ハイブリッドワークなどの新しいワークスタイルの定着や、複数の拠点で従業員が分散して働く新時代のオフィス運用が浸透することを受け、BCP対策も対応する必要が生まれています。
新時代のオフィスにおけるBCP対策には、どのような具体的な対策やポイントがあるのでしょうか。
今回は、オフィスのBCP対策の必要性からBCP視点による新時代のオフィスの作り方、オフィス内で実施すべき具体的なBCP対策、オフィスビルの選び方、サテライトオフィスなどのオフィスそのもので備える方法、参考になる事例までご紹介します。
オフィスのBCP対策の必要性をご紹介します。
BCPとは、「Business Continuity Plan/事業継続計画」の略称で、企業が自然災害や大火災、パンデミック、テロ攻撃などの緊急事態に直面した際に、事業資産の損害を最小限に留めながら、中核となる事業の継続と復旧を早期に可能とするために、平時に行う備えとなる活動や、緊急時における事業継続・復旧のための方法や手段などの計画を指します。
企業が取り組むべきBCPの項目として、中小企業庁は次のものを挙げています。
災害対応計画や従業員育成、初期救急等、人的資源を守るための取り組み。
オフィスビルや工場の耐震性や設備の保護性、周辺の地震や風水害のリスクなど、モノの物的資源を守るための取り組み。
事業中断の損失や保険、災害対策や復旧のための融資制度、事業運転資金に相当するキャッシュフローの把握など、金銭的な物的資源を守るための取り組み。
データのバックアップや、顧客や各種公共機関の連絡先などの緊急連絡網、ITシステムの故障等の代替方法などの検討等、情報の物的資源を守るための取り組み。
事業活動のうち優先的に継続、復旧すべきものの把握や対策、社長が不在の場合の代わりの者の準備、取引先や同業者との相互支援など体制作りの取り組み。
BCPで対応すべき項目は前述の通り複数ありますが、その中でもオフィスを中心としたBCP対策では、オフィスビルの選定やオフィス環境の作り方、オフィスで働く人々の防災意識の向上などが考えられます。
BCP対策は、事業継続と従業員の安全を守るために必要ですが、できるだけ早期に復旧と対策をスムーズに行うために、万全の準備を行うことが大切です。また近年は、大震災が頻発しており、台風による水害リスクも増加しているため、常に災害のリスクがあります。また、先般の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックのように感染症リスクも検討しなければなりません。
オフィスは特に従業員が働く場所であると共に、事業活動の中心拠点となるため、十分な対策が求められます。
また近年は、在宅勤務やサテライトオフィスなど、オフィス以外の場所で働く従業員も存在します。またフリーアドレスやABW*など新しいワークスタイルに対応したオフィスレイアウトが採用されています。このことから新時代のオフィスに対応するBCP対策に対応する必要が出てきています。
新時代のオフィスを作る際には、次のようなBCP視点も盛り込むと良いでしょう。
オフィスを設計する段階で、業務の支障のない動線を設けることは必要ですが、合わせて避難のための通路幅を確保することも意識する必要があります。従来の固定席のデスクレイアウトとは異なり、個性的なレイアウトのオフィスも増えていることから、スペースごとに検討する必要があります。
オフィス作りにおいては、法律上で必要な防災設備というものがあります。煙感知器や熱感知器、スプリンクラー、非常用放送設備、非常用照明器具、消火器、屋内消火栓が挙げられます。新しいオフィスであっても、これらの内装工事について検討しておく必要があります。
新時代のオフィスでは、固定席を設けないフリーアドレス制が採用されることがありますが、その場合、スペースを広くできる場合があります。これは防災対策に有利といえます。
なぜならモノが周囲に少ないため、例えば地震の揺れを感じたときに、安全を確保するために避難するスペースとしての活用もできるからです。業務だけでなく防災という観点のスペース設計も意識しましょう。
パンデミックのように、感染症が蔓延することもあります。その場合、従業員同士の距離を確保できるように、座席の間隔を2メートル以上設ける、パーティションを設置して飛沫対策を行うなどが考えられます。また、自動で開閉する扉や認証システムなどの非接触環境を導入することも有効です。
