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製造業でAIを導入した事例|導入状況やメリット・デメリットを説明

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製造業でAIを導入した事例|導入状況やメリット・デメリットを説明

生産性向上やDX実現の手段として、企業においてAI活用の必要性が高まっています。しかし諸外国と比べ、日本国内の企業では導入が進んでいないのが現状です。製造業も例外ではありません。

この記事では製造業にしぼり、AI導入の現状を確認しつつ実例の紹介、メリットとデメリットを解説します。製造業のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。

製造業におけるAI導入の現状

製造業におけるAI導入の現状

総務省が2019年にまとめた「日本企業のAI・IoT(Internet of Things)の導入状況」によると、製造業のAI導入率は11.2%で、全業種平均の14.1%を下回っています。

理由として挙げられるのは、対応できる人材が不足していることです。AI導入に対応するためには、AI活用の知識だけでなく自社の業務を把握している必要があります。両方の理解がないと、そもそもの導入方針が立てられないからです。このように人材不足の影響で何をAIに任せるか目的・方針が定まっていないことも理由となっていると考えられます。

製造業でAIを導入した事例

製造業でAIを導入した事例

では、製造業でAIを導入した企業の事例について紹介します。

【横河電機】化学プラントの自立制御に成功

横河電機株式会社は、計測・制御・情報の技術を軸に最先端の製品やソリューションを提供している企業です。ご紹介するのは、AIで化学プラントを自動制御する同社の技術です。強化学習AIを実際のプラントに安全に適用し、これまで手動制御だけでしか対応できなかった箇所をAIが制御できるようになりました。

AIの自立制御により、品質の安定化、高収量、省エネ制御が実現されました。さらに規格外品が生産されなくなったため、燃料や人件費などのコストと時間の損失がなくなったともいいます。

【ブリヂストン】AIを実装したタイヤ成型システムを導入

株式会社ブリヂストンは、よく知られているタイヤの製造のほか、自動車用部品や産業資材・建設資材などの商品を提供しています。タイヤ成型システムに独自のアルゴリズムのAIを実装しました。

アルゴリズムは大きく分けて3つのデータやノウハウから構成されています。1つめはコア技術である高分子・ゴム・複合体の材料加工に関する知見を加えたデータ解析です。さらに、生産工程などで得られる膨大な情報をビッグデータ解析、技能員が培ってきた技術・ノウハウをプラスしました。

AI実装の結果、円形の精度「真円度」における品質向上、従来の2倍という生産性向上、自動化によるスキルレス化の3点が実現されたとしています。

【川崎重工×フツパー】作業者の作業時間をAIで計測

川崎重工業株式会社は、輸送用機器・エネルギー・産業用設備などの製造を行っています。また株式会社フツパーは、製造業向けAIサービスを提供する会社です。

両社は、川崎重工の事業の1つ「カワサキモータース」のバイク組み立てラインにおいて、作業分析AIの構築及びその実証実験を行いました。作業工程の最適化のためには、現状の作業の流れの把握が必須です。そのためにカメラによる作業者の撮影及びその行動分析を実施しました。

作業分析AIによって作業者の行動の分析が可能になり、最適化の判断材料とすることができるようになりました。さらには遅延が発生した箇所への即時サポートや、作業の集計を踏まえた人員配置などが可能になります。

【IntegrAI】リアルタイムで製造機器のデータを取得するサービスを提供

株式会社IntegrAIは、製造業における設備監視を自動化するAIカメラの開発・販売を行う企業です。

同社では、リアルタイムで製造機器のデータを取得するサービスを提供しています。カメラシステムにAIを搭載し、画像認識技術により、製造機器のメーターやランプを自動データ化するサービスです。

このサービスを利用すると、異常があったときなど即時アラート通知が可能になります。見回りや点検などが不要となり、品質管理にかかる作業時間の削減にも有効です。さらに機械の稼働傾向の把握と最適化が可能になり、コスト削減につながります。

【スカイディスク】鋳造条件をAIでスコアリング

株式会社スカイディスクは、生産スケジューラの提供、生産管理・最適化領域を中心としたソリューションを開発・提供するなど、AIを活用したDX支援を行っている企業です。

同社では、ダイカスト工程の鋳造波形から鋳造条件をスコアリングするAIを作成しました。従来は熟練の検査員が、経験から把握している膨大なパターンをもとに異常がないか判断していました。しかし同社のAIは自動算出で条件をスコアリングするので、人間は最終判断を行うだけで済みます。

これにより、後工程で行われていた条件の確認が、このシステムなら射出してすぐに算出されフィードバックすることが可能です。その結果、ムダな欠陥品製造の防止にもつながります。長期的には技術継承の問題の解決も期待できます。

【トヨタ自動車】磁気探傷検査の自動化に成功

トヨタ自動車株式会社は、言わずと知れた自動車の大手メーカーです。その中でも、自動車用鍛造品を作る鍛造部にAI導入の事例があります。

同社の鍛造部では、磁気探傷検査をAIによって自動化しました。AI・ディープラーニングを適用した画像検査システムを導入したのです。

AIにより、一般的なマシンビジョンを使用していたときに比べ検査の精度が向上しました。不良品を不良品と認識しない「見逃し率」は32%から0%に、良品を不良品と誤認する「可検出率」は35%から8%に改善されたといいます。

