近年、海外で定着しているフレキシブルワークが日本にも浸透しつつあるというニュースを耳にしたことがあると思います。フレキシブルワークとは、従業員が時間や場所を柔軟に選んで働くワークスタイルを指します。近年の多様な働き方の推進を背景に導入が進められています。
そこで今回は、フレキシブルワークの概要や種類別のメリットとデメリット、フレキシブルワークに対応するワークスペース、フレキシブルワークを効率化するオフィスの作り方などを事例を通じてご紹介します。
フレキシブルワークの概要と推進されている背景をご紹介します。
フレキシブルワークとは、「フレキシブル=柔軟性がある、融通がきく」働き方を指します。具体的には、従業員が自ら働く場所や時間を選択して働き、業務効率や生産性向上を目指す取り組みです。働き方の中には休暇の自由度を高めるといった意味合いも含んでいます。
働き方改革やコロナ禍によるテレワークの普及などを背景に導入が進んでいます。
また近年は、ICT技術の急速な発展や、高齢化や女性の社会進出の推進等が進み、朝9時から夕方5時まで働くといった従来の固定的な働き方が見直されています。個人の業務内容や職種、ワークライフバランスや希望のキャリアなどを加味したワークスタイルが採用されています。
フレキシブルワークは、特に海外で浸透しており、OECDおよび世界銀行の分類における高所得国に属する主要先進国(英国、フランス、ドイツ、オランダ、米国等)が挙げられます。
例えば英国では、フレキシブルワークを国を挙げて浸透させる取り組みが行われています。母親はもちろん父親も含めた育児休暇、出産給付の導入など幅広い対策がとられています。
日本でもフレキシブルワークは導入されていますが、海外の積極的な取り組みと比べれば、遅れているといわれています。しかし今後は国際的な影響も受け、さらに活発化していくことでしょう。
フレキシブルワークの具体策と、それぞれの企業の立場におけるメリット・デメリットをご紹介します。
フレックスタイム制とは、必ず勤務する時間帯としてコアタイムを設定し、それ以外の時間は自由に働くことができる制度です。例えばコアタイムを11時から15時に設定しておき、その4時間は必ず出勤するものの、他の時間は自由に出勤退勤が可能な仕組みです。
日本におけるフレックスタイム制の導入状況を見ると、厚生労働省の調査では、フレックスタイム制の導入企業割合は8.3%、労働者ベースでは11.1%が制度の適用を受けています。現時点では労働者全体の一部に限られていますが、柔軟な働き方への関心の高まりとともに、今後は活用が広がる可能性も考えられます。
似た制度に「スーパーフレックスタイム制」があります。これはフレックスタイム制のコアタイムを設けない制度です。従業員が自ら働く時間帯まで設定します。
メリット:勤務時間の自由な設定が可能であるため、ワークライフバランスの実現や、残業時間の削減などが見込めます。人材確保や離職率の低減なども期待できます。各人の工夫により無駄な稼働時間を減らすことで、業務効率化も実現するでしょう。
デメリット:労務管理の複雑化や、社内コミュニケーションの希薄化、顧客対応の困難さなどに課題があります。
テレワークとは、従業員の自宅やシェアオフィス、コアワーキングスペースなど会社以外の場所で業務を行う手法です。
総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、令和6年通信利用動向調査時点で、テレワークを導入している企業の割合は47.3%となっています。コロナ禍以降は減少傾向にあるものの、一定の水準を維持しています。
メリット:ワークライフバランスが取りやすく、通勤時間の削減、心身の健康維持や仕事へ集中しやすい環境などから生産性向上が見込めます。
デメリット:社内コミュニケーション不足や顧客や取引先等との対応の困難さ、チームでの仕事のしにくさなどが挙げられます。
時短勤務とは、規定の標準的な勤務時間よりも、短い時間内で働く制度です。例えば1日8時間労働のところ6時間労働にするなどが挙げられます。
メリット:産休や育児休暇などに利用されることが多く、キャリアを中断せず、ワークライフバランスを実現しやすい点です。
デメリット:フルタイムの従業員と時短勤務の従業員の調整が難しくなることがあります。また、チームで仕事をする場合は特に引き継ぎ等が発生するため、うまくやる必要があるでしょう。
シフト制とは、働く曜日や時間帯を勤務シフトによって管理する制度です。シフト制には従業員が希望のシフトを申告する方法のほか、企業側が計画的に人員配置を行い、シフトを振り分ける方法などが挙げられます。
メリット:従業員がそれぞれのライフスタイルに合わせて働きやすくなることや、通勤ラッシュを避けられることなどがあります。
