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ヒューマンエラーが多い人の特徴って?5つの要因別に対策例を紹介

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私たちは誰でもミスをします。しかし、ある特定の特徴や状況が重なると、ヒューマンエラーの発生率は高まります。日常生活から職場まで、小さなミスが大きな問題へと発展することもあります。

なぜ一部の人はエラーを繰り返してしまうのでしょうか?そして、どうすれば効果的に対策できるのでしょうか?

本記事では、ヒューマンエラーが発生しやすい5つの要因に着目し、それぞれの特徴と具体的な対策例をご紹介します。これらの知識を活用することで、あなた自身やチームのパフォーマンス向上につながるでしょう。

ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは、人間が意図せずに引き起こす過誤や失敗のことを指します。意図的ではない行為、不適切な判断、または必要な行動を取らないことによって生じる過ちであり、産業、医療、航空、製造業など、あらゆる分野で発生する可能性があります。

人間の注意力の欠如、知識不足、ストレス、疲労、環境要因などが、このようなエラーを引き起こす主な要因です。組織や個人は、適切な訓練、チェックシステムの導入、作業環境の改善などを通じて、ヒューマンエラーのリスクを軽減する努力を続けています。

ヒューマンエラーは、主に以下の4種類に分類されます。

ヒューマンエラーの種類 概要
記憶エラー 必要な情報を記憶できなかったり、記憶した情報を正確に思い出せなかったりすることによって発生するエラー
  • ・手順を忘れてしまう
  • ・パスワードを忘れてしまう
  • ・名前を思い出せない など
認知エラー 情報を見落としたり、誤って認識したりすることによって発生するエラー
  • ・指示を聞き間違える
  • ・計器の数値を読み間違える
  • ・目の錯覚による見間違い など
判断エラー 状況を正しく判断できなかったり、誤った意思決定をしたりすることによって発生するエラー
  • ・リスクを過小評価する
  • ・経験不足による判断ミス
  • ・先入観による誤った判断 など
行動エラー 意図した行動と異なる行動をとってしまうことによって発生するエラー
  • ・操作手順を間違える
  • ・ボタンを押し間違える
  • ・物を落としてしまう など

ヒューマンエラーについては以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

関連記事:ヒューマンエラーとは?5つの要因や製造業における原因・対策を解説

ヒューマンエラーが多い人の特徴

ヒューマンエラーが多い人には、いくつかの共通する特徴が見られます。以下に代表的なものを挙げます。

注意力散漫な人

注意力散漫な人は、集中力の維持が困難で、些細な刺激に容易に気を取られます。外部の音や動きに敏感に反応し、目の前の作業から瞬時に注意がそれてしまう傾向があります。

深く考察することなく、衝動的かつ表面的な判断を下しがちで、タスクの細部や重要な情報を見落とすリスクが高いです。このような特性により、ヒューマンエラーを引き起こす可能性が増大し、仕事や日常生活における正確性と効率性に悪影響を及ぼします。

責任感の低い人

責任感の低い人は、自身の仕事に対する意識が薄く、与えられた課題に真摯に向き合わない傾向です。自分のミスが発生した際には、周囲の環境や他人のせいにすることで、自己の責任を回避しようとします。

また、上司や同僚からの明確な指示を注意深く聞くことなく、独自の方法で作業を進め、結果的に多くのヒューマンエラーを引き起こす可能性が高くなります。このような態度は、チームワークを損ない、業務の質を低下させる要因です。

自己中心的で協調性がない人

自己中心的で協調性に欠ける人は、常に自分の意見を押し通し、他者の視点や提案を無視する傾向です。他のメンバーとの効果的な対話や意見交換を避け、チームの目標よりも個人の利益を優先します。

このような態度はコミュニケーションの阻害や相互理解の欠如を招き、結果としてチームの生産性を低下させ、ヒューマンエラーのリスクを高めることになります。

ストレスをため込みやすい人

ストレスを抱え込みやすい人は、精神的に脆弱で感情の変動が大きい傾向があります。些細な出来事にも過剰に反応し、プレッシャーに対する耐性が低く、不安や不確実性に敏感です。

また、慢性的な睡眠不足や体調不良によって、判断力や集中力が低下し、ストレス対処能力がさらに弱まります。このような状態は、心身のバランスを崩し、ヒューマンエラーのリスクを高める要因となります。

経験が浅く、知識やスキルが不足している人

経験の浅い人は、業務に必要な知識やスキルが不十分なため、ヒューマンエラーを起こしやすい傾向があります。未熟な段階では状況を正確に把握し判断する能力が低く、予期せぬ出来事や複雑な状況に適切に対応することが困難です。

また、実践的な経験不足により、潜在的なリスクを事前に予測したり、迅速かつ的確な問題解決策を見出したりすることが難しく、結果として誤りを犯す可能性が高くなります。

危険を軽視する人

危険を軽視する人は、往々にして安全への感度が著しく低く、潜在的なリスクに対する認識が乏しい傾向があります。自己の能力を過信し、組織で定められたルールや手順を軽んじ、独自の方法で作業を遂行しがちです。

さらに、周囲からの警告や注意を真摯に受け止めず、危険な状況に対して無頓着な姿勢を示します。このような態度は、事故や重大な過失を招く可能性が高く、自身だけでなく周囲の人々の安全をも脅かす重大なリスク要因となります。

