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電子棚札とは？小売現場が変わる仕組みとメリットを解説
従来の小売現場では、セールや価格改定の度に、大量の紙の棚札を印刷し、手作業で差し替える作業が発生していました。この重労働は、人手不足の中、スタッフの大きな負担となり、価格の誤表示といったヒューマンエラーの原因にもなっています。
近年、この課題を根本から解決し、小売現場のDXを加速させるツールとして注目されているのが、電子棚札です。
今回は、電子棚札の概要や導入メリット、活用シーン、導入ステップの具体例を解説します。
電子棚札とは？
電子棚札（Electronic Shelf Label：ESL）とは、スーパーやドラッグストアなどの小売店舗で、従来使用されてきた紙の値札に代わり、商品名や価格情報などをデジタル表示する電子表示器のことです。これらのESLは、電力消費が極めて少ない電子ペーパー（紙のような高い視認性を持つ表示装置）などの表示技術を用いており、ネットワークを通じて遠隔で表示内容を一括変更できる仕組みが最大の特長です。
電子棚札が国内外で急速に普及している背景には、単なるペーパーレス化を超えた、小売業界の構造的な課題と新たな経営戦略への対応があります。まず、人手不足が深刻化する中で、紙の値札交換に費やされていた大きな人件費と業務負荷を削減するため、電子棚札による作業のシステム化・効率化が必須となりました。電子棚札の導入により、スタッフは接客などの付加価値の高い業務に集中できます。
さらに、価格戦略の高度化も重要な要因です。電子棚札はシステムと接続し、在庫や需要に応じた価格を瞬時に変更できるため、ダイナミックプライシングやタイムセールを可能にし、販売機会の最大化と食品ロス削減に大きく貢献しています。
電子棚札の仕組み
電子棚札の導入と聞くと、大がかりな工事や複雑なシステムを想像するかもしれませんが、その仕組みは比較的シンプルです。電子棚札のシステムは、大きく分けて「管理システム」「通信機器」「電子棚札本体」の3つの要素で構成されています。
管理システムが情報を集約
まず、お店のPOSシステム（レジのシステム）や在庫管理システムが持つ商品データ（価格、在庫数、セール情報など）が、中央の管理サーバーに集約されます。価格変更が必要な場合、このサーバーから一括で指示が出されます。
通信機器が情報を伝達
サーバーからの指示は、店舗の天井などに設置されたアクセスポイントと呼ばれる通信機器に送られます。このAPが、店内のネットワーク（無線通信）を通じて、各商品棚にある電子棚札へ新しい情報を送る「司令塔」の役割を果たします。
電子棚札が情報を表示
商品棚に設置された電子棚札本体がアクセスポイントからの情報を受信すると、内蔵されている電子ペーパーの表示が瞬時に切り替わります。
この一連の流れにより、スタッフが売り場に出向くことなく、全商品の価格を遠隔で、正確に、そしてリアルタイムに更新することが可能になっています。
電子棚札導入によるメリット
電子棚札を売り場に導入することで次のようなメリットが期待できます。
作業効率化・コスト削減
従来からある紙の棚札では、販売スタッフによる手作業の差し替えや貼り替えに手間がかかり、人手不足の中、負担が大きいものでした。一方、電子棚札では現場での差し替えなどは不要になるため、大幅な作業効率向上や負荷の削減につながります。また人手不足対策にも寄与します。
情報の正確性・即時性
電子棚札は、リモートから操作できるため、価格変更のタイミングを自在にコントロール可能です。誤った情報や古い情報を購買客に提示することなく、正確性と即時性を実現します。またセール開催時や在庫状況の変動に即したダイナミックプライシングにも対応できます。
顧客体験の向上
電子棚札は、価格変更のしやすさから、常に正確な在庫や消費期限情報の表示が可能になり、購買客は適切な情報を基に商品を選ぶことができます。その結果、顧客満足度向上にもつながるでしょう。またデジタル表示は店舗に先進的なイメージを持たれやすく、イメージアップやブランド価値向上にも寄与すると考えられます。
サステナビリティへの貢献
