近年、リモートワークの普及など多様な働き方への対応でオフィス移転を検討されている企業が増えてきていると感じている方も多いのではないでしょうか。ただ、実際にオフィス移転をするとなると、どのような手続きがあるか詳細に把握している方も少ないのではないでしょうか。オフィス移転のプロジェクトは多岐にわたる手続きと調整が必要であり、計画的に進めることが重要です。
このコラムでは、オフィス移転をスムーズに進行させるために、オフィス移転の担当者が知っておくべきことや具体的な手順、必要な手続き、各機関への届出書類、失敗しないための時系列別のポイントについて解説します。新しいオフィス環境でのスタートを成功させるために、ぜひ参考にしてください。
まずはオフィス移転の担当者が知っておくべきことをご紹介します。
オフィス移転の大まかな流れや、必要な手続き・届出については、前もってすべて把握しておきましょう。うっかり工程を忘れていたとなれば、重大な損失につながることもあります。後ほど具体的な手順から必要な手続き、届出を紹介しますので、ぜひ押さえておいてください。
オフィス移転に当たっては、デザイン会社や工事業者、家具やOA機器の購入やリース手配先、取引先、社内の関係部署など社内外のさまざまな関係者とやりとりを行います。あらかじめ誰とどのような目的で関わる必要があるのか確認しておくとスムーズです。
そもそもオフィス移転の目的は何なのかを把握しておきましょう。一般的には企業の成長や経営戦略に合わせ、解決したい課題や達成したい目標が設定されます。もし明確でなければ上長に確認する必要があります。
オフィス移転にどのくらいのコストがかかるのか、あらかじめ確認しておくことも必要です。一般的にオフィス移転には次の4種類のコストがあります。
トータルの相場としては数百万から数千万円といわれており、幅があります。新オフィスの立地や不動産取得費用、引っ越し時期などによって変わってくるためです。自社の移転情報を公開可能な範囲で見積書を取得するようにします。後述の「オフィス移転の手順」にあるように、思っている以上の期間をみて対応をする必要があります。
移転先の新オフィスでは、どのような運用ルールとなるのか、旧オフィスとはどう変わるのかを把握しておく必要があります。例えば、オフィスの利用時間、入退室管理、セキュリティ体制、会議室の予約・利用ルール、フリーアドレス制の場合の利用ルールなどが挙げられます。
オフィス移転はタスクが多く、専門的知識が求められることもあります。一人で抱え込まずに社内の経験者に尋ねるほか、外部の専門会社の支援を受けられることも念頭に置いておきましょう。
オフィス移転手続きには多くのステップがあり、それぞれに時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。以下に、約半年から1年間を目安にしたオフィス移転の手順をご紹介します。
オフィス移転の最初のステップは、新しいオフィスの選定です。これには、立地条件、賃料、交通の便、周辺環境などを考慮し、社員の働きやすさと企業の成長を支える場所を選びます。物件の見学や契約交渉には時間がかかることが多いため、早い段階で動き出すことをおすすめします。
新しいオフィスが決まったら、現オフィスの解約手続きを進めます。賃貸契約には6か月前解約通知が設定されていることが多いため、契約内容を確認し、適切なタイミングで解約通知を行うことが必要です。解約通知が遅れると、余計なコストが発生することもあります。
新オフィスのレイアウトを検討するにあたり、内装業者を手配します。内装工事には時間がかかるため、早い段階で業者を選定し、工事スケジュールを調整することが重要です。内装業者との打ち合わせを重ね、細部まで確認することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
新しいオフィスのレイアウトを決定します。社員の働きやすさや、効率的な動線、コミュニケーションのしやすさを重視するなど、移転の目的に応じた配置を考えます。専門デザイナーやコンサルタントに相談するのも良いでしょう。
引っ越し作業は新オフィスの内装工事が整った後に行います。事前に引っ越し業者を選定し、移転日程を調整します。社員に対しても引っ越しに関する情報を共有し、スムーズな移転ができるように準備を進めましょう。
