物流拠点や製造現場での物流を自動化するAGV。現在多くの業界で導入が進み、さまざまなタイプのものが提供されています。そこでAGVの活用では、多彩な種類の中から自社の業務に最も適したものを選択することがポイントになります。本稿では、AGVにはどのようなタイプがあるのかを確認した上で、それぞれどのような搬送作業に向いているのかを解説します。自社にはどのようなAGVが適しているかをご検討中のご担当者はぜひ参考にしてください。
AGVの特徴と導入効果
AGVの特徴
AGVとはAutomatic Guided Vehicleの略で、さまざまな物の運搬を自動化するいわゆる物流ロボットの1つです。無人搬送車とも呼ばれ、1980年代から製造業や物流業を中心に多くの業界の現場で導入されています。物の運搬を自動化するロボットですので、人が逐一操作するのではなく、あらかじめ設定した搬送路上を自律的に走行して、目的地まで荷物を運ぶことができるのが特徴です。
経路を誘導する方法には何種類かありますが、最も一般的なのが経路上の床面に誘導用のテープを貼り、そのテープのAGV本体に搭載したセンサーなどで認識しながら走行する方法です。その他、人や車両に追従させる方法などもあります。AGVは工場内物流をはじめ、倉庫や物流拠点、飲食店やホテルなどでの配膳や寝具の搬送、さらには農場での収穫物の搬送などさまざまな領域で活用されるようになってきています。
AGVと似たもので、AMRやGTPと呼ばれるものがあります。AMR(Autonomous Mobile Robot)は、本体に位置情報認識機能を搭載して、自らが位置情報を把握しながら自律的にルート上を走行する自動搬送車。また、GTP(Goods to Person)は、人のいるところに搬送物や棚を運んでくるという作業方法で、人の移動を無くすことで作業全体を効率化する方法です。
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物流拠点でAGV導入が注目されている背景
今までの倉庫内での物流作業の自動化といえば、コンベヤーなどの搬送機器の導入が主流でした。しかし、コンベヤーは固定ルートを一方方向に搬送することしかできず、設置後のレイアウト変更も難しいという問題があります。また導入コストも高額のため会社の負担が大きくなっていました。
物流ラインの効率化も求められる現在の物流作業においては、より柔軟な搬送手段が必要となっています。
そこで注目されているのがAGVです。AGVは磁気テープやマーカーなどの上を走行するため、ルートを簡単に変更できるうえ、作業者の通路などとして引き続き使用することができます。また、搬送作業に関わる作業者の負担軽減やピッキングミスの低減、効率化によるコスト削減も期待できます。さらに、コンベヤーのような大規模な工事が不要で初期投資を抑えられる点も注目されている点になります。
変化や課題の多い物流業界において、AGV導入による搬送業務の自動化は今後ますます注目されていくことでしょう。
AGV導入の効果
AGV導入によってもたらされる効果には、具体的に次のようなものがあります。
・物流の効率化、迅速化
搬送作業は決められた時間内に必要な量の作業を行わなければならないケースが多いでしょう。AGVによって搬送作業を自動化することで人に依存せず効率的に荷物を搬送することができるようになります。全体の効率が向上すれば作業の迅速化にもつながっていきます。
・人件費削減
AGVで搬送作業を代替することで省人化が図られ、対象作業員分の人件費を削減することができます。直接的な給与分だけではなく、人材の採用や教育に必要なコストおよび工数も抑制することができます。
・作業員の負担軽減
AGVによる物流自動化により、作業員は搬送作業を行う必要がなくなります。特に負担の大きい重い荷物などの積み下ろしから開放されることで、作業員の負担が軽減されます。
・搬送中の事故防止
AGVが直接搬送作業を実施するので、搬送中に人が事故に巻き込まれる可能性が少なくなり、安全に作業することができます。
・搬送ミスの抑制
ロボットの一種であるAGVは、あらかじめ決まった動作や作業を正確にこなすことができます。AGV導入により、ヒューマンエラーなどの人に起因する搬送ミスの発生を抑制できます。
≫ 関連コラム:工場での作業員の安全性を高めるAGVの導入とは
AGV導入時のポイント
AGV活用のためのポイント
上記のようなさまざまな導入効果が期待されるAGVですが、工場内などにAGVを導入してその導入効果を上げるためには次のようなことポイントになります。
・自社の現状、課題を明確にする
現状のどのような課題をAGVによって解決したいのか、それを明確にした上で導入を検討します。「何となくAGVを導入すれば今より良くなるだろう」というような曖昧な考え方では大きな導入効果は望めません。
