新しい働き方を導入するときや、事業拡大に伴う人員増加、経営統合などさまざまな変化の際に検討することになるのが、社内ルールの策定です。社内ルールは日ごろの業務を効率化するだけでなく、コンプライアンス遵守やビジョン浸透、モチベーション向上などさまざまな役割があります。これから社内ルールを策定することを考え、失敗しない方法を知りたいとお考えかもしれません。
そこで今回は、社内ルールの概要や具体例、必要性のほか、メリット・デメリット、課題解決策、策定手順、運用ポイント、成功事例をご紹介します。
まず、社内ルールの概要と具体例、必要性を解説します。
社内ルールとは、会社が独自に策定するルール全般を指します。就業規則のように法的に義務化されていないものです。
一般的な企業では、次のような社内ルールを定めています。
企業理念、役職管理規定、人事評価、給料規程・賞与規程、育児休業規程、出張旅費規程、災害時のマニュアル、身だしなみ・服装ルール、社内の共通言語、ハラスメント方針など
業務マニュアル、個人情報の取り扱いルール、コミュニケーションツールの利用ルールなど
オフィス環境の整理ルール、備品や機材の利用方法、フリーアドレス制のルール、カフェスペース・従業員食堂のルール、リフレッシュルームのルールなど
このように社内ルールと一口に言っても多岐にわたることがわかります。
近年は、オフィス環境の多様化により、一定のルールを設ける必要性が増しています。そのため、オフィス運用に関するルールは数多くあります。
なぜ社内ルールが必要なのでしょうか。主な理由として、次の点が挙げられます。
基本的に生産性向上や連携強化、統率、コンプライアンス遵守などのトラブルを防止し、リスクを回避するためなどが挙げられます。
トラブルには、社内の業務において生じることのほか、情報漏洩や顧客からのクレーム、不祥事など、さまざまなものが挙げられます。社内ルールの有無はこれらのトラブルを防止し、成長するために重要です。
社内ルールと就業規則は似て非なるものです。主な違いを確認しておきましょう。
就業規則とは、労働基準法に基づいて、常時10人以上の労働者を使用する事業場に、作成と所轄の労働基準監督署長への届出が義務付けられているものです。
労働基準法で規定された絶対的な必要事項や相対的な必要事項が定められています。
就業規則の作成義務のある企業では、労働者である従業員はそれに基づいて従事する必要があります。
就業規則には、必ず記載しなければならない事項があります。例えば始業や就業の時刻、休憩時間、休日、休暇のほか、賃金や支払いの時期、昇給に関する事項、退職に関する事項、退職手当、安全衛生の定め、職業訓練など多岐にわたります。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成と届出が義務付けられています。一方、社内ルールは法的に義務付けられておらず、届出も不要です。
就業規則は、違反した場合に懲戒処分(減給・解雇等)の根拠として用いることができ、法的にも有効と認められやすいです。
一方、社内ルールは単独では法的効力が弱く、就業規則に基づかない限り懲戒の根拠とすることは難しいです。
社内ルールの中でも、特にオフィス運用はルールを策定することにより、次のようなメリットがあります。
職場環境の改善やオフィスの整理整頓では、例えば下記のような日常的な行動を統一するルールが挙げられます。
これらの徹底で下記のような効果が期待できます。
結果として、職場全体の秩序が保たれ、従業員がストレスなく業務に集中できる環境を構築できます。
社内ルールを細部まで定義し、日常的に守られる状態を作ることで、組織としてのガバナンスが強化されます。例えば下記のような具体的なルールがなければ、セキュリティリスクが高まります。
これらを徹底しないことにより下記のような情報流出リスクが懸念されます。
つまり、オフィス運用のルールが単なるマナーではなく、セキュリティの強化を支える重要な仕組みの一つとして機能します。
企業理念やビジョンは抽象的になりやすく、掲げているだけでは浸透しにくいものです。例えば下記のような、オフィス運用ルールに理念と連動した行動を組み込むことが考えられます。
従業員は、日々の業務の中でこれらのルールを実践することで、「何を大切にすべき会社なのか」を自然と理解するようになります。単なる標語ではなく、具体的な行動として理念が体現される点がメリットです。
オフィスの運用ルールを守ることで、業務がスムーズに進むことから、生産性向上につながるでしょう。例えば下記のような仕組みが考えられます。
