オフィス新設や移転、リニューアルなどの際にはオフィスレイアウトを再検討するチャンスです。その際、考慮する必要のある「寸法」は、ただの設計的な必要性だけでなく、働く人の動線や快適さに関わることから、業務効率や生産性といったパフォーマンスに関わる重要事項です。ぜひ細部の寸法にこだわって法令を守りながら理想のオフィスを設計しましょう。
今回は、オフィスレイアウトで寸法を検討する必要性から、寸法を考慮するメリット、オフィスレイアウトの汎用的な寸法の目安、執務室や会議室の寸法の目安、寸法と法令との関係、これからのオフィスレイアウト設計のポイントを解説します。
オフィスレイアウトで寸法を検討する必要性をご紹介します。
オフィスレイアウトの寸法と聞くと、家具や機材の設置スペースの寸法を測るイメージがあるかもしれません。しかし設置寸法だけでなく、オフィスは動作空間の寸法も加味する必要があります。
動作空間とは、オフィスで人が何らかの動作を行う際に必要になる空間を指します。例えば、人が通路を歩くときには、一定の通路幅が必要です。作業域にゆとりを加えることで、動作がしやすくなります。オフィスでは、デスクに着席したときの動作空間が狭いと業務がしにくくなってしまいます。そのため、適切な動作空間の寸法の検討が必要なのです。
オフィスレイアウトで寸法を検討することは、従業員が日々の業務やコミュニケーションを快適に行うのに欠かせないことです。
もし会議室の寸法が足りなかった場合のことを想像してみてください。きっと話し合いがしにくくなり、議論も弾まないことが想定されるでしょう。
続いて、オフィスレイアウトの寸法を考慮するメリットをご紹介します。
動作空間が充分に確保できれば、オフィス全体の使い勝手がよくなり、従業員のストレスが軽減します。使い勝手の悪さが積み重なれば、大きなストレスにつながってしまいます。その結果、モチベーションが下がり、生産性が大きく下がる恐れもあります。適切に寸法が検討されているオフィスは、ストレスフリーの環境となるでしょう。
オフィスレイアウトの適切な寸法は、業務を効率化するため、生産性向上に寄与します。デスク周りの寸法が適切であれば作業がしやすく、通路幅の寸法が適切であれば快適に移動ができ、作業効率が上がることは想像に容易いでしょう。
人と人とが快適にコミュニケーションをとるには、一定の距離が必要です。離れ過ぎていても声が届かず、距離を感じるので、話し合いにつながっていきません。近過ぎても不快に感じるものです。適切な寸法は、コミュニケーションを円滑にすることにも役立っているのです。
ストレスが軽減され、快適な環境で業務効率と生産性高く働くことができ、コミュニケーションもスムーズであれば、働きやすいオフィスとしてインプットされるでしょう。その結果、従業員満足度の向上にもつながると考えられます。
オフィスレイアウトの汎用的な寸法の目安をご紹介します。
通路幅の目安は、一人で通る場合は600mm以上で、二人がすれ違う通路の場合は1200mm以上の幅です。二人が横に並んで適度な距離を保ちながら歩行する場合は、1600mm以上必要です。これは成人の肩幅の標準として45cm~50cmを元に、ゆとりを持たせた数値となっています。
デスク周りの寸法は、デスクの手前から椅子までの距離の寸法を考慮します。着席している状態では500mm程度必要です。
また立ち上がるとき、座るときには椅子を後ろに引くことになりますが、椅子を引くための距離は、600mm~900mm程度必要です。肘があるかどうかなど、椅子の機能や形状によっても変わります。
オフィスに設置する複合機や収納周りの寸法も考慮する必要があります。人が前に立ってそれぞれを使用する場合、かがむことがあるため、その動作空間を考慮します。
通常は奥行1000mmは必要です。もし複合機や収納の背後に座席がある場合、着席寸法の500mmと1000mmを合わせて、1500mm以上は寸法を設ける必要があります。
それなら1500mmあれば良いのかと思われがちですが、背後を人が通過したり、順番待ちの人が来ることを考えれば、できる限り、1500mm以上の寸法を確保しておくと良いでしょう。
次に、さらに詳細の寸法を見ていきましょう。まずは執務室の寸法の目安を紹介します。
執務室では、座席と座席、収納、壁面との距離は適切に取り、業務の動作空間をしっかりと確保する必要があります。
