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RICOH 製造業DX 実践ラボ

製造業の生産性向上に繋がるスマートデバイスの活用方法とは

デジタル化(DX推進)
作業工数の効率化
コスト削減
製造業の生産性向上に繋がるスマートデバイスの活用方法とは

コロナ禍以降の市場の動向や労働人口の減少など、製造業を取り巻く環境が変化しつつあります。それに伴って、生産性を高めることが従来に増して重要になってきています。

この記事では、製造業で生産性が低い場合の要因や、生産性を高める具体的な方法やメリットについて解説します。企業のご担当者様はぜひお読みください。

生産性とは

まずそもそも「生産性」とは、投入したリソースに対してどれぐらいのリターンが得られたかを示す指標のことです。
ここでいう「リソース」は、従業員数や労働時間、原料などのことです。同じく「リターン」は、製造業の場合、製品の生産量となります。

生産性は、次の式で求められます。

生産性=生産物(リターン)/投入資源(リソース)

式中の「投入資源(リソース)」に基準としたい資源を代入して、その資源の基準量当たりの生産性を算出します。
製造業の場合は生産量を従業員数や労働時間で割って、従業員1人当たりの生産性や労働時間当たりの生産性を算出するのが一般的です。

生産性とは

生産性向上とは

そして「生産性向上」とは、少ない資源を有効活用して最大の成果が出せるよう業務を改善することを指します。

上記の「生産性=生産物/投入資源」の式で考えるなら、生産物を増やすか投入資源を少なくすることで生産性が高まることになります。つまり生産性向上とは、次のいずれかを実現することであると言い換えられます。

●より少ない人数、あるいはより短い時間で同じ量の製品を生産すること
●同じ人数・時間で今までより多くの製品を生産すること

ごく単純化すれば、それまでよりも効率よく製品を生産できるようになるということです。

生産性向上の重要性

生産性の向上は、製造業にとって重要性を増しています。とくに大きな理由となっているのは労働人口の減少です。

現在日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少しています。たとえば総務省の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果」によると、2022年の「労働力人口」は前年比マイナス5万人となっています。さらに内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によれば、生産年齢人口(15~64歳)は2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれています。

労働人口も、生産性を左右する資源ですが、現在はそれが減少しつつあるのです。現状を維持するためには、生産性を向上させて少ない人数で同じ成果を上げる必要があります。

生産性向上とは

生産性が低い要因

次に、生産性が低い要因についてまとめます。いくつかある理由の概略を解説します。

【生産性が低い要因】

●人材が不足している
└人材不足は労働環境を悪化させます。退職者が増えると現場は現状維持で精一杯になっていくでしょう。また人の入れ替わりが激しくなると、未熟な従業員の割合が高まります。

●アナログ作業が多い
└紙ベースの業務や手作業が多いと、作業に時間や手間がかかってしまいます。

●長時間労働が一般的な考えになってしまっている
└「時間内に終わらなくても残業すればよい」「皆が残業しているので自分も残業する」という考えが浸透していると、必要以上に作業に時間がかかっています。

●従業員の適正評価がされずに意欲が低下している
└年功序列による評価方法の場合、若くて有能な社員ほど評価と功績が一致しなくなりモチベーションが下がってしまいます。

生産性を高めるには、これらの要因を排除しなくてはなりません。

生産性が低い要因

生産性向上を図る方法

生産性の低い要因を取り除き、生産性向上を図る方法としては次の5つが挙げられます。

●IT技術を導入する
●設備を新しいものに切り替える
●生産工程を改善する
●5Sを意識した現場整理を行う
●人材育成に力を入れる

上記5点は、不要なことをカットして自動化・省力化できる技術や仕組みを導入し、それを継続させるため教育するという一連の流れを具体化する方法だといえます。それぞれについて順に見ていきましょう。

IT技術(スマートデバイスなど)を導入する

人間が行う必要のない作業は、IT技術を活用したツールや機械を導入して効率化することができます。

とくに大量の単純作業は、IT技術の活用により大きく省力化でき生産性を向上させることが可能です。日々行わなければならないこと、作業量が膨大なことはIT技術の導入が効果的です。

そのほかIT技術は、可視化できていない全体像を把握することにも役立ちます。

企業におけるIT技術の活用として、近年注目を集めているのがIoTとDXです。それぞれについて概略を解説します。

IoT

「IoT(アイオーティー)」とは「Internet of Things(インターネットオブシングス)」の略で、モノとインターネットを融合させた技術のことをいいます。日本語では「モノのインターネット」と訳されますが、IoTと呼ぶ方が一般的です。

日常生活ではスマート家電やウェアラブルデバイスなどが該当しますが、製造業では製造機器同士をインターネットで接続した「スマート工場」などの例があります。

製造業ではIoTとしてさまざまな設備をインターネットで接続することで、生産状況の可視化や在庫管理・品質管理に活用できます。作業が自動化され生産性が向上するほか、課題の発見と解決による生産性向上にも繋がります。

DX

「DX」は「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、デジタル技術によって業務の改善や新しいビジネスの創出を行い、それらによる変革を目指すことを指します。「高級」「豪華」の「DX」とは違うため、読み方は「デラックス」ではなく「ディーエックス」です。

日本企業のDXが急務とされていますが、その理由の1つが生産性の向上です。
DXにより単純作業や複雑な計算などが自動化でき、従業員はコア業務や創造的な業務に集中できるようになります。その結果、生産性を向上させることに繋がります。

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設備を新しいものに切り替える

設備を新しいものに切り替えることも、生産性を向上させるのに有効です。新しい設備は古い設備より性能が高まっており、高速化・精度の向上・高い操作性などが実現できます。そのため新しい設備を導入することで生産力アップ、生産性向上が可能になります。

