近年のオフィスにおいては、セキュリティリスクが高まっているといえます。ネットワークが配され、さまざまなシステムにおいて膨大なデータがやり交わされていることから、サイバーセキュリティのリスクが上がっています。
このことから自社の情報資産を強固に守る仕組みが求められています。今回はオフィスのセキュリティ対策の基本とともに、オフィスセキュリティを強化する最新ツールとデバイス、リモートワーク時代のセキュリティ対策、オフィスセキュリティ対策にかかる費用とコスト削減のポイント、対策のポイントも合わせて解説します。
オフィスセキュリティ対策は、顧客情報や企業の機密情報、そして従業員といった大切な資産を守る上で不可欠です。
ネットワークを介した情報漏洩を防ぎ、データを適切に管理することは、企業が負うべき社会的な責任と言えます。万が一、情報漏洩事故が発生した場合、企業の信頼は失墜し、顧客離れや事業の停滞を招く恐れがあります。
さらに、オフィスには現金や小切手、PCといった金銭的価値のある資産も存在するため、物理的な盗難リスクにも備える必要があります。
また、個人情報保護法をはじめとする法令を遵守するためにも、セキュリティ対策は欠かせません。個人情報を取り扱う事業者は法的な責務を負っており、違反した場合には罰則が科せられることもあるため、徹底した対策が求められます。
このように、セキュリティ対策は企業のリスクマネジメントにおいて非常に重要な位置を占めているのです。
オフィスセキュリティ対策について、まず基本的なところを押さえておきましょう。
オフィスセキュリティ対策は、物理的なセキュリティ対策と情報セキュリティ対策の2種類に分類されます。
紙の資料やPCなどの資産、金銭などの貴重品の盗難や、内部の人間による持ち出しなどを防ぎます。
また、外部からの不審者の侵入により、人命の危機にさらされるリスクもゼロではないため、入室させないための物理的な対策が求められます。
ネットワークを通じたサイバー攻撃などの不正アクセスから守るために対策します。
また社内には多くの機密情報のデジタルデータが存在しますが、役職や立場によって閲覧・利用できる範囲は異なるのが一般的です。それらをアクセス権限設定などによって保護することも対策として考えられます。
オフィスにおける2つのセキュリティ対策は、それぞれ主に次の方法で施します。
1.物理的なセキュリティ対策
防犯カメラは万が一、不審な人物が侵入した際に追跡するのに役立ちます。また入退室管理システムは、オフィスと外部を分ける重要なセキュリティとなります。入退室管理システムには認証システムが備わっており、ICカード認証、テンキー認証、スマホ認証、指紋や顔での生体認証など、多様な種類があります。
また金銭や高価な物品、書類などは鍵のかかる収納に入れることで、セキュリティを高められます。シュレッダーは機密文書を裁断し破棄するのに必要不可欠です。
パーティションや間仕切りをうまく活用することで、オフィス内の空間に段階的なセキュリティを施すことが可能です。
オフィス内の段階的なセキュリティはゾーニングで決定します。ゾーニングとは、空間を区分する設計における作業のことで、オフィス設計の際には空間の用途や性質、セキュリティに応じて区分します。
空間セキュリティを強化したい場合、ゾーニングにおいては「レベル1」「レベル2」「レベル3」「レベル4」などと数値が上がるにつれてセキュリティ強度を高める設計を行います。ゾーニングについては、後ほど詳細に解説します。
2.情報セキュリティ対策
ファイアウォールとは社内ネットワークに外部から侵入する不正アクセスなどから守る防火壁です。通信するデータの暗号化やアクセス制御なども合わせてネットワークを保護します。
また社内でも従業員の立場に応じてアクセスできる情報を区分けする必要があることが多いため、社内ネットワーク内を、一般業務用と機密情報を扱うネットワークを分離することも行われています。
リモートワークのように外部から社内ネットワークに接続したい場合に「VPN」が用いられることがあります。通信の暗号化による強固なセキュリティを施すことができます。
また社内ネットワークなどに接続する際には、多要素認証を用いて、IDとパスワード一つだけではログインできない仕組みにすることも有効です。例えば、ID・パスワードと、手持ちの携帯電話を通じたワンタイムパスワードの入力を併用するなどが挙げられます。
社内においても、ファイルサーバーやデバイスなどへのアクセスの際に、権限を分けることができます。情報の閲覧権限を段階的に、役職別に分けるなどが可能です。
オフィスセキュリティを強化するための最新ツールとデバイスをご紹介します。
AI(人工知能)が精度高く顔認証を行う入退室管理システムは、近年、注目を集めているオフィスセキュリティの一つです。認証システムの中でも生体認証は唯一無二の人間による認証であるため、高いセキュリティレベルを実現できます。さらに、なりすましなどがむずかしいAIによる顔認証分析により、安心安全の入退室管理が可能です。
セキュリティゲートとは、IDカード認証や生体認証などの認証技術によって、認証した人物のみ通行を許可するゲートです。建物や施設の入退室口に設置されます。オフィスのエントランスの前段階の認証で、ビルに備わることが多くあります。
オフィスセキュリティを高める場合、自社で独自に導入することも一案です。
会議室や執務室などから外部に会話の内容が漏れたり、社内においても会議中の声が他の業務を行っている従業員の耳に入ってしまったりすることで、セキュリティレベルが下がってしまいます。その場合はマスキング音やBGMなどを流すサウンドマスキングを施すことで、話し声が漏れるのを予防でき、情報漏洩のリスクを低減します。
リモートワークが浸透した昨今、新たなセキュリティ対策が求められています。例えば次のことは最低限、実践しておきたいところです。
