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RICOH 製造業DX 実践ラボ

製造業者が知るべきAIの最新動向と技術

デジタル化(DX推進)
品質改善
製造現場の見える化

ディープラーニングや生成AIなどの登場によって、AIの社会実装が加速しています。「AIを活用しない企業は勝ち残れない」というような表現はかなり誇大ですが、それでも今後、AIをいかに活用するかが製造業を含めた企業の競争力を左右することは、確実だと考えられます。

本稿ではAI活用の基礎知識としてAIの歴史や最新技術を概観した後、今製造業が知るべきAI技術について解説します。製造業におけるAI活用をご検討中のご担当者様はぜひ参考にしてください。

AIの歴史

AI(人工知能)とは、人間の脳をまねて人と同じように認識や判断、推論、学習などを行うことができるコンピューターシステム、またはその技術のこと。現在さまざまな分野で活用が進みつつあるAIですがその歴史は古く1950年代に遡ります。AIの黎明期から現在まで、その歴史を少しだけ振り返ってみると次のようになります。

AIの誕生 1950年から1960年頃

AIの概念を提唱したのは1950年のイギリス出身の数学者アラン・チューリングが最初だったと言われています。同氏の論文『計算する機械と知性』の中で、「機械は考えることができるか?」という疑問に対する思考実験「チューリングテスト」を行いました。AIという言葉は1956年にアメリカの数学者ジョン・マッカーシーによって名付けられました。

第1次AIブーム 1960年~1974年頃

1960年代はコンピューターの黎明期にも当たりコンピューターを使ったさまざまな分野の研究・開発が行われました。推論や探索の方法に関しての研究も盛んに行われるようになり、第一次AIブームとなります。人間の思考過程を記号表現を用いて模倣していく方法や、迷路探索など選択肢をパターン分けしながら回答を見つける方法などが研究されました。

冬の時代 1974年~1980年頃

AIに対する期待が高まるものの、当時は精度がそれほど高くなく、社会実装までにはまだまだ大きな壁がありました。そのため徐々に注目されなくなりAIにとって冬の時代が訪れました。

第2次AIブーム 1980年~1987年頃

1980年前後から、入力情報を基にして特定の問題に対してプログラムが推論を実施し、問題解決に導くエキスパートシステムが開発され始めました。さまざまな領域で導入され、ECサイトなどでの「レコメンド機能」もこのエキスパートシステムの一種です。

再び冬の時代 1987年~1993年頃

エキスパートシステムは、必要な知識をコンピューターシステムに入力していく労力が非常に大きいという問題がありました。また、例外処理や矛盾した処理など、現実に発生する事象に対応するのが難しいなど、実用化に対する課題が明らかになるにつれてブームも徐々に冷めていきました。

第3次AIブーム 1993年頃~現在

「機械学習」や「ビッグデータ」、「ディープラーニング」などを活用することで、AIはさまざまな領域での実用化が進み、3度目のAIブームが到来します。

AI活用を支える最新技術

続いて、現在のAI活用を支える3つの技術について簡単に解説しておきましょう。

機械学習

機械学習(マシンラーニングとも言う)は、コンピューター自身が大量のデータの中からルールを学習していく技術です。エキスパートシステムなどで必要だった準備のための入力作業が不要になり、さらに推論などの精度も向上してきたことから、AIの実用化に大きく貢献しました。特に画像認識や将来予測などの分野で活用されています。

ディープラーニング

機械学習の手法の1つで、より人に近い「人工ニューラルネットワーク」を構築する方法です。一般的な機械学習では、学習結果が間違っている場合には、「間違っていること」を人が機械に教える必要がありました。ディープラーニングでは、自分が出した回答の正確性を自ら判断することができ、その点機械学習の進化系だと言えるかもしれません。

生成AI

生成AIとは、新たな文章や画像、プログラムコードなどを生み出すことができるAIの総称です。一般的に、ディープラーニングを用いて膨大なデータを学習してAIモデルを構築。それを基にしてさまざまなコンテンツを生成する仕組みです。判断や予測だけではなく、文字や画像などのコンテンツを直接作成できるため、従来のAIよりも活用領域がさらに広がっています。ブームの火付け役となった「ChatGPT」を始め、現在さまざまな組織が生成AIを開発・提供しており、主導権争いが繰り広げられています。