・費用対効果を明確にする
AGV導入によってどの程度コストが削減できるのかを明確にした上で、導入に必要な初期コスト、およびその後の運用コストと併せて評価する必要があります。初期費用は比較的算出しやすいですが、保守や改修も含めた運用コストに関しても明確に算出しておく必要があります。
・現場の状況や課題に適したAGVを選択する
一口にAGVと言っても、荷物の搬送方法や走行方式などにより多くの種類があります。具体的な種類は次章でご説明しますが、搬送物の形状や重量、搬送路の状況や利用場所の状況などに適したAGVを選択する必要があります。
・他のシステムや機器との連携も検討する
ピッキングマシンや無人フォークリフト、エレベーターなど搬送に関わる機器や、倉庫管理システム(WMS)などと連携できないかを検討します。他システムと連携して使用すれば、より広範囲が自動化対象になり、さらに多くの導入効果が期待できます。
AGV導入時の課題、留意点
・初期導入コスト
AGV導入に際しては、導入時の初期コストと稼働後の運用コストが必要になります。運用コストに関して費用対効果でAGVに効果が認められたとしても、導入時の初期費用がある程度かかるため、投資対効果を求められることが多くなります。初期費用の回収計画をしっかりと練った上で、社内コンセンサスを得られやすい環境を整える必要があります。
・場内のレイアウト設計や作業の見直し
AGVを走行させるためには相応のスペースが必要になるため、搬送路の確保が必須になります。加えて、AGV運用後には作業の見直しも必要になるでしょう。通路の幅や間口に問題ないかのチェックや、AGVが搬送できるような棚の配置になっているか、ルート上に障害となる物がないかなどを事前にチェックし、必要ならレイアウト変更を実施します。
・安全対策
AGVによって搬送中の作業員が直接事故を起こすことは無くなりますが、今度はAGVとの衝突や接触などを起こす恐れがあります。センサーを使った障害物検知や、人に対して危険を知らせる回転灯、警報などを活用した安全性対策が必要になります。
自社に適したAGVの選び方
AGVには、主に搬送方法による分類と走行方式による分類があります。各方法/方式による差を理解して、自社の状況に最も適したタイプのものを選ぶことが重要です。
搬送方法による選び方
搬送方法には積載型や低床型、牽引型などがあります。積載型は台車タイプで、荷物を直接積載できる形状です。荷物を個別に搬送する場合や、ダンボール、小型コンテナなどの搬送に適しています。低床型は搬送したい物の下に潜り込んで、そのものを持ち上げて搬送するタイプ。可動式ではない棚やパレットなどをそのまま搬送したいときに選択します。牽引型は、棚ごと引っ張って搬送するタイプです。可動式の棚やかご台車、パレット台車などをそのまま搬送するのに適しています。複数台連結できるので可動式の物を搬送する場合は牽引型を検討したほうが良いでしょう。
走行方式による選び方
走行方式には、磁気誘導方式や光学誘導方式、画像認識方式などがあります。床面の磁気テープなどを磁気センサーで検知しながら走行するタイプの磁気誘導方式は、比較的古くから導入が進んでいます。搬送ルートを変更するたびに磁気テープなどを貼り替える必要があり、そのための手間とコストがかかります。従って搬送ルートの変更があまり発生しない現場での利用が前提となります。
光学誘導方式は、磁気テープに替わり一般的なビニールテープなどを光学センサーで検知して走行するタイプです。搬送ルート変更時には磁気誘導方式と同様テープを貼り替えなければなりませんが、磁気テープと比べてコストや手間は大幅に抑えられます。安定して走行しなければならないが、ある程度ルート変更の必要性もある現場などでの活用が適しています。
床や天井などに設置したQRコードなどを読み取ることで現在位置を把握して走行するのが画像認識方式です。ルート上にガイド用テープが貼付できない場合や、頻繁に搬送ルートを変更する場合に選択すると良いでしょう。
≫ 関連コラム:AGVの種類を解説。光学式と磁気式の違いとメリットデメリット
リコーAGVの特徴とお勧めの活用方法
リコーAGVは、位置情報精度が高い高精度ガイド方式を採用したAGVです。光学誘導方式を採用しているため、レイアウト変更などに伴う搬送ルート変更は床面のビニールテープなどを貼り替えるだけで完了。手軽かつ低コストで対応できるのが特徴です。小型設計に加えて90度/180度ターンや、十字に交わるクロス走行にも対応しており、搬送路の確保が難しい場所など多様な場所で活用できます。多彩なカスタマイズやシステム連携も可能で、製造現場のさまざまな状況や課題に対応できるAGVです。
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≫ AGV(無人搬送車) | リコー