良い行動が正当に認められ、評価される仕組みを整えることで、「貢献が見てもらえている」という実感が生まれ、主体的な改善行動の促進が期待されます。その結果、単なる義務ではなく、働きやすい環境を自分たちで作る意識が醸成され、従業員モチベーション向上にもつながります。
一方で、オフィス運用の社内ルール策定にはデメリットと課題もあります。主に次の点が挙げられます。
近年、オフィスにはさまざまなスペースや機能が追加されており、各場所においてそれぞれのルールが策定されています。ルールが増えると、どうしても守れなくなってくる傾向があります。
ルールが最適化されていないと形骸化し、いつしか守られなくなってくる恐れもあります。このデメリットは社内ルールを策定するときの課題として大きいものといえるでしょう。
この課題を解決するには、重複している部分は一つに統合し、できるだけルールをシンプルにすることが挙げられます。
しかし、注意が必要なのは、すでにある社内ルールを安易に減らしてしまうことです。パッと見ただけで「このルールは不要だろう」と判断し、安易に削除してしまうと、そのルールがあったからこそ円滑に進んでいた業務があれば、支障が出てしまう恐れがあるからです。
もちろん形骸化しているルールは存在することもあるため、いかにルール一つ一つの必要性を見極めるかどうかが重要です。そのためには、まず根本的なルールは据え置いておき、それ以外のルールについて現場の従業員にヒアリングしながらうまく精査していく必要があります。
社内ルールをむやみに増やすことは、従業員の自発的な行動が制限される恐れがあります。ルールに沿って行動することは、業務の効率化と生産性向上を生む一方で、あまりにルールに沿うことばかりに意識が行きすぎると、改善提案や思考力の低下などのリスクもあることは覚えておかなければなりません。行きすぎると組織の硬直化にもつながり、成長やイノベーション創出が鈍化するリスクもあるでしょう。
硬直化が起きると「ルールを守らなければならない」という意識が自由なアイデアや発想を制限してしまうことがあります。例えば、こういう新しいアイデアを思いついたけれど、この業務ではルールがこのように決まっているから、難しいだろうと諦めてしまうことがあるということです。
従業員の自発性が低下するリスクは、基本的に社内ルールが多いことが原因であるため、先述の通り、不要なルールは削減し、シンプルにすること、そして重要なルールに精査することが重要です。
そして同時に、組織として主体性を持って業務に当たる従業員に対して評価する風土作りが重要です。必要に応じて人事評価制度に対して主体性の項目を強化するのも一案です。
また、主体性を促すために、社内コミュニケーションを活性化させることが重要です。気兼ねなく自分の意見を言える心理的安全性を確保するためにも、風通しの良い組織風土作りが重要です。
オフィスの社内ルール策定の手順をご紹介します。
今回は、フリーアドレス時のルールを策定するのを想定してご紹介します。
まず、オフィスの現状把握を行い、課題を抽出します。フリーアドレス制を導入するに当たって、社内の誰がどのような用途で利用するのか、また、現状、固定席制の場合にどのような課題を抱えているのかを明らかにします。現状把握の際には必ず現場で働く従業員の声を直接取り入れましょう。
課題を解決するために、何が必要なのかを見極めます。その上で、フリーアドレス制のルールを策定する目的を明確にします。目的を明確にする理由は、課題を確実に解決するためです。
さらに、誰のためのルールなのか、どこを目指しているのかなどの軸が運用中にブレなくなります。またフリーアドレス制を導入するのが初めてであれば、従業員に一定の抵抗感が出る恐れがあります。目的を明確にして周知することで、従業員の納得感を高めることができます。
ルールの内容を決めます。大きく分けて、管理者向けのルールと運営側のルールに分かれます。フリーアドレス制が初めてであれば、一般的なフリーアドレス制のルールをリサーチしてテンプレートにあてはめるのも一案です。
例えば、次のような項目が一般的です。
項目を策定する際に注意したいのが、一般的なテンプレートは用いても、あらかじめ定めた目的を達成できるように、自社独自のルールに作り込むことが肝心です。
社内全体にルールを周知します。このとき、必ず目的を合わせて伝えることが重要です。ただルールだけに従わせようとすると、ルールが形骸化しやすくなります。ルール一つ一つの意義が伝わっていないことで、忘れ去られてしまう恐れがあるためです。周知後に従業員のフィードバックを受け、見直すなどして完全に理解を得ることが大切です。
