ウェルビーイング経営など、幸福度の定義を見直し、より従業員の働きやすさを追求して生産性を底上げする企業が増加しています。このようなトレンドの中で、オフィス環境を整えることでウェルビーイングを促進するアイデアも生まれています。
しかしながら、ウェルビーイングを実現するオフィスは定義が曖昧で、何から手を付けていいのかわからない方もいるのではないでしょうか。
そのような企業にとって有効なのが、「WELL認証」と呼ばれる世界的な空間評価システムの指標を参考にし、取得に向けて取り組むことです。
今回は、WELL認証の概要から注目される背景、認証取得のメリット、認証の評価項目、日本企業のWELL認証取得の取り組みの実践事例、ウェルビーイングを実現するオフィスの具体例までご紹介します。
まずはWELL認証の概要から世界と日本の取得状況を確認していきましょう。
WELL認証とは、「WELL Building Standard」と呼ばれる、主に人の健康とウェルビーイングにフォーカスした建築や街区の性能や空間の評価システムです。
2014年10月に発表された「v1」を経て、2018年には「v2pilot」、2020年9月15日には「WELL v2」が発表され、現在に至ります。
人の健康とウェルビーイングに影響を与える複数の機能について、パフォーマンスに対して測定し、評価認証するシステムです。
評価対象は、設計や建設、そして運用に至るまで網羅しており、そのベストプラクティスと、医学的・科学的研究をもとに評価します。
主にオフィスやホテル、商業施設などが認証を取得しています。
ウェルビーイングとは近年、注目されはじめた指標で、「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」を意味します。従来は、健康といえば、主に身体的健康と精神的健康のみに焦点が当てられていましたが、ウェルビーイングでは、「社会的健康(社会的な充足感)」も積極的に取り入れています。
社会的健康(社会的な充足感)とは、社会的に満たされた状態です。つまり個人の心身共に健康であっても、社会的に人とのつながりや利他の活動、社会貢献意識などを持ち、良好な社会活動を実践できることで、はじめて人は真の幸福に恵まれるという考え方に基づいています。また短期的な幸福だけでなく、生きがいや人生の意義など、将来長きにわたって持続的な幸福という意味合いを持ちます。
またウェルビーイングは、ただ個人の幸せのみを指すわけではありません。個人が社会的充足感を得るには、個人を取りまく環境や地域、社会がウェルビーイングを実現する準備がなされている、もしくはウェルビーイングな状態にあることが求められます。このことから、個人だけでなく、環境や地域社会におけるウェルビーイングも含む包括的な概念です。
このウェルビーイングの定義に基づけば、オフィス空間についてWELL認証を取得する際も、オフィスを利用する個人(従業員など)のみならず、オフィスをとりまく環境や地域社会などの周辺も含めた評価がされることが想定されます。
世界におけるWELL認証件数は、2025年12月時点の統計について、認証は2,337件で、予備認証771件を含めると全部で3,108件となっています。
国ごとの認証件数を比較すると、上位から「中国」が663件、「アメリカ」が434件、「インド」が138件となっており、「日本」は84件です。
日本におけるWELL認証件数と登録件数は年々大きく増加しており、2020年の累積認証数9件、累積登録数68件だったところ、2025年には累積認証数84件、累積登録数242件にまで増加しています。
また日本では建物用途別の認証件数は「オフィス」が83%で最も多く、次いで「ホテル・宿泊」の4%、「医療・福祉」の3%となっています。
WELL認証の最新版「WELL v2」の評価項目をご紹介します。
WELL認証を受けるには、次の評価コンセプト11分野それぞれの必須項目を満たし、加点項目を必要数取得する必要があります。
11分野の主な項目をご紹介します。