デジタル化による紙資源の削減は、近年、取り組むべきサステナビリティ（持続可能性）への貢献にもつながります。その結果、購買客に対して環境面への配慮を求めるアピールポイントにもなるでしょう。
電子棚札の活用シーン
電子棚札の活用シーンには次のものが挙げられます。
食品スーパー・ドラッグストア
商品の入れ替えやタイムセールなど、一日のうちにも棚札の差し替え作業が多く発生する食品スーパーやドラッグストアなどの小売店では、電子棚札が大きく貢献します。従来は棚札差し替えのために深夜や早朝に販売スタッフ総出で作業を行うこともあった中、電子棚札に入れ替えれば、大幅な作業負荷削減につながります。
アパレルショップや家電量販店
アパレルショップや家電量販店などは、在庫に連動した価格表示や値下げタイミングによる棚札入れ替えなどが発生しますが、電子棚札を導入することで、自動化を実現します。販売員不足をカバーできるとともに、購買客に対して効果的な価格訴求が行えるでしょう。
製造業や物流業
小売業以外でも、電子棚札はそのリアルタイム性と正確性を活かして活用されています。製造業では、工場内の部品棚に電子棚札を設置し、在庫数やロケーション情報を正確に表示することで、部品管理の効率化とミス防止に役立てられます。作業指示書や工程進捗の表示にも使われ、ペーパーレス化を推進します。
物流業では、倉庫や配送センターでデジタルピッキングシステムとして応用されています。ピッキングすべき商品が置かれた棚の電子棚札に数量を表示することで、スタッフはリストの確認時間を減らし、ピッキング作業の正確性とスピードを飛躍的に向上させることができます。
電子棚札導入の検討ポイントと注意点
電子棚札を導入する際に検討すべきポイントと注意点をご紹介します。
導入・運用コスト
電子棚札のコストは、導入時だけでなくサーバー管理・保守などの運用費が発生します。クラウド上のサーバーか自社サーバーかで変わってきます。クラウド上のサーバーの場合、月額2～3万円ほどで、自社サーバーの場合は規模などによって大きく変わります。導入時にかかる電子棚札の機器コストはメーカーやサイズ、表示色、機能によって変わり、1枚当たり1,000円～3万円など幅があります。
店舗規模や商品数、既存のITインフラとの連携などを事前に確認する
電子棚札導入前に、既存のITインフラやシステムなどの環境から導入可能かどうかの確認が必要です。店舗の規模や使用する商品数などによってコストや構築方法も変わりますので専門家の知見をもとにイメージをつけておきましょう。
電子棚札の設置の際の留意点
導入に際しては、設置における環境や電波状況などの現場調査を行った上でレイアウト計画のもと、導入を進めていきます。導入前の事前調査の段階で実施しますが、本番でも実地調査が求められます。また店舗で運用できるよう、使い方などの従業員研修の実施も必要です。
電子棚札の導入ステップ
では、実際に電子棚札を導入する際のステップを具体的な内容をもとにシミュレーションしてみましょう。
目的と必要機能の明確化
まずは導入目的とゴールを明確にします。
例）「価格変更作業を減らしたい」
「売価ミスをなくしたい」
また最低限の要件として、どの売り場・何点のSKU（在庫管理上の最小品目数）から始めるか、POSや在庫システムと連携が必要かなどを整理しましょう。このとき画面サイズやバッテリー寿命など“欲しいスペック”を絞り込むと、この後の製品比較が楽になります。
製品・ベンダー選定＆小規模テスト実施
導入する製品とベンダーを選定し、小規模導入してテストを実施します。
選定には、実績やサポート体制をチェックし、信頼できるパートナーを決定しましょう。
また複数店舗を持つ場合も、はじめから全店に入れず、代表店舗で目的に合わせた規模でテスト運用を実施しましょう。
テストにおいてはスタッフの作業時間の短縮度合い、表示の見やすさ、通信の安定性を検証し、本格的な展開に向けて課題を洗い出します。
本格的な展開後の運用ルールの策定
テストと改善を重ね、問題なければ本格的に展開します。タグ取り付けスケジュール、価格更新フロー、緊急値下げ時の手順などをマニュアル化しておけば、スムーズな運用につながります。
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