亜臨界水分解による縮合系高分子材料のモノマー組成比解析により、
材料開発力を強化

縮合系高分子材料の分子構造・組成を分子レベルで解析可能にし、 材料開発力を強化

インクジェットインクや塗料において、接着性や耐水性等の機能を付与するために、各種機能性の高分子材料が用いられています。高分子材料を設計通りに合成ができているか評価するには、高分子材料がどのような分子構造を持ち、各原材料(モノマー※1)がどれくらいの比率で含まれているかを理解・把握することが不可欠です。しかし、様々な機能を発現するために高分子材料は複雑化しており、モノマーの構成や比率(モノマー組成比)を明らかにすることは難しくなっています。また、接着性や耐水性の向上のために溶媒に溶けない架橋した高分子材料が利用されることも多く、そのような材料には従来用いられている分子構造解析手法やモノマー組成比の解析ができないことが知られています。

そこで、インクジェットインクや塗料で用いられているウレタン樹脂に代表される縮合系高分子※2材料を対象に、高温・高圧の状態で材料を選択的に分解できる亜臨界水分解※3を活用し、高分子材料の分子構造やモノマー組成比を解析する技術を開発しました。この手法は溶媒に溶けない架橋した高分子材料にも有効です。これにより、インクジェットインクや塗料用の樹脂開発において、設計通りに合成ができているか評価することが可能となりました。さらに、材料の劣化の原因を分子レベルで突き止める手法として応用し、材料開発の品質向上にも貢献しています。この技術は、インクジェットインクや塗料向けだけでなく、他の用途の縮合系高分子材料にも適用できます。

  • ※1

    モノマー:高分子を構成する最小単位の化合物

  • ※2

    縮合系高分子:モノマーが重合する際に水などの低分子を脱離しながら、もしくは、脱離なく付加反応を繰り返すことで、形成される高分子化合物。ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンなどがある。

  • ※3

    亜臨界水分解:臨界点(374℃、22MPa)以下の高温・高圧状態の水中での分解反応

困り事/実践効果

困り事 実践効果
縮合系高分子材料の分子構造やモノマー組成比を詳しく知りたい。 ポリエステルやポリウレタンなどの縮合系高分子材料を分解し、モノマーを定量的に抽出することができた。モノマー組成比が明らかになることで、材料の機能・分子構造の違いや、分子構造中の劣化部位・異物の特定など可能となった。

設計現場での困り事・課題

架橋した縮合系高分子材料の分子構造やモノマー組成比を詳しく知りたい

架橋した縮合系高分子材料は溶媒に溶けにくいため、これまでは分子構造やモノマー組成比を解析する手段がありませんでした。そのため、狙い通りの品質にするためには試行錯誤が必要でした。また、劣化などの問題が発生した際の原因解明をする手段もありませんでした。

解決したこと

縮合系高分子材料を分解し、原材料を定量的に抽出

縮合系高分子材料の一種でインクジェットインクや塗料に利用される「ウレタン架橋樹脂」に亜臨界水分解技術を適用しました。ウレタン架橋樹脂は溶媒に溶けない為、これまでモノマー組成比を分析することは困難でした。ウレタン架橋樹脂を亜臨界水分解したところ、亜臨界水分解液中のモノマー組成比が、ウレタン架橋樹脂を合成する際に仕込んだモノマーの組成比に近似しました。これにより、亜臨界水分解により架橋した縮合系高分子を選択的に分解し、構成モノマーの組成比を求めることが出来ることを確認できました。
さらに、抽出した原材料を詳細に分析・解析できるようになったため、複数材料の差異の明確化や、劣化部分・異物の特定など、さまざまな分析用途の可能性を広げています。

解析事例:ウレタン架橋樹脂の組成解析

亜臨界水分解液中のモノマー組成比が、樹脂を合成する際の仕込みモノマー組成比に近似

亜臨界水分解により、結合した各モノマーを分解・抽出することが可能

水性塗料用ウレタン架橋樹脂の推定分子構造 

こんな方にお役立ちできます

  • ポリエステルやポリウレタンなどの縮合系高分子材料の研究開発や設計をしており、高分子材料のモノマー組成比を解析したい。
  • 機能が異なる樹脂を、なぜ機能が異なるのか分子レベルで把握・比較し、材料開発のヒントにしたい。
  • 材料が劣化しているが原因が分からないため、どこが劣化しているか分子レベルで明らかにしたい。

関連文献

  • 奥津 英⼀:亜臨界水分解によるウレタン架橋樹脂のモノマー組成⽐解析,第22回 高分⼦分析討論会 講演要旨集(2017)

お問い合わせ

製造業の現場での困り事をお伺いし、課題解決につながるご提案をいたします。
お気軽にお問い合わせください。

PAGE TOP