定期的に従業員からのフィードバックやルール遵守状況をヒアリングし、ルールに従いにくい点は改善しましょう。
随時、更新していくことで、自社に最適な運用体制が構築できます。
オフィス運用に関する社内ルールの運用のポイントをご紹介します。
策定した社内ルールは、オフィス内に掲示するなどして可視化することで、より一層、ルールの定着につながります。
可視化するときも、パッと見てわかりやすいように図やイラストなどを使うのもおすすめです。また従業員の記憶にも残りやすくなるでしょう。社内にデジタルサイネージを掲示して、社内ルールを配信するのも一案です。
また近年は、動画を手軽に生成AIなどで作成できるようになりました。1分程度の動画にして、いつでも従業員が参照できるようにすれば、よりわかりやすく社内ルールを伝えることができるでしょう。
先述の通り、従業員から積極的に社内ルールに関するフィードバックを受け、柔軟に改善していくことがポイントです。就業規則と異なり、社内ルールは自社で自由に変更できるメリットがあります。その点を踏まえて継続的にアップデートを続けていきましょう。
また従業員の声を取り入れることで、従業員は、その社内ルールに対して自分事がしやすくなり、ルールを遵守する意欲も湧いてくるでしょう。
社内ルールを策定すると同時に運用体制を整えることでよりルールが定着しやすくなるでしょう。例えば、フリーアドレス制を導入する際には、座席管理システムを導入し、座席利用の課題をあらかじめ解決しておくといったことが考えられます。
座席管理システムとは、オフィスの座席を効率的に管理運用するツールで、従業員は自分が仕事をしたい座席をあらかじめ予約することができ、効率的に業務を進められます。また同時に管理者はリアルタイムで座席の利用状況を把握できます。
情報共有のルールを策定する際に、同時にコミュニケーションツールを新たに導入することで、ルールが定着しやすくなるでしょう。
社内ルール策定後も、定期的に運用が順調に行われているかを確認する必要があります。そのためには現場で定期的にチェックを入れる、アンケートを実施する、直接従業員にヒアリングするなどの方法が挙げられます。
こうして集めた情報もとに改善していくことで、社内ルールを最適化するサイクルを回しましょう。
オフィスの社内ルール策定により、オフィスの運用効率化に成功した事例をご紹介します。
フリーアドレス制ルールを導入する際に、座席管理システムを導入した事例です。
座席管理システムをルールと同時に導入することで、従業員の在籍状況の確認や出退勤の管理を効率的に行うことができます。これによりルールが徹底されているかの確認も可能になります。また、フリーアドレス制の導入効果を把握するためにも座席管理システムが役立ちます。
フリーアドレス制によって従業員はどの程度、業務に利用しているのか、どの座席が多く利用されているのか、またどのような業務に利用されているのかといったデータを可視化することもできます。
これによりフリーアドレス制への効果とともに生産性の向上を図ることができるでしょう。
ある企業は、オフィスのあらゆる場所にIoT(Internet of Things)センサーを導入し、座席がどのように利用されているのかをリアルタイムで把握できるようにしました。
オフィス全体の中で、どのエリアが多く利用されているのか、また利用が少ないスペースはどこなのか、といったデータを取得することができます。これにより、オフィスのレイアウトを最適化することができています。
近年は、リモートワークが定着し、必ずしも従業員全員がオフィス出社する勤務体制ではなくなってきました。そうした勤務体制をハイブリッドワークと呼びます。ハイブリッドワークでは、新たに社内ルールが必要になることがあります。
例えば、その一つが輪番出社ルールです。電話や郵便物の受け取り、来客への応対、掃除、清掃等を順番に当番制のような形で輪番出社するルールを指します。この輪番出社ルールを策定している企業は、より効率的にハイブリッドワーク中のオフィス運用を進めています。
社内ルールを策定することで、生産性向上や連携強化、組織の統率、ビジョンや価値観の共有、コンプライアンス遵守やトラブル防止など、さまざまなメリットが期待できます。
従業員の現場の声を取り入れながら、必要な社内ルールを策定することで、社内業務や管理をスムーズに進めていくことができます。
社内ルールの中でも、特にオフィスの社内ルール策定はフリーアドレス制などのオフィス環境を整えるのと並行して行うことも大切です。
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