従業員に貸与したデバイスなどの資産を適切に管理するツールを用いて、盗難や利用状況の確認を行います。
リモートワークで貸与するノートPCやモバイルデバイスなどのソフトウェアを最新版にアップデートし、セキュリティを万全にしておく必要があります。
従業員がリモートワーク中にインターネットを通じて不正サイトを閲覧してしまい、マルウェア感染や情報漏洩などが生じないよう、あらかじめ危険なサイトの閲覧ができないようにする手法です。
企業のセキュリティ対策において、認証方式の選定は重要なポイントです。ここでは代表的な3つの認証方法について、導入のしやすさや特徴、メリット・デメリットを整理します。
| 認証方法 | 特徴 | コスト感(一般的傾向) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 暗証番号(テンキー)認証 | 利用者が数字を入力して認証。シンプルで導入しやすい。 | 低コスト | ・機器が安価で導入しやすい ・運用がシンプル ・ユーザー教育が容易 |
・番号の漏洩リスク ・使い回しによるセキュリティ低下 ・なりすましが可能 |
| ICカード認証 | 専用カードをかざして認証。社員証や交通系ICと連携可能。 | 中程度のコスト | ・物理的なカードで管理しやすい ・複数システムとの連携が可能 ・利用者の利便性が高い |
・カード紛失・盗難のリスク ・カード発行・管理の手間 ・カード忘れによる入室不可 |
| 生体認証 | 指紋・顔・虹彩などを使った認証。利便性とセキュリティが高いが、精度や環境に左右されることも。 | 高コスト | ・本人しか使えないため高いセキュリティ ・カードや暗証番号不要で利便性が高い |
・専用機器が必要 ・環境(照明・湿度)によって認証精度が変動 ・プライバシー懸念 |
企業のセキュリティ対策として欠かせない監視カメラ。導入にあたっては、主に「アナログカメラ」と「ネットワークカメラ(IPカメラ)」の2種類から選ぶことになります。それぞれの特徴を理解し、自社に最適な選択をしましょう。
| カメラ種別 | 特徴 | コスト感(一般的傾向) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| アナログカメラ | 同軸ケーブルで映像を送信。DVRで録画。導入実績が多く、シンプルな構成。 | 低〜中コスト | ・機器が安価で導入しやすい ・運用がシンプル ・遅延が少ない |
・解像度が低め ・遠隔監視が困難 ・拡張時に配線が煩雑 |
| ネットワークカメラ(IPカメラ) | LANケーブルで映像を送信。NVRやクラウドで録画。高解像度・遠隔監視に対応。 | 中〜高コスト | ・高画質で細部まで確認可能 ・スマホやPCで遠隔監視可能 ・拡張性・連携性が高い |
・初期費用が高め ・ネットワーク知識が必要 ・通信障害時に映像取得が困難 |
性能の良いセキュリティを施すことはコスト増につながります。
システムの導入目的を明確にし、重要性に応じて優先順位をつけましょう。段階的に導入していくことも一案です。
オフィスセキュリティ対策のポイントをご紹介します。
まずは、社内にある守るべき資産をリストアップして可視化し、共有することが重要です。あらかじめ把握しておくことで、盗難時に早期に気づくことができるほか、資産を持っている前提での対応が可能になります。
守るべき資産それぞれのセキュリティリスクの度合いが異なります。資産ごとにリスクを洗い出すことでアクセス権限の付与や施すセキュリティレベルが見えてくるため、適切で無駄のない対策が可能になります。
ただ、セキュリティに関する設備やツールを導入するだけでは万全とは言えません。従業員全員に対する周知と教育も必要です。自社の既存もしくは新しく作るセキュリティ方針に基づいて運用しましょう。
リモートワークとオフィスワークが共存する働き方では、データの持ち出しや外部からのアクセスなどが可能になるため、セキュリティリスクが社外にも広がります。ネットワークはVPNや多要素認証などを導入する、貸与PCにはデータの暗号化や遠隔からのロック機能を施すなど対策が必要です。
ゾーニングとは、空間を機能や用途に応じて適切に区切ることです。オフィスセキュリティ対策のためには、セキュリティレベルによる区分けも重要です。人の動線に応じて例えば次のようにゾーニングします。
セキュリティレベル1:エントランスやエレベーターなど
パブリックゾーンとして来訪者や配達業者も含めて利用できるエリアです。
セキュリティレベル2:ロビーや応接室、会議室など
訪問者のみが立ち入れるエリアです。
セキュリティレベル3:執務室、ミーティングスペース、会議室、リフレッシュスペースなど
従業員のみが立ち入れるエリアです。
セキュリティレベル4:社長室や金庫室、サーバールームなど
機密ゾーンとして、最高レベルの機密情報を取り扱うエリアです。
それぞれのレベルに応じたセキュリティ対策を行います。
セキュリティレベル3以上に入退室管理システムの導入やよりセキュリティレベルが高い生体認証システムによる認証などを検討しましょう。
オフィスには守るべき重要な資産や情報、従業員が存在することから、レベルに応じた適切なセキュリティ対策が必要です。ポイントを押さえて徹底した対策を施し、安心して業務を行える環境を整えましょう。
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監修者 わたなべ
2005年リコーグループに入社。
15年間、建築設計事務所で意匠設計および設計監理に従事。
美しさと機能性を両立する空間づくりを目指し、企画から監理まで一貫して携わる。
戦略担当として、人財戦略にも取り組んでいる。
この一冊で、最新の7つのワークスタイルが分かり、お客様の課題を解決に導きます。
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