執務室のデスクレイアウトパターンは複数あります。参考までに主なレイアウトパターンをご紹介します。
「島型」といわれる標準的なレイアウトです。デスクとデスクを向かい合わせにして対面するように配置します。互いの顔が見えるので、コミュニケーションを取りやすいことから、チームで仕事をする際に適しています。
対向式と反対に、互いに背中を向ける形でデスクを配置する方式です。個人の集中作業がしやすいのと同時に、振り返ればすぐにコミュニケーションを取りやすいのが特徴です。
テーブルの向きを互い違いにクロスするように配置することで、あえてデスクの間の通路をジグザグにする方式です。動線が固定化されず、別のテーブルの人とコミュニケーションを取りやすくなります。
デスクに一つ一つ仕切りを立て、ブース状にする方式です。個人の集中作業が重要な業務に向いています。コミュニケーションが取りにくいため、ミーティングの際は別途スペースが必要です。
固定席を設けず、空いている席を選んで座る方式です。
いずれのパターンも、先述の座席周りや通路の寸法を適切に確保することが求められます。
続いて、会議室の寸法の目安をご紹介します。
会議室の典型的なレイアウトである対面して座る形式の寸法は、規模によって異なります。
4~6名規模の場合、通路からテーブルまでの寸法は900mm以上で、座席と壁面までの寸法は、900mm以上が目安です。
8~10名規模の場合、通路からテーブルまでの寸法は900mm以上で、座席と壁面までの寸法は、1200mm以上が目安です。なぜ規模が増えると座席と壁面までの寸法が伸びるかというと、背後に誰かが通る可能性があるためです。
テーブルが「コ」の字に配置されている会議室では、モニターやホワイトボードが前方にあります。この場合、座席と壁面までの距離はいずれも1200mm以上にして、背後に人が通れるようにします。
モニターやホワイトボードとテーブルまでの距離は900~1200mm程度が目安です。
4~6名規模の、小さな会議室に、ビデオ会議に使うモニターが配置されていることがよくあります。このタイプの会議室の場合、通路からテーブルまでの寸法は900mm以上で、座席と壁面までの寸法は900mm以上が目安です。
セミナーや集合研修などに利用する、小学校の教室のようなデスクレイアウトであるスクール式の場合、壁から最前列のデスクまでの寸法は1200mm以上取り、登壇者のスペースを確保します。
デスク間は900mm程度は確保し、壁とテーブルや座席との間は1000~1200mm程度が目安です。いずれも人が一人、後ろを通れるように配慮します。
オフィスレイアウト寸法と各種法令との関係を解説します。
前提として、オフィスレイアウトを設計するときには、建築基準法、消防法、労働安全衛生規則などの法令を遵守することが必要です。
では寸法についてはどうなっているのでしょうか。
建築において最低限の基準を定めた法律で、寸法に関しても一部規定があります。オフィスレイアウトに関係するのは、廊下の幅です。
廊下の両側に部屋がある場合、廊下幅は1600mm以上必要で、片側だけに部屋がある場合は1200mm以上必要です。
オフィス内の通路幅についての規定はありません。
火事発生に備えるための規定が設けられている消防法では、オフィス内の通路幅に関する規定はありません。しかし避難経路を確保することは規定されているので遵守しましょう。
厚生労働省が「労働安全衛生法」に基づき制定した、労働安全と衛生を守るための労働安全衛生規則では、オフィスの通路幅についての規定はありません。
関連することとして、通路には正常の通行を妨げない程度に、採光または照明が必要と定められています。また屋内に設ける通路については、通路面から高さ1.8m以内に障害物を置かないことが定められています。
新しい働き方が進む昨今、これからのオフィスレイアウト設計のポイントを解説します。
自社にとって最適化された、ワークスタイルを加味した働きやすいオフィスレイアウト設計を進めるのが基本となるでしょう。
リコージャパンのワークプレイス環境の構築を支援するサービス「RICOH Smart Huddle」では、好きな場所で好きに働けるよう工夫した執務スペースをご提案しています。
例えば、執務エリアに固定席をなくすフリーアドレスを採用する場合、リモート先からオフィスの状況を把握し、簡単に座席を予約できるスマートインフラを用意します。これにより、座席や働きやすい場所を柔軟に選べるオフィスを実現します。