これらの項目に基づいて審査され、加点された点数が多ければ認証レベルが高くなります。認証レベルは「Bronze(ブロンズ)、Silver(シルバー)、Gold(ゴールド)、Platinum(プラチナ)」の4段階に分かれています。審査は書類審査と現地での環境測定、各種チェックにて行われます。
また認証取得後も、継続的な維持が求められており、認証の有効期限は3年であるため、3年が過ぎれば再認証が必要です。
WELL認証の評価対象を絞って派生したサブセットの3つの認証システムもあります。
WELL認証は、近年、日本でも注目を集めていることをお伝えしましたが、なぜここまで注目されているのでしょうか。その背景を解説します。
近年、従業員が心身共に健康的に働くことができる環境を実現し、生産性向上につなげることが、企業の経営目標として取り入れられるようになりました。また従業員が組織内、および社会的に良好な関係を築き、ウェルビーイングを実現することの重要性が高まっていることも背景にあります。
働く人のウェルビーイングに配慮したレベルの高いオフィスは、生産性向上をもたらし、結果的に売上・業績や企業価値向上につながっていきます。
このように、WELL認証を取得する取り組みは、企業経営とリンクし、より一層、戦略を加速することから、取得を目指す企業が増加していると考えられます。
企業が自社オフィスにおいてWELL認証を取得するメリットをご紹介します。
WELL認証に取り組むことは、ウェルビーイングの指標を上げることにつながるため、自ずと従業員が働きやすい、ウェルビーイングを実現しやすいオフィス作りが可能になります。その結果、業務効率とモチベーションが上がり、生産性向上につながることが見込めます。
ウェルビーイングを促すオフィスは、そこで働く人の心身の健康と社会的な充足を満たすため、従業員は「働きやすい」「社内コミュニケーションが取りやすい」「会社の方針・理念を改めて支持したい」「貢献したい」などの想いが生まれ、従業員満足度と共に、会社への信頼や愛着、貢献意欲を表すエンゲージメントの向上が見込めます。より仕事に熱意をもって取り組んでもらえたり、定着率が上がったりする効果も得られるでしょう。
WELL認証取得は、対外的に大きなアピール材料になります。企業が組織で働く人のウェルビーイングを重視している姿勢は、社会的に高い評価を受けることは間違いありません。その目指すべきお手本となり得る姿勢や取り組みに共感、称賛され、顧客や取引先、投資家などから信頼性が上がり、関係も良好になるでしょう。
WELL認証は、近年、トレンドになっている経営手法である、ウェルビーイング経営・健康経営と相容れるところがあります。そのため、WELL認証は経営戦略として取り組むことも可能です。
ウェルビーイング経営や健康経営では、定期的な健康診断やメンタルヘルスケア、エクササイズやトレーニングの推奨、健康的な食事を目指す栄養指導などのあらゆるプログラムが提供されています。その中でも快適なオフィス環境の提供という項目について、WELL認証は具体的な指標を与えてくれるため、取り組みやすくなると考えられます。
従業員満足度やエンゲージメントが高い従業員が生き生きと働くオフィスでは、人が定着しやすく、また集まりやすいといえます。人手不足や人材の流動性が高まる中で、「長くこの組織で働きたい」と思ってもらうための環境づくりが、WELL認証取得と継続的な取り組みによって実現しやすくなるでしょう。
日本企業は、すでにさまざまなアプローチにより、WELL認証を取得しています。その取り組みの具体的な実践事例を見ていきましょう。
ある米国企業の日本法人は、WELL認証の最高ランクであるPlatinumを取得しました。主に空気環境の可視化と改善、エルゴノミクス(人間工学)への配慮、そして健康的な食の提供や自然光の採用などが挙げられます。
空気環境の可視化と改善については、執務エリアへ空気品質モニタリング装置を設置したことが注目されています。このシステムにより、CO2やPM2.5、揮発性有機化合物などの数値をリアルタイムに測定できるようになり、常に働く環境にふさわしい快適で健やかな空気環境の実現・維持を実現しています。
ある住宅メーカーは、WELL認証の最高ランクであるPlatinumを取得しました。特に苦労したのは「食」の分野です。