大震災等が生じた際には、混乱をきたしますが、そのようなときこそ盗難や不正侵入のリスクが高まります。あらかじめセキュリティレベル別のゾーニング*を実施しておき、災害や緊急時に強固なセキュリティにより部外者の不正侵入が困難な環境を作っておくことが有効です。
重要な機密情報を取り扱う際には、高いセキュリティと利便性を両立できる顔認証システムを設置するなども有効です。
新しいワークスタイルなどを反映したオフィスでは、どのようなBCP対策ができるのか、具体的な方法を見ていきましょう。
新しいワークスタイルが反映されたオフィスであっても、家具や什器の転倒防止策は欠かせません。転倒防止のために床や壁へ固定することが基本です。一方で、近年は賃貸オフィスも多いことから、その場合は伸縮棒を使って固定したり、重量のある複合機などにはアジャスター(すべり止め)などを活用したりしましょう。
事業継続に必要なデータのバックアップは、データ活用が欠かせない今の時代に重要な取り組みです。物理的にデータのコピーを作って保管しておくほか、近年はクラウド環境を活用し、蓄積しておくのも有効です。クラウドバックアップは、自動バックアップ機能が付いていることもあるため、手間がかからずにバックアップができるのも利用が進んでいる理由です。
近年はリモートワークが浸透していますが、BCP対策としても有効視されています。万が一、非常事態で出社できない状況になったとしても、在宅勤務により事業を継続することができるためです。また、従業員の安全を確保することもできます。
オフィスの避難経路を確保しておくことは新時代においても重要です。特にリモートワークも含めたハイブリッドワークが浸透する中でオフィスの利用頻度が下がり、日常的な管理が行き届かなくなるケースが想定されます。その結果、書類や荷物が一時的に置かれたままになり避難経路が塞がれ、緊急時に避難できない状況を作り出してしまう恐れがあります。
リモートワークが浸透する環境下では、災害時に社内に構築される災害対策本部をリモート化してアップデートすることが有効です。コミュニケーションツールのWeb会議システムやチャット・SNS、電話等を用いて緊急時でもスムーズにコミュニケーションを取ることができる体制作りや、訓練・教育などを行いましょう。
オフィス移転や新設時には、BCP対策も加味してオフィスビルを選定することも大切です。押さえておくべき主な選定基準をご紹介します。
耐震性能が高いオフィスビルを選ぶことは大前提といえます。重要なのは新耐震基準を満たしている1981年6月以降に建てられたビルに絞ることです。しかしそれ以前に建てられたビルであっても、新耐震基準を満たす改修を行っているケースもあるため、確認が必要です。
オフィスビルの地域のハザードマップを確認することが重要です。ハザードマップとは、近隣の地域でどのような自然災害リスクがあるかを可視化した地図です。市区町村ごとに作成されており、自然災害による被害を軽減し、防災に役立てることを目的としています。地図には、洪水や土砂災害などの被害想定区域のほか、避難場所や避難経路といった防災に関する情報が表示されています。
ハザードマップを確認し、洪水や浸水、土砂災害、地震による液状化、津波、高潮などのリスクを確認し、よりリスクの少ない立地を選びましょう。
ビルの管理者はどのような防災対策を行っているかを確認しましょう。ビル管理会社が緊急時の対策のマニュアルを作成しており、防災訓練の実施や、非常時の設備の定期点検などがしっかりと行われているか確認が必要です。また非常用の食品の備蓄や、水道停止時や停電時の体制なども確認しておきましょう。
建築基準法や消防法では、一定の用途・規模を満たしたビルについて、非常用発電設備などの非常用電源の設置および適切な点検・保守が義務付けられています。非常用発電設備があれば、災害時に電力供給が途絶えた場合に、消火栓やスプリンクラーといった消防設備や、エレベーター等への電力供給が可能です。
企業のBCP対策を意識した近年のビルの中には、テナント専有部に電力を供給するビルもあるため、非常用発電設備についての確認も大切になります。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの経験から、オフィスの空調性能が問われるようになりました。特に風量が弱い、空調が少なく換気が困難といったオフィスビルは感染症対策としては懸念があります。