デメリット:急な休暇や連休を取りにくいことなどがあり、限られた従業員にしか適用できない場合もあります。また、管理側としてシフト調整の手間がかかります。
ジョブシェアリングとは、本来、フルタイムの従業員一人が行う職務や業務を、複数の従業員が分担して行う働き方です。例えば、1人が週3回、同じ業務を行うために出社し、残りの2日は別の1人が引き継いで行います。
メリット:1人分の仕事を2人以上で行うことから、1人当たりの労働時間が短くなります。そのため、育児や介護等のプライベートの時間を確保できる働き方になります。1人にかかるストレスが軽減されます。
デメリット:従業員にとって賃金が減少したり、評価が公平でなくなるといった問題があるため、企業側としてはそれらの不満が挙がった場合に検討し、制度面の調整が必要になります。
時差出勤とは、一定の勤務時間の範囲の中で出退勤の時間を選べる働き方を指します。例えば、休憩時間を含めて、9時間拘束(実働8時間)される場合、一般的には9時から17時までが定時ですが、10時から18時、11時から19時といったように出退勤時間をずらします。
メリット:従業員にとって時差出勤は、朝の通勤ラッシュを避けられるため、通勤ストレスが大きく軽減します。また、育児中の従業員は子どもを朝に保育園を幼稚園に預けてから出勤するといったことも可能です。企業にとっては、柔軟な働き方を実現できるので、離職率低下や生産性向上につながるでしょう。
デメリット:一方で、時差出勤の従業員が増えると、組織としての一体感が損なわれることがあります。一斉に出社して一斉に退社するのと比べれば、各自バラバラになるため、組織の結束やコミュニケーションの面で懸念があります。
また管理面では、全従業員が同じ時間帯に出勤している必要がある場合は、時間の調整が必要になることがあります。
労働時間貯蓄制度とは、ドイツ発祥の制度で、労働時間の銀行口座を想定して作り、その口座に時間外労働の時間を貯蓄できる制度です。貯蓄した分は、後日休暇などに転換することができます。
日本では、時間外労働時間は割増賃金が支給されるのが一般的ですが、労働時間貯蓄制度では、休暇で相殺する考え方となります。ただし、日本の労働基準法では時間外労働に対する賃金支払いが原則義務付けられており、単純な残業代と休暇の完全な相殺は法的に認められていません。そのため、日本で導入する場合には、労使協定に基づく代替休暇制度や、フレックスタイム制、変形労働時間制の枠組みを活用するなど、関係法令に則した慎重な制度設計が必要です。
メリット:従業員が時間外労働を行う日があっても、その分を後日休暇に転換できるため、ワークライフバランスを保ちやすくなります。また、繁忙期や閑散期といった業務量の変化にも柔軟に対応できます。
デメリット:従業員自ら労働時間を管理する必要があるため、不慣れな場合は企業側の手厚いサポートが必要になります。また、同じ職場の関係者を気にして長期休暇が取りづらいといった心理的な課題も生まれます。さらに前述の通り、日本の労働関連法規との兼ね合いから制度設計のハードルが高く、導入・運用には専門的な知見が求められるでしょう。
サバティカル休暇とは、主にヨーロッパで普及している制度です。在職期間が長い従業員に特別に与えられる長期休暇の制度です。
この制度が導入された背景には、米国の影響がありますが、近年、日本では働き方改革やワークライフバランスなどが重要視され、これまでの長期休暇を取りにくい状況を見直す必要が出てきました。単に休息をとるだけの長期休暇ではなく、1年単位で休暇を取り、自ら留学やキャリアアップ、自己成長のための取り組みを行うために充てることも可能です。
メリット:自己成長や新たな知識や経験を積む機会として、またリフレッシュのためなど、従業員の成長や刷新が期待できます。また休職や退職を予防することができるでしょう。
デメリット:サバティカル休暇は基本的に有給休暇ではないため、収入が減ります。そのため、賃金の保証がないという意味で休暇が取得されにくく、利用されないケースもあります。また長期休暇は、数ヶ月から1年など長期に渡って取得することもあるため、代わりに業務を行う従業員を探さなければならないデメリットもあります。
フレキシブルワークに対応する主なワークスペースの例を紹介します。
サテライトオフィスとは、本社や支社とは異なる離れた場所に設置されたオフィスのことを指します。支社や営業所といった他の拠点は業務や事業の観点から、設置されたオフィスですが、サテライトオフィスは、従業員のフレキシブルワークを実現するオフィスの一つです。
サテライトオフィスは様々な用途で利用されています。例えば、育児や出産を経験する際には、本社から距離のある場所に住んでいる場合に、通勤しにくいことがありますが、自宅から比較的近い場所にあるサテライトオフィスを利用すれば通勤しやすくなり、継続して働き続けることができます。