既存と同じ種類の設備をグレードアップすることでも、生産性の向上は可能です。しかしそれよりも、ロボットによる自動化を導入したりIoT・DXに繋がる設備に置き換えたりした方が、さらに高い効果が得られます。
せっかく設備を切り替えるのなら、将来的な競争力を高めるためにも先行投資としてデジタル化を進めたいところです。

生産工程を改善する

生産工程を見直してみると、生産効率をアップさせる糸口が見つかる場合もあります。
ムダな作業が加わっている場合、それを排除するように工程を改善すると生産性が向上します。ムダな作業の例としては、品質に無関係な人の移動がある、設備を切り替えるときに無意味な工程が発生している、道具を持ち替えるなどがあります。

工程の手順を変えるだけでは改善が難しい、あるいは手順だけを変えるのが難しい場合は、レイアウトの変更なども同時に行うと無理なく改善できる場合があります。

5Sを意識した現場整理を行う

5Sを意識した現場整理を行うことでも生産性が向上します。
5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つのことです。5Sを徹底することで、単なる片付けや掃除にとどまらず作業の効率化が期待できます。

5Sを意識して現場整理を行うと、ムダなものがなくなりモノや作業場の配置が最適化されて作業の効率化が可能になります。たとえば整理整頓がしっかりできていれば、モノを探すなどのムダな作業がなくなるでしょう。それは生産性の向上に繋がります。

さらには作業の標準化もしやすくなり、製品の品質のバラつきを減らすこともできます。検査の時間なども短縮でき、そういった面からも生産性が向上すると言えるでしょう。

人材育成に力を入れる

人材育成を行うことでも生産性は向上します。
機械に頼れない作業は人間が行わなくてはなりません。そのような、人間でないとできない作業のスキルを高めることが生産性向上には大切です。人材育成を行って個々人のスキルと知識がアップすれば、作業の効率がよくなったり作業品質が高まったりします。製造や検査の時間が短縮され、生産性の向上に繋がります。

また生産性向上をもたらすIoTやDX化を進めるためには、教育によってITなどの知識を習得させることが必須です。そもそも、効率化に取り組む必要性を教育で理解させることも大切です。このように、人材育成は生産性向上に不可欠だといえます。

生産性が低い要因

生産性が向上することで得られるメリット

生産性を向上させると、以下のようなメリットを得ることができます。

●利益率の向上に繋がる
●品質の向上に繋がる
●コストの削減に繋がる

それぞれについて解説していきます。

利益率の向上に繋がる

生産性が高まると、利益率も高まることになります。

生産性が向上すると、同じリソースでより多くの成果を得られるようになります。リソースの中には時間も含まれます。
つまり生産性が高い状態では、同じ労働時間内により多くの製品を製造できるようになるということです。その結果として人件費や電気代などのコストが下がり、利益率が向上するということになります。

品質の向上に繋がる

生産性が向上すると、品質の向上も期待できます。
生産性が高まると、1人当たりの労働負担の軽減に繋がります。それにより集中して作業を行うことが可能となり、品質の向上が期待できるのです。

そのほか、生産性向上のための施策が品質向上に繋がることも多くあります。
たとえばIT技術の導入は、ヒューマンエラーの予防と品質の安定化に繋がります。また作業の標準化・マニュアル化も生産性向上の施策の1つですが、それによっても品質の向上が見込めます。

コストの削減に繋がる

生産性が向上するとコストダウンにも繋がります。
生産性が高まっている状態というのは、言い換えれば少ないリソースで同じ成果を上げることが可能な状態です。生産性が高い状態では、それまでと同じ量の製品をより短い時間で生産することができるようになります。そのため残業代・電気代などのコストが削減できるのです。

これは、製品の累積生産量が増えるにしたがって製造コストが下がるという「経験曲線」の考えにも合致します。生産性の向上にはノウハウの蓄積やPDCAが必要で、それを行う間に経験も増え累積生産量も増えているからです。ただしどの程度コストが下がるかは製品の種類によってまちまちです。

生産性が向上することで得られるメリット

スマートデバイスの活用方法

スマートデバイスの活用は製造業の生産性向上には、欠かすことができないもので、データの収集や共有を効率化し、生産性の向上に大いに貢献します。
活用方法は以下の3つが考えられます。

1. 情報収集

生産現場のデータをリアルタイムで収集することにより、生産ラインの稼働状況や品質データなど、重要な情報を素早く把握することができ、デバイスに搭載されたセンサーが異常を検知し、即座に対応することもできます。

2. データの共有

生産ラインの各工程で得られたデータが、適切なアプリケーションを通じてリアルタイムで共有され、関係者が必要な情報にアクセスできるようになります。これにより、意思決定のスピードが向上し、生産効率も向上します。

3. 開発の効率化

スマートデバイスを活用することで、開発の効率化も図れます。デバイス上で設計図やマニュアルを閲覧することができれば、作業者は手元に必要な情報を常に持ちながら作業できます。これにより、作業のミスを減らし、生産性を向上させることができます。

まとめ

生産性の向上は、とくに製造業の企業にとって、生き残りにかかわる非常に重要な問題です。まずは自社の現状を客観的に把握することが必要です。そのうえで、工程の見直しや新しい設備の導入など、自社の問題を解決できる方法で対処しましょう。

将来的なことを考えると、国際的な競争力を維持するためにはテクノロジーの活用が必須となっていきます。現状のブラッシュアップが優先されがちですが、先行投資としてデジタル機器を導入することはゆくゆく大きなメリットを生みます。前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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