そのため、空調性能の良いオフィスビルという観点も必要です。同時に省エネも実現する設備が整っているかどうかも新時代には重要といえます。
新時代においては、オフィスそのものでBCP対策を行うこともできます。
サテライトオフィスとは、企業が、本社などから離れた場所に設置するオフィスを指します。本社以外の場所で多様な働き方を推奨する企業が増える中、柔軟な働き方をサポートする役割を担います。
このサテライトオフィスを備えることは、BCP対策となります。
地震などの自然災害や感染症によるパンデミックといった緊急事態が都市部で起きた際に、都市部にある本社が影響を受け、事業が滞ってしまった際にも、地方や郊外にサテライトオフィスを備えておけば、事業継続が可能になります。
また機密情報や機器などの重要な資産が1カ所に集中してしまうと、破損や紛失などの影響が大きくなってしまいます。拠点を分散させることで、物理面、情報面のリスクを軽減することができます。
サテライトオフィスは「都市型、郊外型、地方型」といったさまざまな種類があります。状況に応じて検討しましょう。
都市部に本社を構える企業が設ける第二、第三のオフィスです。地方企業が都市部に営業所として設置することもあります。
都市部に本社がある場合、郊外の住宅地に近い場所にサテライトオフィスを設置することで、従業員の通勤時間の短縮やワークライフバランスの実現などが可能です。
都市部に本社を構える企業が地方にBCP対策として拠点を分散させる意味で設置します。万が一、都市部で大震災などが発生した際も、地方に本社と同様の機能を果たすサテライトオフィスがあることで、事業の継続が可能になります。
オフィスにおいてBCP対策を実施した事例をご紹介します。
ある水産企業は、BCP対策を強化する取り組みの一環としてポータブル蓄電池を導入しました。業務を行うには基幹業務システムが必要不可欠であり、非常用電源の確保は非常に重要です。定期的な停電時にはPCの操作と伝票出力ができない状況になることもありました。ポータブル蓄電池により、停電中でも伝票発行が可能になる上に、災害時の備えにもなっています。
ある自治体は、コワーキングスペースを開設し、新しい働き方を推進するために、様々な仕組みを導入しました。施設は利用者が事前に予約できるよう、施設予約システムを導入。またセキュリティを高めるために入退室管理システムを導入し、ICカードでの入退室を可能にしました。
無停電電源装置導入により非常時に稼働する仕組みも設けています。
またネットワークセキュリティ対策機器を導入したり、情報漏洩リスクを減らすために本人確認によるなりすましの予防やWi-Fiネットワークの不正利用防止等の対策も行い、セキュリティを高め、安心安全に利用できる環境も整えています。
リコージャパン福島支社は、東日本大震災でオフィスが被災した教訓を生かし、災害に強い社屋として新設したオフィスです。万が一のときには社員はもちろん、地域の人も利用できる避難所として機能しています。
オフィスには、災害用の食料などの備蓄や、スマートフォンなども充電できる折りたたみ式の太陽光パネルを備えています。 万が一、災害が起きた際には、家具を移動させ、地域住民100人ほどが避難所として立ち寄れるようなスペースを確保できるようにしています。
オフィスのBCP対策は、BCP対策全体においても重要な項目ですが、特に新時代のBCP対策においては、新たな脅威があることから、より一層、力を入れて対策を取る必要があります。
オフィスの移転やリニューアルの際やサテライトオフィスの新設などの際に、新たにオフィスを作る際にもBCPの視点を取り入れることは欠かせません。
BCPに考慮したオフィス作りに不安がある場合は、リコージャパンにお声掛けください。
リコージャパンでは多様化する経営環境に合わせ、デジタルサービスとワークプレイスを組み合わせた「RICOH Smart Huddle」のコンセプトのもと、働き方のリニューアルをサポートし、お客様をご支援いたします。
“新しい働き方”をお客様と一緒に考えながら、オフィス移転やリニューアルを、計画から理想の働き方が実行されるまで、ワンストップでご支援いたします。
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