従業員が手持ちのスマートフォンから座席予約が可能な仕組みなので、いつでもどこからでも予約できます。またメンバーの在席場所のマッピングにより、話しかけやすく、業務効率が向上します。
オフィス回帰が進む中、オフィスの価値を再定義する必要性が出てきています。一時期、リモートワークが定着しましたが、近年は完全に出社スタイルに戻った企業もあれば、出社とリモートを組み合わせるハイブリッドワークを採用した企業もあります。
いずれにしても、以前はオフィスに出社する意義を考える機会が少なかったところ、リモートワークを経験し、コミュニケーション減少や組織の一体感の希薄化などさまざまな課題が見えてきた中で、改めてオフィスの存在意義が問われています。
その答えは、企業によって異なるため、新しいワークスタイルと事業戦略を踏まえたうえで、オフィスコンセプトを策定する必要があるでしょう。
柔軟にさまざまな用途で利用できるフレキシブルスペースやWeb会議システムなどのICT機器の導入は、新しいオフィスレイアウトのポイントになってくる要素です。
「RICOH Smart Huddle」では、部署横断メンバーや社内外の関係者によるプロジェクトを円滑に進められる、フレキシブルな「プロジェクトルーム」をご提案しています。
プロジェクトごとに自由に使える空間であり、議論の活性化と作業の効率化を促す、プロジェクトを成功に導くスペースです。什器を手軽に動かせるようにすることで、最適なレイアウトが即座に準備できます。
ブレインストーミングには、手書きや付箋、画像共有など、役立つ機能を備えるインタラクティブホワイトボード(電子黒板)の利用がおすすめです。
身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する「ウェルビーイング」の実現を目指し、従業員が心身共に健やかに過ごせる空間もオフィスに作る傾向があります。
「RICOH Smart Huddle」では、従業員の健康や幸せを実現する、ウェルビーイングな働き方を提供するために、自然との調和を意識したデザイン手法である「バイオフィリックデザイン」やアロマ演出でウェルビーイング空間を創り出すデザインをご提案しています。
自宅では導入できない設備によるトレーニングエリアを作ることで、体調管理のみならず、集中力を高める効果があるアクティブな休息が得られます。
鳥のさえずり、川のせせらぎなど自然音や、プロジェクションによる自然環境の投影などの演出は、ひとときの休息に最適です。
オフィスのレイアウト寸法を考慮することは、利用者の利便性向上やストレス軽減、生産性向上、社内コミュニケーションの円滑化、従業員満足度の向上などさまざまなメリットを生み出します。
オフィスレイアウトは企業のビジネスに基づくコンセプトに基づき行われますが、その際に寸法も考慮することで、細部まで気を配ることができるでしょう。
オフィスレイアウト寸法に関するお悩みは、専門家に尋ねて解消することをおすすめします。お困りの際はリコージャパンにおまかせください。
リコージャパンでは多様化する経営環境に合わせ、デジタルサービスとワークプレイスを組み合わせた「RICOH Smart Huddle」のコンセプトのもと、働き方のリニューアルをサポートし、お客様のご支援をいたします。
”新しい働き方”をお客様と一緒に考えながら、オフィス移転やリニューアルを、計画から理想の働き方が実行されるまで、プロジェクトマネジメントの業務も含めワンストップでご支援いたします。
また、部分的なリノベーションやデザイン・設計、什器やICT機器の選定など、ピンポイントでのご対応も可能ですので、お気軽にご相談ください。
弊社の実践事例も紹介できますので、「RICOH Smart Huddle」の詳細は、以下よりご覧ください。
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監修者 わたなべ
2005年リコーグループに入社。
15年間、建築設計事務所で意匠設計および設計監理に従事。
美しさと機能性を両立する空間づくりを目指し、企画から監理まで一貫して携わる。
戦略担当として、人財戦略にも取り組んでいる。
この一冊で、最新の7つのワークスタイルが分かり、お客様の課題を解決に導きます。
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