製造や物流の過程でよく出るワードとして「マテハン」が挙げられます。マテハンには数多くの種類があり、製造業に従事していてもそのすべてを把握している方は少ないのではないでしょうか。
本記事では、マテハン機器の種類を作業ごとに解説するとともに、メリット・デメリットをお伝えします。導入時の注意点も説明しますので、マテハンの役割を正確に把握し、業務効率アップとローコスト化を図りたい方はぜひ最後までご覧ください。
マテハン(マテリアルハンドリング)とは
マテハンとは、正確には「マテリアルハンドリング」といい、本来の意味では物流業務を効率的にすることを指します。しかし現在は、現場におけるモノの移動にかかわる作業をオート化するための機器全般を指す用語として使われるようになりました。
今やマテハン機器は製造現場になくてはならないものとなっており、ITの進歩にともなってクオリティーも年々上昇しています。
【作業工程別】マテハン機器の種類
マテハン機器には多くの種類がありますが、大きく分けると以下の5種類です。
- ● 積載作業で使用するマテハン機器
- ● 運搬作業で使用するマテハン機器
- ● 仕分け作業で使用するマテハン機器
- ● 保管作業で使用するマテハン機器
- ● 梱包作業で使用するマテハン機器
上記の作業工程別に、具体的なマテハン機器の種類を見ていきましょう。
積載作業で使用するマテハン機器
積載作業で使用する主なマテハン機器は、次の3種類です。
- ● フォークリフト
- ● パレタイザ・テパレタイザ
- ● バンニング・デバンニングシステム
それぞれの特徴を説明します。
フォークリフト
フォークリフトとは、モノを運び、一箇所に積載することに特化した機器です。前輪の下方付近に取り付けられた可動式の大きなツメを利用して対象物を持ち上げ、目標地点まで運搬することで積み下ろし作業をスムーズにします。
フォークリフトにはさまざまなサイズがあり、操作するためには免許が必要です。近年は無人で動くフォークリフトも登場しており、あらゆる現場で役立てられています。
パレタイザ・テパレタイザ
パレタイザとは、平面になった専用パレット上にモノを積む機器です。一方デパレタイザは、パレタイザで積み上げられたモノを下ろすための機器を指します。
どちらも機械式とロボット式の2種類があり、フォークリフトなど運搬用機器の前段階として用いられるケースが一般的です。人の手で行っていた積み込み・積み下ろしにパレタイザとデパレタイザを導入すれば、業務が圧倒的にスピーディになるうえ、作業員にかかる負担も軽減します。
バンニング・デバンニングシステム
バンニング・デバンニングシステムとは、コンテナへのモノの積み込み・積み下ろし作業における障害をカバーする機器です。代表例として、ベルトコンベヤーと運搬地点をつなぐための器具や、床との段差をなくすドックレベラーなどが挙げられます。
バンニング・デバンニングシステムを設置していれば、フォークリフトなどを用いたモノのスムーズな移動が実現し、少ない人数での作業が可能です。
運搬作業で使用するマテハン機器
運搬作業で使用するマテハン機器には、次の3種類があります。
- ● コンベヤー
- ● AGV
- ● AMR
それぞれの役割を確認していきましょう。
コンベヤー
コンベヤーとは、載せたモノを一定方向へ流す機器の総称です。ベルト式のほか、ローラーやチェーンなど複数の種類があり、現場のエリアやレイアウトごとに適したタイプを設置することで運搬作業が効率化します。
運搬における省人化だけではなく、製造ラインに組み込んで流れ作業を行う用途にもよく使われている設備です。
AGV
AGVとは「Automatic Guided Vehicle」の頭文字をとった略称であり、無人で搬送できる機器です。磁気テープ上を走行する車両のほか、搬送路をビニールテープで柔軟に設定できる光学式があり、より快適なピッキング作業の実現に一役買っています。
AGVについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご一読ください。
AGV(無人搬送車)とは - 導入メリットや基礎知識
AMR
AMRとは「Autonomous Mobile Robot」のことです。要するに、AIが搭載された搬送用ロボットを指します。
AMRにはレーザーなどを用いて障害物を自動で検知する機能が備わっているため、AGVのように経路を指定する必要がありません。ピッキングステーションまでモノや棚ごと運ぶ流動型や、作業員の側でサポートする自動協調型などがあり、場内の環境を変えることなく導入できます。