現オフィスの解約に伴い、原状回復の工事を行います。賃貸契約に基づき、オフィスを元の状態に戻すことが求められます。原状回復工事にも費用がかかるため、前もって業者の選定や見積もりを取り、予算を確保しておくことが必要です。
最後に、オフィス移転に伴う各種届出を行います。法的な手続きや関係機関への届出を忘れずに行いましょう。これには、税務署や社会保険事務所、取引先への通知などが含まれます。届出を怠ると、後々トラブルになることがありますので、しっかりと対応しましょう。こちらについても後ほど、詳しく解説していきます。
次に、オフィス移転に際して必要な手続きを詳しく解説していきます。
上述とも重なりますが、まず、必要な手続きとして、現オフィスの解約予告を行う必要があります。賃貸契約書には解約予告期間が明記されていることが多く、通常は6か月前に通知することが求められます。解約予告が遅れると、余計な賃料が発生する可能性があるため、前もって確認し、適切なタイミングで通知を行いましょう。
次に、原状回復工事の依頼が必要です。オフィスを退去する際には、借りた当初の状態に戻すことが求められます。原状回復工事には時間と費用がかかるため、早い段階で業者を選定し、見積もりを取得しておくことが重要です。また、工事の内容についてもオーナーと十分に協議し、トラブルを避けるために書面で確認しておくことをおすすめします。
オフィス移転に伴い、インターネットや電話回線の移転手続きも必要です。注意点として、移転先での使用開始日を確実に設定することが重要です。プロバイダーや回線業者はスケジュールが合わないことも多いため、早い段階で連絡を取り、移転日程に合わせた工事日を確保しましょう。また、移転先での接続テストも忘れずに行い、スムーズな業務再開を目指します。
オフィス移転に伴い、銀行口座やクレジットカードなどの情報変更も行わなければなりません。特に、請求書や支払いに関わる情報は正確に更新しないと、業務に支障をきたす可能性があります。各金融機関やクレジットカード会社に連絡し、必要な手続きを確認して前もって対応することが求められます。
最後に、取引先への移転報告も重要です。取引先には移転を可能な限り早い段階、遅くとも1か月前には伝え、新しい住所や連絡先を知らせる必要があります。報告が遅れると、重要な連絡が届かないなどのトラブルが発生する可能性があります。移転案内はメールや手紙で行うことが一般的ですが、重要度の高い取引先には電話や訪問で直接伝えると良いでしょう。
最後に、各機関への届出の提出が必要な書類を解説します。
オフィス移転に伴う最初の手続きの一つが、法務局での登記変更です。これは会社の所在地変更を正式に記録するためのもので、「本店移転登記申請書」を提出します。提出期限は移転後2週間以内です。この手続きを怠ると、罰金が科されることがありますので注意が必要です。
税務署への届出も重要です。新しい住所を登録するために「異動届出書」を提出します。この書類は、移転後速やかに提出する必要があります。税務署への届出を怠ると、税務関連の通知が旧住所に送られる可能性があり、重要な情報を見逃すリスクがあります。
労働基準監督署への届出も重要です。特に、労働保険の名称や所在地が変更される場合、「労働保険名称・所在地変更届」を提出します。また、雇用保険に関する手続きとして、「雇用保険事業主事業所各種変更届」も必要となります。これにより、労働者の保険に関する情報が正確に管理されます。提出期限は移転後10日以内となります。
公共職業安定所への届出も必要です。「事業所所在地変更届」を提出します。提出期限は移転後10日以内です。これにより、雇用保険の管理が適切に行われます。
郵便局への届出としては、「住所変更・転送届」が必要です。これにより、旧住所に届いた郵便物が新住所に転送されるようになります。提出期日は、住所変更または転送を開始したい日程までとなっており、重要な書類や通知が確実に受け取れるようにするためにも、早めの手続きをおすすめします。
年金事務所への届出も必要です。適用事業所の所在地や名称が変更された場合、「適用事業所所在地・名称変更届」を提出します。これにより、年金に関する情報が正確に更新されます。こちらも移転後5日以内に提出する必要があり、早めの対応が求められます。
