで、データを移したり、加工したりする際に、人の手が介在するようでは、正直デジタル化の恩恵を受けているとは言い切れません。
また、いまだに紙の伝票と同じやり方で、伝票フォーマットの表計算ファイルをメールで送って承認フローを回している会社も少なくありません。これも確かにデータ化は出来ていますが、自動化が全く出来ていません。入力、確認、回覧がクリック一つでは終わらず、いちいち人の手の操作が必要です。これも業務のデジタル化とは程遠いものです。
意外と多いのが、会計システムを導入しているにもかかわらず、会計システムの持つ伝票機能を使わず、Excelで台帳を作って出納管理を行っているパターン。Excelならまだいいかもしれません。紙の伝票を起票して、というところもあるようです。こうなると会計システムが電子記帳するだけのものになってしまっています。
では、なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。調べてみると、いくつか理由があるようでした。
つまり、紙の伝票処理の時代のまま、やり方を変えず道具(紙→パソコン)だけ変えたということが背景にあるようです。
もちろん、パソコンが業務に導入された当初はそれでも良かったと思います。しかし、それからすでに20年以上経つ現在でも、当時の(もっと言えば何十年も前の)やり方を続けているのは少し疑問に思います。
経理に携わる方々の立場からすれば、「正確を期する経理業務で、やり方を変えることはリスクだ」という意見もあるのでしょう。変更に伴う混乱を避けたい、という考えもあるのでしょう。
とは言っても、人手不足も顕在化しつつあり、限られた人員で効率的に業務を進めることが求められる今こそ、やり方を刷新するときではないでしょうか。
先日、お話を伺ったある中堅建設業の会社では、購買部門が主導して、購買業務における電子帳簿保存法対応のために、それまでの紙ベースの購買業務フローを、完全にデジタル化したそうです。
導入当初、今でも紙による業務が普通の現場からは「使いにくい」という声があったそうですが、3カ月経つとそんな声もなくなっていったそうです。もちろん、丁寧なサポートを行ったそうですが、毎日のように使っていると意外と慣れるのも早く、思ったほどの反発はなかったといいます。
逆に、今まで月末に集中していた紙の伝票が、随時システム上で発行されて処理できるようになったため、業務の平準化が進み、かつ記入ミスによる差し戻しもなくなったことから、かなり効率化できたといいます。
いま世間で言われるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単に業務にデジタル機器を使う、ということではありません。今までの仕事のやり方を見直し、デジタル技術を活用して、できるだけ人の手を使わずに効率化できるところは効率化する、ということです。
人はどうしてもミスをします。例えば文字の打ち間違い、手書き文字の誤読、計算間違いなどなど。これらをシステム化すれば、ミスなく素早く業務が終わります。確実に業務の効率化と精度の向上が図れるのです。
今のやり方が本当にベストなのか、改めて日々の業務を見直し、デジタルによる自動化、システム化で効率化を図ることに取り組んでみてはいかがでしょうか。
実は電子帳簿保存法はそれを後押しする法律なのです。信頼のできる形で経理業務、会計業務を電子化するための指針を示しているのが電子帳簿保存法なのです。当初はがんじがらめで正直使いにくかった電子帳簿保存法も、年々要件を見直してブラッシュアップし、使いやすくなってきています。皆さんの携わる経理業務も、見直しを進めて、効率化を進めてみてはいかがでしょうか。