ウェルビーイングを経営に取り入れる風潮がある昨今、オフィスにリフレッシュルームを設けるなどの施策を取り入れる企業が増えてきていると感じている方も多いのではないでしょうか。ウェルビーイングを取り入れたオフィスの効果を知りたい方もいるでしょう。
今回は、オフィスにウェルビーイングが求められる背景からオフィスで実現するウェルビーイングの概念や具体的な施策、KPI測定方法から効果、成功事例まで解説します。
オフィスにウェルビーイングが求められている背景を見ていきましょう。
ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にある「幸福」を表す概念です。短期的に得られる幸福だけでなく、生きがいや人生の意義などを実感する持続的な幸福も含んでいます。
さらに、個人個人が幸福な状態にあると共に、周囲の人々や地域、所属する組織、社会なども含めて幸福な状態にあることを含む、包括的な概念としてとらえられることもあります。
近年、ウェルビーイングという概念は国際社会においてクローズアップされたことから、日本にも浸透しています。従来から経済的指標として用いられてきた「GDP(国内総生産)」では、生活や精神的な豊かさ、幸福度を計測するには不十分であるとの指摘があり、ウェルビーイングに注目が集まりました。
そして日本や日本企業に浸透したのは、SDGs(持続可能な開発目標)も関係しています。SDGsは2030年までに地球上のあらゆる問題を解決するために17の目標を定めた枠組みですが、3つ目の目標に「Good Health and Well-Being (すべての人に健康と福祉を)」があり、ウェルビーイングが登場しています。SDGsに基づく取り組みや経営が推進される中、ウェルビーイングという概念も定着しました。
経営や事業にウェルビーイングを取り入れる動きが出てきたことで、オフィスにおいても従業員および組織のウェルビーイングが検討されるようになりました。近年、ウェルビーイングはオフィスに必要な指標の一つとして新たに加わっています。
オフィスにウェルビーイングを取り入れるに当たって、具体的にどのようなオフィスがウェルビーイングを実現できるのかを探っていきましょう。
ウェルビーイングを実現するには、心身共に快適な環境で働ける環境があることが大前提となります。その上で、社会貢献につながる組織的な事業に参画し、業務を進めることで、社会的な幸福を得ることができます。
快適な働く環境は、温度や湿度、照明から始まり、執務スペース全体、個人のワークスペース、PCなどの設備、会議室などすべてにおいて整える必要があります。
チームや部署内、組織全体のコミュニケーションを活性化させる仕組みや工夫は、良好な人間関係や組織風土を構築し、ウェルビーイングの土台となります。
会議室はもちろん、気軽にミーティングできるスペースや井戸端会議ができるちょっとしたスペースなどを用意することが有効です。
心身共に適度にリフレッシュすることで、オンとオフの切り替えをスムーズにします。休憩スペースやオフィス内カフェなどはリフレッシュを促します。
また身体を動かすことで休息につながるアクティブレスト*を促進するトレーニングルームの設置も有効です。
オフィスにおけるウェルビーイングを実現する具体例を紹介します。
リフレッシュスペースは、休憩やランチの場所、カフェ、トレーニングジムなどさまざまな機能を持たせることで、利用する従業員それぞれの休息と健康に寄与します。
必要なときにすぐにミーティングを開始できる環境は社内コミュニケーションを活性化し、互いの意思疎通をスムーズにすることから、人間関係を良好に保ちながら業務効率化を進められます。
会議室だけでなく、気軽なミーティングスペースの導入はウェルビーイングの実現につながるでしょう。
オープンスペースとは、ミーティング、個人の業務、来客対応、リフレッシュ、休憩など多様な用途で利用できるスペースです。このような空間は、気軽な会話を生み出したり、思い思いの業務に集中できたりと、快適な職場環境を作り出します。
最適な温度・湿度管理や照明などをコントロールする設備を導入することで、室内環境を整え、従業員が健康を維持しながら快適に働くことができます。
近年はAI(人工知能)がオフィス空調を自動コントロールすることで、より快適に省エネを両立しながら効率的な管理が可能になる仕組みもあります。
リモートワークと出社を併用するハイブリッドワークを推進している場合、執務エリアは固定席をなくしたフリーアドレスを採用することが増えています。そのようなワークスタイルに適した設備やレイアウトを取り入れることは、働きやすさにつながり、ウェルビーイングに寄与するでしょう。
オフィスに観葉植物などを導入する「バイオフィリックデザイン」は、ウェルビーイングにつながります。これは人間が本能的に持つ「自然とつながりたい」という欲求に基づき、植物、自然光、水、木材などの自然要素を空間に取り入れる設計手法です。その結果、ストレス軽減や集中力向上、アイデア創出の促進など、心身の健康や快適性アップに寄与します。
オフィスにウェルビーイングを実現する要素を取り入れる効果をご紹介します。
ウェルビーイングの要素を取り入れることで、快適に働けるようになり、従業員のモチベーションアップにつながります。業務効率も向上し、生産性向上に寄与するでしょう。
先述のようなミーティングスペースやリフレッシュスペースを積極的に取り入れることで、社内コミュニケーションが活性化し、横のつながりが増え、情報共有や意思疎通が円滑になるでしょう。