警察署への届出も必要です。特に、車両を所有している場合は、「自動車保管場所証明申請書」を提出します。また、ナンバープレートの変更が必要な場合は、「安全運転管理者変更届」も提出する必要があり、移転後速やかに行うことが求められます。
最後に、消防署への届出も重要です。「防火管理者専任(解任)届出書:移転後速やかに」、「防火対象物使用開始届出書:移転日7日前までに」、「防火対象物工事等計画届出書:工事開始の7日前までに」などが必要です。
オフィス移転で陥りがちな失敗を踏まえて、時系列ごとに成功のためのポイントを解説します。
移転先の選定や現オフィスの解約などを行う移転6か月前には、オフィス移転担当者やオフィス移転に関わるメンバー全員がオフィス移転の目的を共有し、明確にすることが重要です。移転先や家具などの選定の際に、目的をもとに確実な判断ができるからです。
例えば目的は「生産性向上」と「賃料を抑えるための縮小化」とでは大きく選定基準が異なるのがわかるかと思います。オフィス移転全体を通じたブレのない目的設定と共有を行いましょう。
内装業者の手配や新オフィスのレイアウト決定の4か月前の頃には、そろそろ新オフィスの具体的なイメージがついてくる頃です。デザインなどの見た目に意識がいきがちですが、電話やインターネット、電源などの業務に直結する細部の確認を怠らないようにしましょう。新オフィスの稼働後、「電話がつながらない」「インターネットが使えない」などのトラブルを未然に防止できます。
引っ越し当日の直前には、役割分担や当日のスケジュールを明確にして、スムーズに進むようにしましょう。当日は、家具や什器などの搬出・搬入に立ち合い、紛失や故障などがないか確認することが大切です。高額な製品は搬出前に写真撮影しておくことで、搬入・搬出についた傷であることが証明できます。さらに高額な商品や特殊な商品は引っ越し業者が運搬を拒否する場合があります。引き受ける場合であっても追加の料金が発生します。事前に確認しておきましょう。
旧オフィス解約2か月前には、原状回復工事の手配をしっかりと行いましょう。見積もりは正当かどうか確認するほか、スケジュールも問題ないか確認します。またよくあるトラブルとして、入居時に備え付けられていた備品などが紛失したことで弁償する必要があることもあります。備品が不足していないか事前に確認しておきましょう。
本コラムでは、オフィス移転の手順や手続き、事前に確認しておくべき事項などについて、詳しくご紹介しました。オフィス移転は多岐にわたるタスクと専門知識が求められる複雑なプロジェクトのため、スムーズに進行し成功させるためにも、まずは、プロジェクトマネジメントができる会社やプロジェクトマネジメント業務を代行してもらえる会社を選定し、費用の内訳やスケジュールの詳細を打ち合わせることをおすすめします。
リコージャパンでは多様化する経営環境に合わせ、デジタルサービスとワークプレイスを組み合わせた「RICOH Smart Huddle」のコンセプトのもと、働き方のリニューアルをサポートし、お客様のご支援をいたします。
”新しい働き方”をお客様と一緒に考えながら、オフィス移転やリニューアルを、計画から理想の働き方が実行されるまで、プロジェクトマネジメントの業務も含めワンストップでご支援いたします。
オフィス移転の検討やプロジェクトマネジメント会社を選定されている際は、ぜひ、お気軽にご相談いただけますと幸いです。
「RICOH Smart Huddle」の詳細は、以下よりご覧ください。
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監修者 わたなべ
2005年リコーグループに入社。
15年間、建築設計事務所で意匠設計および設計監理に従事。
美しさと機能性を両立する空間づくりを目指し、企画から監理まで一貫して携わる。
戦略担当として、人財戦略にも取り組んでいる。
この一冊で、最新の7つのワークスタイルが分かり、お客様の課題を解決に導きます。
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