製造業でAIを導入するメリット

製造業でAIを導入するメリット

次に、製造業でAIを導入するメリットについて解説します。具体的なメリットは次の通りです。

  • ● 生産性が向上する
  • ● 品質が向上する
  • ● 労働環境が改善する
  • ● 競争力を強化できる

順に見ていきます。

生産性が向上する

AIを導入すると生産性が向上します。理由はいくつかありますが、中でも大きいのはAIによる自動化で作業人員の省人化が可能になることです。またヒューマンエラーがなくなることで不良品が減り、ロスも減少します。

いろいろな面で、全体の実態が正確に把握できることも役立ちます。発注や在庫管理にAIを活用すれば、適正な仕入れによるムダの削減が可能です。作業の効率化についても、滞留やボトルネックの発見とその解消がしやすくなります。生産設備の監視にAIを導入すれば、故障の予防が可能となり稼働率が改善されます。

そのほか単純作業などをAIに任せることで、人間は付加価値の高い業務に集中することができるようになるでしょう。

これらにより生産性が向上します。生産性が向上すると、生産量増につながり、販売できる量も増えます。そのほか生産コストの削減ももたらされます。

品質が向上する

またAI導入により製品の品質が向上します。製造・検査いずれにおいても、AIで作業を自動化すればヒューマンエラーをなくすことが可能です。また作業者による品質のムラもなくなり、高い水準で品質が安定します。

品質が安定すると、会社の信用度向上と競争力の向上が期待できます。

労働環境が改善する

またAIは労働環境の改善にも役立ちます。まずAIにより生産性が向上すると、労働時間を短縮することが可能です。また微細な検査など精神的な負担の大きい業務、重量物を扱うなど肉体的な負担の大きい業務、危険な作業などの負担も軽減できます。さらに貴重な人材が単純作業からも開放され、創造性が高くより付加価値の高い業務に集中することが可能です。

労働環境が改善すると、社員の満足度が高まります。その結果、離職の予防と職場への定着が促進されます。ひいては将来的な労働力不足への対処にもつながるでしょう。また定着率が高まることで、ノウハウの蓄積もしやすくなり技術力向上も期待できます。

競争力を強化できる

さらに、AI導入は競争力の強化も期待できます。AIを需要の予測や在庫管理・工程管理などに活用すると、数値管理の精度が高まります。その結果ムリ・ムダ・ムラをなくし、在庫や工程を適正化することが可能です。健全かつ強固な経営がもたらされます。

さらにこれまで解説してきた生産性の向上、品質の向上、安定した人材の定着と付加価値の高い業務への配置などによっても、企業としての競争力が強化できます。

競争力が高まればシェアも拡大し、営業など販売の労力も少なくなります。価格交渉などもやりやすくなるでしょう。社員の待遇改善や投資もしやすくなります。これらの変化は、ひいては企業の存続や拡大につながると言えます。

製造業でAIを導入するデメリット

製造業でAIを導入するデメリット

製造業でAIを導入する場合、メリットだけでなくデメリットもあります。次にデメリットについて解説します。具体的には次の2点です。

  • ● 高額な初期費用がかかる
  • ● セキュリティを強化する必要がある

順に見ていきます。

高額な初期費用がかかる

まず初めに、AI導入には高額な初期費用がかかることが挙げられます。生産ラインすべてを刷新する場合などは、多額の費用が必要です。また現場で使う機器のほか連動させるシステムも導入する場合は、その費用も上乗せされます。

長期的に見ればAI導入はコスト削減につながり、最終的には初期費用も回収できることがほとんどです。しかし確かに導入時は多くのイニシャルコストが必要です。対策としては、一度に導入するのではなく段階的に導入を進めることが挙げられます。それにより負担の時期を分散させることができます。

セキュリティを強化する必要がある

次にセキュリティを強化する必要があることも挙げられます。

AIを導入する分野や内容によっては、ネットワークを利用することが必要となります。ネットワークから機密情報などがアクセスできるようになるため、セキュリティを高める必要があるのです。

接続するデバイスの種類などを分類・可視化したり、デバイスを利用できる環境や担当者を厳格化するなどして対処することが求められます。そのほか、担当者ごとにアクセスできる範囲やパスワードなどを厳重に管理することも重要です。

まとめ

まとめ

製造業において、AIの導入はメリットが多くあります。業界としては導入が進んでいないだけに、他社に先駆けて取り組めば差別化や先駆者利益も期待できます。

AIの導入に際しては、目的を明確にして具体的にどの部分に導入するか判断することが必要です。そのためには、AIの知識と同様に製造に関する知識も必要となります。

私どもリコーでもAI導入のサポートを行っています。製造現場を熟知したデータサイエンティストが、生産プロセスデータ活用に向けたサポートを行います。AI導入でお悩みのご担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。このページの最上部と最下部からご連絡いただけます。

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