在庫管理にRFID(Radio Frequency Identification)を導入することは、製造業や物流業界において、業務の効率化と正確性の向上をもたらすことが期待できます。導入にあたってはメリットもデメリットもあるので、それらを理解した上で検討することが重要です。
この記事では、RFIDの基本情報やメリット・デメリットについて解説します。
RFIDとは
RFIDとは、Radio Frequency Identification の略で、電波を使用して対象物に添付された電子タグの情報を非接触で読み書きする技術です。RFID システムは、主にRFIDタグとRFIDリーダー/ライターの2つのコンポーネントで構成されます。
RFIDタグは、アンテナとマイクロチップで構成される小さな電子デバイスです。タグには、製品ID、製造日、及びその他の関連情報など、対象物に関するデータが保存されます。
RFIDリーダー/ライターは、電波を送受信して RFIDタグとの通信を行うデバイスです。リーダーは、タグからのデータを読み取り、コンピューターシステムに送信できます。また、リーダーを使用して、データの書き込みやタグの構成を行うこともできます。
在庫管理にRFIDを導入するメリット
在庫管理にRFIDを導入するメリットは、主に以下の6つです。
- ● 箱の中の製品を読み取れる
- ● 手の届かない製品を読み取れる
- ● 複数の製品を一括で読み取れる
- ● 読み取り時に汚れの影響を受けにくい
- ● 対象物を探索できる
- ● データを書き換えられる
箱の中の製品を読み取れる
RFIDは、電磁波を使用して対象物に添付された電子タグの情報を非接触で読み書きする技術です。RFIDタグはアンテナとマイクロチップで構成されます。アンテナは電磁波を受信してマイクロチップに電力を供給し、マイクロチップは製品 ID、製造日、及びその他の関連情報など、項目に関するデータが保存されます。
箱の中の製品を読み取るには、RFIDリーダー/ライターが必要です。リーダー/ライターは、電磁波パルスを発信し、タグからの応答を受け取ります。タグが電磁波パルスを受信するとマイクロチップがデータを送信し、リーダー/ライターはデータを受信してデコードし、コンピューター システムに送信します。
RFIDは、電磁波が紙、プラスチック、木材などの材料を通過できるため、箱の中の製品を読み取ることができます。ただし、金属などの導電性材料は電磁波を遮断するため、RFIDタグは金属製の箱の中にある製品を読み取ることはできません。
手の届かない製品を読み取れる
RFIDを使うと、手の届かない製品を読み取れる理由は、電波が物体を通過できるからです。電磁波は、紙、プラスチック、木材などの多くの材料を通過できるため、リーダー/ライターは、手の届かない場所にあるタグを読み取ることができます。
複数の製品を一括で読み取れる
RFIDで複数の製品を一括で読み取れるのは、RFタグとRFIDリーダーの間で電波の送受信が行われるためです。RFIDリーダーは、特定の周波数帯の電波を発信し、その電波を受信したRFタグは、自分の固有の識別番号やデータを電波に乗せて返信します。このとき、RFIDリーダーは、電波の届く範囲内にある複数のRFタグからの返信を同時に受信することができます。これを「アンチコリジョン(衝突防止)」機能といいます。
読み取り時に汚れの影響を受けにくい
従来のバーコードは、光学式スキャナーで読み取るため、バーコード表面に汚れや傷があると、読み取りエラーが発生しやすくなります。一方、RFIDは電波を使ってデータを読み書きするため、タグとリーダー/ライターが直接接触する必要がなく、汚れや傷の影響を受けにくくなります。
対象物を探索できる
固定リーダー/ライターは、特定の場所に設置され、その場所を通過するすべてのRFIDタグを検出します。この方法は、倉庫や配送センターで、製品の出入りを監視するために使用されます。
データを書き換えられる
書き換え可能タグには、EEPROMやフラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーが使用されています。これらのメモリーは、電源がオフになってもデータが保持されるため、書き換え後のデータが保持されます。
在庫管理にRFIDを導入するデメリット
一方で、在庫管理にRFIDを導入するデメリットは以下の通りです。
- ● 導入時に大きなコストがかかる
- ● 読み取り時に水や金属の影響を受けやすい
導入時に大きなコストがかかる
RFIDの導入には、タグやリーダーなどのハードウェア、ソフトウェアのセットアップ、トレーニングなどのコストがかかります。
RFIDにかかるコストは導入するシステムの規模や要件によって異なりますが、一般的には以下の通りです。
- ● タグの単価:100円~数千円
- ● リーダー機器の費用:数十万円から数百万円程度
- ● ソフトウェアの費用:数十万円から数千万円程度
- ● トレーニングの費用:数万円から数十万円程度
高価で個別管理が必要な製品は、盗難や紛失のリスクを減らすために、RFIDで厳密な管理を行うことが有効です。例えば、宝石や時計、医療機器などが該当します。
読み取り時に水や金属の影響を受けやすい
RFIDは読み取り時に水や金属の影響を受けやすいです。
特にUHF帯のRFIDは、水分が電波を吸収し、金属が電波を反射するため、読み取り感度や距離が低下したり、読み取りができなくなったりする可能性があります。
RFIDによる在庫管理が向いているケース
RFIDによる在庫管理が向いているケースは、以下の通りです。
- ● 製品の数や種類が多く、手動での在庫チェックや棚卸しに時間がかかる場合
- ● 製品の情報をリアルタイムで更新したり、追跡したりする必要がある場合
- ● 製品の盗難や紛失を防止したり、セキュリティを強化したりする必要がある場合
- ● 製品の状態や品質を管理したり、有効期限を確認したりする必要がある場合
RFIDの導入がおすすめの企業の特徴は、一度に大量の商品が入出庫される、在庫管理のミスが多い企業です。
在庫管理にRFIDを導入した製造業の事例
シンフォニアテクノロジー株式会社のプリンターシステム製造拠点である伊勢製作所での事例を紹介します。この工場では、豊橋製作所から入荷されるプリント板にRFIDタグを付けて、入出庫や在庫の情報を効率的に記録するシステムを導入しました。
導入前の課題は、以下のようなものでした。
- ● 出庫がバッジ処理のため、正確な在庫数量が把握できない
- ● 部品在庫が分からないため、部品不足で生産が遅れる
- ● 部品が行方不明になることがある
しかし導入後、以下のような効果が見られました。
- ● 入出庫処理の自動化を実現し、作業効率が向上した
- ● 部品の詳細な情報や変更履歴を一元管理できるようになった
- ● 部品の状態や品質を管理できるようになった
- ● 部品の盗難や紛失を防止できるようになった
- ● 環境負荷を低減できるようになった
このように、RFIDソリューションの導入によって、シンフォニアテクノロジー株式会社の伊勢製作所は、生産と管理の面で大きな改善を達成しました。
まとめ
今回は、RFIDについて解説しました。RFIDは在庫管理をする上で大変役に立つシステムです。RFIDを在庫管理に導入することで、検品、入荷、出荷、棚卸などの業務が効率化され、在庫の不整合や欠品、過剰在庫などのリスクを減らすことができます。また、賞味期限や消費期限の管理や、生産管理から販売管理までの一元管理も可能になります。
リコーではRFIDを活用して生産現場の様々な課題解決を支援する「RFIDソリューション」を提供しています。RFIDシステムの導入を検討している際は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。