仕分け作業で使用するマテハン機器
仕分け作業で使用するマテハン機器は、次の6種類が代表的です。
- ● ソーター
- ● オートラベラ
- ● GAS
- ● DAS
- ● DPS
- ● SAS
各機器の特徴を紹介します。
ソーター
ソーターとは、簡単にいうとオート仕分け機のことです。スライドシュー式やポップアップ式、クロスベルト式など、さまざまな運搬形式があります。
ソーターは、対象物に付与された情報を読み取り、用途や種類ごとに仕分けを行う仕組みです。人力と比べ、正確かつ迅速に仕分け作業が完了します。
オートラベラ
オートラベラとは、情報が付与されたラベルを自動的に印字もしくは貼付する機です。人の手よりも的確かつ素早くラベリングできることから、トレーサビリティーの一手段として製品の安全性・信頼性の向上に役立てられています。
GAS
GASとは、「Gate Assort System」の略語であり、製造・物流の現場における仕分けを自動化する機器の一つです。対象物に印字されたバーコードを読み取ると、対応するゲートが開く仕組みになっています。
仕分けの正確性とスピードがアップすることから、トータルピッキング(種まき方式)が行われる現場で重宝されているシステムです。
DAS
DASとは「Digital Assort System」を略した用語であり、仕分け先に設置することで搬入すべき製品名や数量を自動で表示させられる機器です。
ピッキング作業時の搬入ミスを大幅に減らせるため、GASと同じくトータルピッキング(種まき方式)をサポートする機器として活用されています。
DPS
DPSは、正式には「Digital Picking System」といい、特定のポイントに保管されているモノの場所と移動を把握するための機器です。
目的のモノを探したり数えたりする手間が省けるため、品番及び数量の把握が必要ありません。モノの管理が容易になり、摘み取り式ピッキング作業におけるミス抑制に効果的です。
SAS
SASとは、正しくは「Shutter Assort System」と呼ばれ、シャッター付きの仕分けボックスを用いたシステムです。ピッキングのプロセスが表示された品番・数量を入れるだけの単純作業になり、小口での仕分けにおける正確性がアップします。
シャッターの開閉数や時間などを柔軟に設定できるため、作業効率の向上も狙えるでしょう。
保管作業で使用するマテハン機器
続いて、保管作業で使用するマテハン機器からは次の3つを紹介します。
- ● 移動ラック
- ● パレット
- ● ネステナー
それぞれの役割をみていきましょう。
移動ラック
移動ラックとは、可動式の棚のことです。通常の保管棚のように移動させるためのスペースを作る必要がないため、限られた空間を有効活用できるようになります。
手動式と電動式があり、保管するモノの重さによって使い分けるとよいでしょう。
パレット
パレットとは、モノを載せて保管できる台のことです。素材はプラスチックや金属などさまざまであり、国内では「イチイチ」と呼ばれるJIS規格の1,100mm×1,110mmのサイズが普及しています。
パレットは人の手でも動かせますが、主にフォークリフトとセットで一度に大量のモノを運搬する用途に導入されるケースが大半です。
ネステナー
ネステナーとは、パレットをそのまま設置して保管するための器具です。ネスティングラックやネスラックなど、さまざまな呼称があります。
ネステナーは、入れ子を意味する「Nest(ネスト)」が名前の由来となっていることからもわかるとおり、重ねて保管できる点が特徴です。パレットが床や地面につかない仕組みでレイアウトを変えやすい正ネステナーと、直置きで安定性の高い逆ネステナーがあります。
梱包作業で使用するマテハン機器
梱包作業で使用するマテハン機器のうち、ポピュラーなのは次の2種類です。
- ● 自動製函機
- ● 自動封緘機・自動梱包機
それぞれどのような目的に用いられるのかをみていきましょう。
自動製函機
自動製函機とは、段ボールを自動的に組み立てる機械です。段ボール組み立てにかかる一連の作業がオート化され、手作業より圧倒的にスピードアップします。
従来の効率化策としては、あらかじめ組み立て済みの段ボールをストックしておくことが一般的であり、ある程度の保管スペースが欠かせませんでした。自動製函機を導入すれば、必要なタイミングで素早く段ボールを組み立てられるため、省スペースにもつながります。