仕事の内容や目的に合わせて、社内外を問わずふさわしい場所を選んで仕事を進められる働き方「ABW(Activity Based Working)」やハイブリッドワークなど、新しい働き方を導入し、定着させる必要がある場合に、ウェルビーイングの観点を盛り込むと、より快適さが向上し、浸透しやすくなるでしょう。
働きやすく、風通しの良い、職場環境は、自ずと人材定着率を高め、外部からも良い噂を聞きつけて人が多くやってくるでしょう。人材の流動化が進む中、組織に貢献する人材が残る可能性が上がります。
従業員エンゲージメントとは、「従業員と組織との間で生まれる信頼関係や絆」を意味します。快適で働きやすいオフィス環境が整えば、従業員にとって、組織が従業員のウェルビーイングに投資してくれていると感じ、より愛着が生まれるでしょう。
オフィスにウェルビーイングを取り入れた事例を社名を伏せて紹介します。
デスクとデスクの間に仕切りをなくし、見通しの良い執務室にし、コミュニケーションを活性化させています。またオフィス全体の一体感を生み出しています。
広い執務エリアにダイナー(米国の簡易食堂・レストラン)風のオープンブースやハイカウンターを用意し、軽くコーヒーを飲みながら話せる空間を作っています。使い方を選ばないさまざまなシチュエーションに対応しており、のびのびと業務が可能です。
福利厚生として、トレーニング器具を備えたジムやヨガスタジオ、シャワー室を設置し、従業員の健康を配慮しています。
従業員の野菜不足や健康を気遣い、社員食堂のメニューにグリーンサラダを増量させました。
オフィスにウェルビーイングな要素を取り入れた後は、効果検証を進めましょう。ここではKPIと測定方法をご紹介します。
定量、定性の両方の測定を行いましょう。それぞれKPI* 指標の例をご紹介します。
【定量指標の例】
【測定方法】
【定性指標の例】
【測定方法】
効果測定のポイントは、ウェルビーイングという曖昧なゴールを定量指標で多角的に分析することにあります。ウェルビーイングを考えたオフィスへの具体的な取り組みが、ウェルビーイングの増進に寄与するまでには一定期間かかります。
そのため、定期的に測定を進めることで、改善策を講じることができるため、より早く効果を得られるでしょう。
オフィスにウェルビーイングの要素を取り入れる際のポイントをご紹介します。
ウェルビーイングは、当然ながら従業員自身に実感してもらう必要があるため、実践する際には従業員のニーズを聞いて、積極的に施策に取り入れるのがポイントです。アンケートや直接のインタビューを通じて従業員が快適で過ごしやすいオフィス空間を作りましょう。
自然光を取り入れる、植物を置く、温湿度を快適なものにするなど、手薄になりがちな環境の整備を重視しましょう。「暑い・寒い」「明るい・暗い」などは無意識のうちに人に影響を及ぼします。不快や不便がないよう、徹底した管理を行いましょう。
ハイブリッドワークやABWなどの新しい働き方を、フリーアドレスなどのオフィスレイアウトと連動させることで、より働きやすさを促進できます。新しい働き方が十分に社内へ浸透すれば、ワークライフバランスを実現するために、従業員満足度が上がります。
先述のように、ウェルビーイングをオフィスに取り入れる際にはKPIを定期的に測定し、効果検証の上で必要に応じた改善策を実践しましょう。そしてより良い職場環境に高めていくことが肝心です。そのために、効果検証と改善のサイクルを回す仕組み作りを行うことがポイントです。
ウェルビーイングの実践と効果について、専門家による第三者の視点からのアドバイスやフォロー、専門的知見やアイデアをもらうことは、とても有効です。その際、ウェルビーイングを具体的なオフィス作りに活かすための知見とサービスを持つ専門会社を頼ることで、ウェルビーイングの具現化が進みやすくなります。
オフィスでのウェルビーイングの実践に加えて、制度面のウェルビーイング施策もあわせて実施したいものです。ここでは主な施策をご紹介します。
日頃の運動不足をケアするウォーキングイベントの開催、健康状況を測定できるアプリの導入、禁煙プログラムの実施など健康をサポートするプログラムを導入することで、身体の健康を促します。
福利厚生はウェルビーイングに直結する代表的な施策です。定期健康診断の実施、外部の検診費用の補助などに加えて、休日に利用できるトレーニングジムやエステ、レジャー施設利用の割引、健康的なランチや食事補助などを取り入れましょう。これらは心身の健康を促すのはもちろん、余暇を楽しめる要素を含むこともあり、満足度向上にもつながります。
在宅勤務制度を取り入れ、子育てや介護など個々人のライフスタイルに合わせた働き方を推奨することで、生産性向上と同時にウェルビーイングの実現にもつながります。
フレックスタイム制を取り入れて、従来よりも自由な働き方をサポートする例もあります。
メンタルヘルスに関する取り組みもウェルビーイングの実現につながります。心の不調を感じたときやストレス・不安がある場合に利用できるカウンセリングサービスの導入や、社内の窓口設置などにより、メンタルヘルス不調の早期発見・ケアにつながります。
社内コミュニケーションを活性化することは、ちょっとしたストレスや不安に関する相談をしやすい環境を整えることにもつながります。
社内SNSを通じて声を上げられる仕組みを作っておくことも一案です。
オフィスにウェルビーイングを取り入れる流れは今後もさらに浸透していくものと考えられます。
オフィスにウェルビーイングを取り入れる考え方や具体的な施策を実行しながら、自社の目的に最適化されたウェルビーイングなオフィスの実現を検討してください。
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