製造業が知るべきAI技術-その1「外観検査・不良品選別」

ここからは、製造業に特に重要なAI技術について紹介していきましょう。1つ目の「外観検査・不良品選別」は、ディープラーニングなどを活用して、予め大量の製品画像データからAIが不良品と良品の特徴を学習。AI自らが良品/不良品判定を行うものです。AIを活用することで従来の目検やセンサーなどでの検査と比較して、検査精度や速度の向上などが期待できます。また省人化が可能なため、人件費削減や人手不足解消にも効果があります。

傷や打痕、欠けやバリ、汚れや色むらなどさまざまな状態が検出可能ですが、事前に学習用の製品画像データが大量に必要であったり、外観が変化するものや透明・半透明なものの判別が苦手だったりするなどの課題があります。

製造業が知るべきAI技術-その2「予知保全・異常検知」

AIによる「予知保全・異常検知」では、センサーやPLCなどで取得した電流や温度、振動数などの製造設備のデータを基に、AIを使って異常や故障を予知し、故障を未然に防ぐなど適切な対応を採ることができます。AIが、通常の状態から乖離した外れ値や、急激なパターン変化を示す変化点、また時系列で見た際の異常部位検出などの方法を組み合わせて異常を検知します。

AIによる予知保全・異常検知によって、装置異常を事前に防ぐことができ、生産ラインの停止が防げたり、設備メンテナンスの工数やコストが抑えられたりするメリットがあります。また、メンテナンス工程が簡便になることで、熟練工不足や人手不足に対する対応策としても有効です。

製造業が知るべきAI技術-その3「異音検査・官能検査」

AIによる異音検査・官能検査は、ディープラーニングを活用した画像検査の1つです。対象の音声データを画像に変換し、それを基にディープラーニングを活用して学習・解析して不良発生時や不良箇所の特定を可能にします。AIに学習させることができれば、高い精度での不良箇所検出が可能で、従来のような検査員による検査品質のばらつきも生じません。検査基準が標準化されるとともに、検査工数も効率化できます。自動車や船舶などの稼働音の官能検査や工場内設備の予兆保全、橋梁やトンネルなどのインフラ設備の点検作業など、さまざまな点検・保全業務に活用されつつあります。

製造業が知るべきAI技術-その4「品質管理・品質予測」

「品質管理」には、作業品質を上げて標準化することで品質を安定・向上させる「工程管理」や、しかるべき工程で製品品質が基準を満たしているかをチェックする「品質保証」、不良品や品質低下が発生した場合にその原因を追究し対策を講じる「品質改善」などがあります。これらの作業にAIを活用することができます。また、原材料や生産設備などの過去の情報と製品品質データの関係性をAIに学習させることで、製品品質を予測する技術も実用化されています。

AIによる品質管理・品質予測で、人の力では難しい精度とスピードで品質判定が可能になります。その結果、品質が安定・向上し、品質管理業務における省人化も可能になります。製品の画像や動作音をAIが解析して不良品を発見したり、製造装置の動作データから動作不良を発見して不良品の発生を抑えたりするなど、さまざまな工程でAIによる品質管理・品質予測が活用されています。

AIによる製造業DXを推進、リコーの工程改善支援「生産プロセスデータ活用AIサービス」

リコーでは、自社のトナー生産現場において製造工程のデータ(生産プロセスデータ)の積極的活用を推進してきました。多量で複雑なデータを分析・活用するためにAIを導入。トナーの品質予測や品質改善ができるシステムを構築し、大きな成果を上げてきました。そのようなAI導入事例に基づいたノウハウをコンサルティングサービスとして提供することで、製造業DXを推進する企業様のAI導入を支援しています。

具体的に提供しているのが「AIによる異常検知」と「AIによる品質予測及び品質向上」。AIによる異常検知は、熟練のノウハウが必要な異常検知をAIが代替。生産プロセスデータをAIが解析することで工程監視工数を低減させ、同時に異常の早期発見を可能にするものです。AIによる品質予測及び品質向上は、生産プロセスデータをAIによって解析・活用して最終品質を予測。中間工程の設備稼働を自動制御することで品質のばらつきを抑えることができるものです。

リコーの生産プロセスデータ活用AIサービスの詳細は、ぜひ下記よりご覧ください。

生産プロセスデータ活用AI | リコー

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