食事提供の機会において、栄養士との相談のもと、アレルゲンの表示やトランス脂肪酸不使用、穀物の全粒粉使用の推奨、毎食4種類以上の野菜と果物の提供など細かな取り組みを忠実に実施しました。こうした取り組みはコスト増しの課題にも関係してくるため、WELL認証における評価とコスト面のバランスをうまく保つことで認証取得につなげました。
ある人材事業を行う企業は、WELL認証の最高ランクであるPlatinumを取得しました。
「こころ」の評価項目に関しては、独自の理論とエビデンスに基づいてオフィス空間をデザインする健康経営ソリューションを導入したり、女性の健康サポートプログラムをベースとした独自のメンタルヘルス研修を実施したりしたことが評価対象となりました。
また「コミュニティ」の分野では福利厚生として提供している企業内保育所の併設の取り組みが評価されました。
WELL認証は、オフィスにウェルビーイングを取り入れる一つの手段です。取得を目指す目指さないは問わず、オフィスにウェルビーイングを取り入れることは可能です。
オフィス空間におけるウェルビーイングを改めて考えてみましょう。
オフィス空間におけるウェルビーイングとして代表的なのは、快適に働ける環境があることが前提です。温度・湿度、空気環境、照明、デスクやチェアなどの家具、会議室や個人ブースなどの環境などについて、常に快適さを保つことが欠かせません。
またリフレッシュできる休憩スペースやオフィス内カフェ、トレーニングルームなどの設置や、観葉植物などを配置する緑化も心身共に健やかでいられるための重要なポイントです。
そして組織内の人々が有機的につながり合えるコミュニケーションが自然と活性化する環境も欠かせません。執務エリアに設けられたちょっとしたミーティングスペースなどの設置が挙げられます。
オフィス空間にウェルビーイングを取り入れることで、先にご紹介したWELL認証取得のメリットと同様の効果が生まれると考えられます。
オフィスとワークスタイルのデザイン・設計をご提案し、ご支援するリコージャパンでは、さまざまなご提案例をご案内していますが、その中でもウェルビーイングを実現する、リフレッシュスペースをご提案しています。
コンセプトは「Active Rest(アクティブレスト*)」とし、身体的にアクティブに動くことで積極的に休養できる環境を提供します。
ナチュラルな緑を交えたリラックスしながらコミュニケーションをとれる環境や、トレーニング機器の導入によるエクササイズが可能な設備などを通じて、リフレッシュを促します。仕事への集中力を高めることが可能です。
ただ個々人がリフレッシュできるだけでなく、複数人が共に利用し、自然なコミュニケーションが生まれる設計を工夫しています。心地の良い、執務エリアとはまた違ったコミュニケーションを実現できます。
心身の健康と共に、社会面、人とのつながりに関する幸福にもつながっていくでしょう。
WELL認証は、ウェルビーイングという観点からオフィス空間の評価を受けられる制度です。認証取得のために積極的に取り組むことで、従業員のウェルビーイングを実現し、モチベーションや満足度、エンゲージメントの向上につながり、生産性向上を実現できるでしょう。
リコージャパンでは多様化する経営環境に合わせ、デジタルサービスとワークプレイスを組み合わせた「RICOH Smart Huddle」のコンセプトのもと、働き方のリニューアルをサポートし、お客様をご支援いたします。
“新しい働き方”をお客様と一緒に考えながら、オフィス移転やリニューアルを、計画から理想の働き方が実行されるまで、プロジェクトマネジメントの業務も含めワンストップでご支援いたします。
ウェルビーイングを実現するオフィスのご提案から、「WELL認証」の取得にまつわるご相談まで、ご希望に応じてご支援いたします。弊社の実践事例も紹介できますので、お気軽にお問い合わせください。「RICOH Smart Huddle」の詳細は、以下よりご覧いただけます。
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