また外回りの営業担当者が、遠方の本社に帰社せず、自宅近くのサテライトオフィスに帰社して業務を終えるといった使い方もできます。
いずれにしても、ワークライフバランスを保てる自社が独自に運用するオフィスの一つです。
シェアオフィスとは、オフィスの運営事業者が運営するオフィスで、複数の企業がシェアして使うオフィスです。つまり、自社が独自で用意するオフィスではなく、シェアオフィスへサービス料を払って利用する形態です。
企業にとっては、独自にオフィスを新設・運用する必要がないため、費用を抑えて利用することができます。また、不要になれば契約を終了し、手放すことが可能です。シェアオフィスの中には法人登記や住所利用が可能な場合もあるため、自社の一拠点として備えることができます。
従業員の自宅から近い場所のシェアオフィスを利用すれば、通勤しやすく、ワークライフバランスを保つことができます。一方で、他者とシェアしながらスペースを利用するため、情報漏洩の懸念や、実施できる業務の範囲が限られるといったデメリットがあります。
コワーキングスペースとは、シェアオフィスと同様に、他社が運営するオフィスのスペースの一部を借りて利用する形態です。シェアオフィスとの違いは、「共創」に重点が置かれているかどうかにあります。
コワーキングスペースでは、他社の従業員や個人事業主、起業家など様々なバックグラウンドを持つ人々が同時に働きます。各自の業務を行うのはもちろんのこと、交流をしながら様々なイノベーションを生み出したり、コミュニティを形成したりすることに重点が置かれています。
シェアオフィスと同様に、セキュリティや業務範囲の面でデメリットがありますが、自社のオフィスでは得られない交流と新規ビジネスの機会が生まれる可能性があるメリットがあります。
在宅勤務もフレキシブルワークの一つとなるため、自宅もワークスペースの一つです。在宅勤務が浸透した後、自宅にあえてワークスペースを作る従業員が増えました。パソコンを置いて作業するデスクやチェアの設置はもちろんのこと、Web会議の必要性がある場合は、プライベートな空間を確保し、生活音の遮断や情報漏洩の対策などの工夫が求められます。
フレキシブルワークは、ワークライフバランスを保ち、従業員が働きやすい環境を作ると同時に、企業側としては生産性を落とすことなく、業務効率化を進める必要があります。
そこで、フレキシブルワークのワークスペースを自社のオフィスに創設するアイデアをご紹介します。
フレキシブルワークスペースは、シェアオフィスやコワーキングスペースのように他社のオフィススペースを利用することもできますが、柔軟性や業務を安心して情報漏洩なく進めるためには、自社で創設したオフィスで進めるのが良いでしょう。
新たにフレキシブルワークスペースを用意する場合、内装デザインや家具、設備をワークスタイルに合わせて作ることができるメリットもあります。
フレキシブルワークスペースを自ら創設するには、サテライトオフィスを構えることが一般的です。
設置する場所は、既にある自社の支社や営業所等をサテライトオフィスとする、従業員の自宅近くの郊外に設置する、地方に新たに設置するなどの選択肢があります。
またオフィスは賃貸契約するほか、新設する選択肢もあります。
いずれの場合も、まずは自社のサテライトオフィスの設置目的を明確にし、利用する従業員の人数を満たすかどうか、生産性は向上するのかなどを十分に検討してから進めましょう。
リコーでは、2018年4月から在宅もしくはサテライトオフィスで勤務が可能なリモートワーク制度を導入しています。
サテライトオフィスは各事業所に設置しています。従来の事業所に社内サテライトオフィスを新設し、ノートパソコン用の電源などを整備しました。また電源を設けた席を10倍以上に増やしました。
2019年度からは外部サテライトオフィスの利用を開始しています。外部からはVPN(仮想ネットワーク)によって社内のネットワークに接続する仕組みにし、セキュリティ対策を強化しています。
これらの環境を整備し、サテライトオフィスで終日勤務をすることも可能にしており、個人のワークとライフのバランスに応じて、働く場所を選択できるようにしています。
リコーの従業員へのアンケート調査では、リモートワークにより通勤ストレスの軽減や業務への集中といった効果を実感する声が多く挙がっています。
フレキシブルワークは、現代の多様な働き方を促進するために重要なワークスタイルの一つです。さまざまな制度がある中で、自社にとって最適な手法を選択することが、何よりも最優先すべきでしょう。また、サテライトオフィスなどのフレキシブルワークスペースを自ら設置してフレキシブルワークを推進することも有効です。
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