【要因別】ヒューマンエラーの対策例

ヒューマンエラーの要因を分析する際に、SHELLモデルが広く活用されています。このモデルは、以下の5つの要因が相互に関係し合い、エラーの発生に影響を与えると説明しています。

●手順書やマニュアル・規則(Software)

作業手順書やマニュアル、規則などの情報や管理手法を指します。これらが不明確であったり、複雑すぎたりする場合、作業者が誤った手順を踏む可能性が高まります。

●設備や機械(Hardware)

操作する設備や機械などの物理的な要素です。機器の設計不良やメンテナンス不足、操作性の悪さなどがヒューマンエラーを誘発することがあります。

●作業環境(Environment)

作業場所の環境要因を指し、照明、温度、騒音、作業スペースの広さなどが含まれます。これらの環境が不適切であると、作業者の集中力や判断力が低下し、ミスが発生しやすくなります。

●本人(Liveware)

作業を行う当事者自身のことです。作業者の経験不足、知識の欠如、疲労、ストレスなどの個人的要因がエラーの原因となることがあります。

●周囲の人間(Liveware)

作業者と関わる上司、同僚、他部署の人々などを指します。コミュニケーション不足や連携ミス、人間関係の問題などが、情報伝達の誤りや判断ミスを引き起こす可能性があります。

手順書・マニュアルの内容を見直す

手順書・マニュアルの見直しには、内容の明確性と実用性の向上が求められます。まず、専門用語を避け、誰もが理解しやすい平易な言葉で記述することが重要です。また、手順を時系列や工程順に論理的に配置し、各ステップを具体的かつ詳細に説明する必要があります。

さらに、最新の技術や環境変化に応じて定期的に内容を更新し、デジタル化やクラウド化によりアクセスを容易にすることで、作業者が必要な情報をすぐに参照できるようにします。加えて、図解や写真、動画などの視覚的な補助資料を活用し、理解を深めるための工夫も欠かせません。

設備・機械の操作性の改善やメンテナンスを徹底する

設備・機械の操作性改善とメンテナンス徹底においては、まず人間中心の設計思想が重要です。操作パネルの配置や表示を直感的で分かりやすいものにし、誤操作を防ぐための色彩や配置の工夫を行います。

また、機器の状態を常に監視し、定期的な点検と予防保全を実施することで、突発的な故障や性能低下を未然に防ぎます。具体的には、センサーによる異常検知システムの導入、劣化部品の計画的な交換、稼働状況の詳細な記録と分析などです。

さらに、作業者が機器の特性を十分に理解できるよう、詳細な操作マニュアルの整備と定期的な教育訓練も重要な対策となります。

作業内容や場所、作業者の特性を考慮する

ヒューマンエラー対策において、作業内容や場所、作業者の特性を考慮することは極めて重要です。具体的には、作業者の身体的・精神的負担を軽減するため、適切な作業時間の設定や十分な休憩時間の確保が求められます。

また、作業環境の物理的条件として、適切な照明、快適な温度、騒音の低減、作業スペースの確保などを実施します。心理的側面では、ストレスや疲労を軽減するためのメンタルヘルスケア、作業者の適性や経験に基づく適切な配置、チームワークの強化、コミュニケーション改善などが対策として挙げられます。

これらの総合的なアプローチにより、作業者の集中力と安全性を高め、ヒューマンエラーのリスクを低減することができます。

個人と組織それぞれにアプローチする

ヒューマンエラー対策には、個人と組織の両面からのアプローチが重要です。個人に対しては、継続的な教育訓練と自己管理が鍵となります。従業員の健康管理、ストレスケア、適切な休息、スキルアップ研修などを通じて、個人の能力と集中力を高めることが求められます。

一方で組織側は、明確で理解しやすいマニュアルの整備、相互チェックシステムの構築、安全な作業環境の創出、適切な人員配置と業務分担、そしてオープンで率直なコミュニケーション文化の醸成に取り組むことが必要です。

これらのアプローチは、個人の多様な要因—性格、体調、能力、状況—に配慮しながら、組織全体のエラー防止システムを強化することを目指しています。

適切なコミュニケーションを構築する

適切なコミュニケーションの構築には、明確で透明性の高い情報共有が不可欠です。具体的には、作業前のブリーフィングや定期的なミーティングを通じて、各メンバーの役割と期待を明確にし、潜在的なリスクや懸念事項を率直に議論します。相互に質問や確認を奨励し、曖昧な指示や理解に対しては、すぐに明確化を求める企業文化を醸成することが重要です。

また、階層や部門を超えて意見を言いやすい心理的安全性を確保し、エラーを隠蔽せず、オープンに共有し学習できる環境づくりが求められます。非言語的コミュニケーションにも注意を払い、相手の表情や態度から理解度や不安を読み取り、必要に応じてフォローアップすることで、誤解や認識のズレを最小限に抑えることができます。

まとめ

ヒューマンエラーは、人間の様々な特性や環境要因が複雑に絡み合って発生する避けられない課題です。注意力散漫、責任感の低さ、協調性の欠如、ストレス、経験不足、危険軽視などの要因が、エラーを引き起こす可能性を高めます。これらのリスクを低減するためには、個人と組織の両面からのアプローチが重要であり、適切な教育、明確なマニュアル、効果的なコミュニケーション、作業環境の改善などを通じて、エラー発生を未然に防ぐ努力が求められます。

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