自動封緘機・自動梱包機
自動封緘機や自動梱包機は、モノの箱詰めや封とじの自動化を目的として作られた機器です。箱のサイズ選びや封入などがすべてオート作業で行えるため、出荷準備から発送までの作業の省人化と迅速化が実現します。
マテハンを導入するメリット
マテハン導入によって、以下のメリットが得られるでしょう。
- ● 業務を効率化できる
- ● 省人化によってコストを削減できる
上記のメリットをそれぞれ詳しく説明します。
業務を効率化できる
人の手で行っていた単純作業をマテハンに置き換えることで、製造・物流の現場における多くの業務がオート化します。作業遅延やヒューマンエラーが減り、業務効率がアップするでしょう。
省人化によってコストを削減できる
マテハンの活用により、製造・物流の作業を最小限の人手で行えるようになります。従業員の採用や教育にかかるコストを抑えられるだけではなく、労働災害の発生防止にもなるでしょう。
マテハンを導入するデメリット
多くのメリットがある一方で、マテハンには下記のようなデメリットがあります。
- ● 導入コストがかかる
- ● トラブルによる稼働停止のリスクがある
導入は、上記デメリットを把握したうえで検討してください。
導入コストがかかる
マテハンを現場に取り入れる際には、相場として最低でも数百万円、場合によっては数千万円にものぼるイニシャルコストが必要です。また、設備・機器の運用にかかる電気代やメンテナンス費用をはじめとするランニングコストもかかり続けます。
とはいえ、導入・運用にかかるコスト面のデメリットは、マテハンに限ったことではありません。むしろ、マテハンによってもたらされる利点は、導入・運用にかかる費用を大きく上回るケースも少なくないでしょう。
トラブルによる稼働停止のリスクがある
万が一マテハンに何らかのトラブルが発生した場合、関連する業務全体が停止してしまうおそれが否めません。どのようなときでも滞りなく稼働できるよう、あらゆる事態を想定して対応策を講じておくことが推奨されます。
マテハンを導入する際の注意点
マテハンの導入時には、次のポイントを見直すことをおすすめします。
- ● 導入目的を明確にする
- ● 作業マニュアルを作成する
- ● 倉庫のレイアウトを見直す
- ● サポート体制を整備する
事前に上記項目を徹底しておけば、マテハンをより有効活用できるでしょう。
導入目的を明確にする
どのような作業やリソースを省人化するのかを判断するためにも、まず現状における課題を明確にしてからマテハンを導入しましょう。目的や用途、機能の充実度によって、マテハンの費用はさまざまです。自社の課題があいまいなままマテハンを選定すると、不要な設備・機器を取り入れてしまいかねません。
目的に適切なマテハンを導入すれば、コストパフォーマンスを最大化できます。
マニュアルを作成する
マテハンの導入に合わせ、業務マニュアルを新たに作り直しましょう。従前とは異なる作業プロセスとなるため、あらかじめ一定の手順やルールを設けておかなければ、混乱を招くおそれがあるためです。導入時はもちろん、運用中の改正ポイントも正確に反映し、業務に関わる全従業員に周知徹底してください。
倉庫のレイアウトを見直す
導入するマテハンの種類によっては、工場や倉庫の中を設備・機器の稼働の妨げにならないよう配置換えをしなければなりません。現場の作業員やマテハンの操作者、導線などに配慮してレイアウトを改善することで、無駄のない環境に改善できるでしょう。
サポート体制を整備する
マテハンにシステム障害などのトラブルが発生した場合を想定し、復旧までの体制をあらかじめ整えておくことが重要です。対策が不十分だと、万が一の事態への対応が遅れ、復旧までに大きな損害を被る危険性があります。土日や夜間など人の目が行き届きにくい時間帯も含め、どのようなサポートが受けられるのかを確認しておきましょう。
まとめ
これまで人の手で行ってきた物流関連の作業にマテハンを活用することで、業務効率アップとローコスト化が図れます。マテハンにはさまざまな種類があるため、目的や用途に応じて設備・機器を選定し、現場の環境を適切なレイアウトに見直したうえで取り入れましょう。また、トラブル発生時の稼働停止などのリスクヘッジとして、サポート体制を事前に整備しておくことも大切です。
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